イソジンシュガーパスタ軟膏は、精製白糖700mgとポビドンヨード30mgを1g中に配合した外用剤です。この2つの成分が相乗的に作用することで、褥瘡治療において一定の効果を発揮します。
参考)イソジンシュガーパスタ軟膏の基本情報(薬効分類・副作用・添付…
精製白糖の主な役割は、高浸透圧による滲出液の吸収です。傷口に塗布すると、周囲の水分(感染液や滲出液)を引き出す力があり、創面を乾燥させる効果があります。これにより、局所の浮腫を軽減し、細菌の増殖を抑制する環境が整います。
参考)砂糖で傷が治るって本当?イソジンシュガーの仕組みと医療現場で…

精製白糖の浸透圧作用は、イソジンシュガーの最も特徴的なメカニズムの一つです。高浸透圧環境が創面に形成されることで、以下の3つの効果が得られます。
参考)DIクイズ3:(Q)軟膏が変更された褥瘡患者:日経DI
浸出液の多い黒色期から黄色期の褥瘡において、この浸透圧作用は特に有効です。滲出液が過剰な創では、治癒を妨げる因子が多く含まれており、これらを吸収することで「治すための土壌」を整えることができます。
参考)褥瘡と薬のキホン
ただし、この浸透圧作用は諸刃の剣でもあります。浸出液の少ない黄色期や赤色期の褥瘡に使用すると、必要な創傷治癒物質(細胞成長因子など)まで吸収されてしまい、治癒が遅延するリスクがあります。
参考)http://www.wound-treatment.jp/wound079.htm
ポビドンヨードの抗菌スペクトルは極めて広く、グラム陽性菌・グラム陰性菌の両方に対して効果を示します。さらに、真菌やウイルスに対しても殺菌力を発揮するため、感染した褥瘡において多様な病原体に対応できます。
従来の外用抗菌剤と比べて、ポビドンヨードの利点は以下の通りです。
臨床現場でのイソジンシュガーの適応は、褥瘡の病期によって明確に区別されています。現在の褥瘡治療の常識では、「浸出液の多い黒色期から黄色期にかけての時期のみ」に使用が勧められています。
参考)https://note.com/yakuzaishishi_/n/n67ab16836c6b
黒色期(壊死組織あり)の特徴と適応。
黄色期(感染または炎症あり)の特徴と適応。
重要な点は、浸出液の量によって薬剤を選択することです。滲出液が最も多い感染極期にはカデックス軟膏が第一選択となり、滲出液が減少してきた段階でイソジンシュガーへ変更するケースが一般的です。
参考)第09回 感染した褥創の局所療法 – 高岡駅南ク…
イソジンシュガーが禁忌となる病期が、赤色期(肉芽形成期)です。この時期に漫然と使用し続けると、以下の弊害が生じます。
さらに、ポビドンヨードの組織障害性も懸念されます。長期間の使用により、正常な肉芽組織に対して毒性を発揮し、細胞増殖を抑制する可能性があります。このため、赤色期以降ではフィブラストスプレーやプロスタグランジンE1製剤など、肉芽形成促進剤への移行が推奨されます。
イソジンシュガーの臨床的有用性については、1980年代に複数の報告がなされています。Knutsonら(1981年)は、sugarとpovidone-iodineを混合した製剤を難治性潰瘍に使用し、優れた治療効果を得たと報告しました。
参考)https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282679277261056
これを受けた日本の研究チームは、白糖300g+イソジンゲル100g+イソジン液30mlの配合で1年半の間に以下の症例を治療しました。
その結果、創部を乾燥させ、感染を抑制し、浮腫を軽減し、肉芽形成を促進し、表皮化を早めるなどの効果が示されました。さらに、抗生物質の併用や植皮を節約できる、治療期間が短縮される、交換が容易であるなどの特徴も報告されています。
ただし、これらの研究は1980年代前半の報告であり、現在の湿潤療法の概念とは異なるアプローチです。現代の褥瘡治療ガイドラインでは、湿潤環境の維持が重視されており、イソジンシュガーの使用は限定的となっています。
参考)https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/clinical_practice_of_geriatrics_50_5_597.pdf
イソジンシュガーの副作用として、最も注意すべきは甲状腺機能への影響です。ポビドンヨードのヨウ素が経皮的に吸収され、血清中総ヨウ素濃度が著しく高くなることが報告されています。
参考)https://www.e-pharma.jp/druginfo/info/2699801V1114
主な副作用と頻度。
参考)医療用医薬品 : イソジン (イソジンシュガーパスタ軟膏)
使用上の禁忌。
臨床現場での注意点。
患者向けくすりのしおり:イソジンシュガーパスタ軟膏の副作用情報
褥瘡治療において、外用薬の選択だけでなく、患者の全身状態の管理が重要であることはあまり知られていません。特に「亜鉛」の栄養状態が、褥瘡の治癒に大きく影響することが示されています。
参考)褥瘡治癒の決め手は「亜鉛」にあった|木を見て森を見ずの褥瘡治…
亜鉛の役割。
低亜鉛血症の患者では、いくら適切な外用薬を選択しても、褥瘡の治癒が遅延するケースがあります。このため、難治性褥瘡では血清亜鉛値を測定し、必要に応じて亜鉛製剤の経口投与を検討することが推奨されます。
栄養管理の観点からのアプローチ。
イソジンシュガーなどの外用薬は、あくまで局所治療の一部です。圧力分散(除圧)、栄養管理、全身状態の改善など、包括的なアプローチが褥瘡治療の成功には不可欠です。
褥瘡治癒の決め手は「亜鉛」にあった|看護師のための仕事とキャリアの情報サイト
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