
腓骨神経麻痺において最も特徴的な運動障害は、足関節と足趾の背屈(持ち上げる動作)が困難または不能になることです。この状態を「下垂足(drop foot)」と呼び、患者さんの歩行に明らかな支障をきたします 。
参考)「腓骨&#x795…
具体的には以下のような症状が現れます。
参考)腓骨神経麻痺
参考)浅腓骨神経麻痺と深腓骨神経麻痺 - やまだカイロプラクティッ…
腓骨神経は深腓骨神経と浅腓骨神経に分岐しますが、特に深腓骨神経の障害で運動麻痺が顕著に現れます。前脛骨筋、長趾伸筋、長母趾伸筋といった背屈筋群の筋力低下が確認できます 。
参考)腓骨神経麻痺 - Rehabili days(リハビリデイズ…
臨床現場では、患者さんが「足を引きずるような歩き方になった」「よくつまずく」と訴えた場合、腓骨神経麻痺を疑う必要があります。看護師はバイタルサイン測定時や離床支援時に、足関節の背屈動作を声かけして確認することが重要です 。
参考)https://nursekokushi.website/leg-nurse-test/
腓骨神経麻痺の感覚障害は、腓骨神経の支配領域に特異的に現れます。具体的には「下腿の外側から足背、ならびに第5趾を除いた足趾背側」にかけて感覚が障害されます 。
患者さんが訴える感覚異常には以下があります。
参考)総腓骨神経麻痺
重要な鑑別ポイントとして、第5趾(小趾)は腓骨神経ではなく脛骨神経の支配を受けるため、腓骨神経麻痺では第5趾の感覚は保たれます。この分布パターンを覚えておくと、腓骨神経麻痺と他の神経障害(L5神経根障害など)の鑑別に役立ちます 。
感覚検査では、綿棒やピンプリックを用いて、腓骨神経支配領域(特に第1趾間:親指と人差し指の間)の感覚を定期的に評価します。弾性ストッキング装着中の患者さんでは、ストッキングの縁が腓骨頭に食い込んでいないか、皮膚に圧痕が残っていないかも併せて観察します 。
参考)https://js-phlebology.jp/wp/wp-content/uploads/2025/01/Jpn.-J.-Phlebol.-36-Supplement-2025.pdf
腓骨神経麻痺は、DVT(深部静脈血栓症)予防のために装着する弾性ストッキングや、間欠的空気圧迫法(IPC)の合併症として頻繁に報告されています。圧迫療法関連の神経障害で最も多いのが、腓骨頭における総腓骨神経麻痺です 。
なぜ腓骨頭が危険なのか。
総腓骨神経は腓骨頭の周囲を巻くように皮下を走行しており、非常に表在性です。このため、外部からの圧迫で容易に損傷されます。弾性ストッキング(特にハイソックスタイプ)の上端が腓骨頭付近で丸まったり、ずれたりすると、その部分で神経が絞扼されます 。
臨床で注意すべきポイント。
圧迫療法による腓骨神経麻痺は、装着後数時間以内に発症することが多く、通常は圧迫を除去後3週間から6ヶ月で回復しますが、早期発見が予後を左右します 。看護師は「足がしびれてきた」「足の甲の感覚がおかしい」という患者さんの訴えを決して軽視せず、直ちにストッキングを脱がせて腓骨頭周囲の圧迫を解除する必要があります。
腓骨神経麻痺の予防において最も重要なのは、「腓骨頭(膝の外側)を持続的に圧迫しない」ことです。長期臥床患者さんや、ギプス固定中の患者さんでは、無意識のうちに腓骨頭がベッド柵やクッションに圧迫されていることがあります 。
参考)固定処置に伴う神経障害の観察 - ナースハッピーライフ
予防のための具体的な看護介入。
1. 下肢のポジショニング
2. 固定帯・抑制帯の位置
3. 膝下のクッション使用
4. 手術時の体位管理
看護師は、患者さんの体位変換時や離床支援時に、腓骨頭周囲の皮膚状態(圧痕、発赤、びらん)を routinely に観察し、圧迫の兆候を早期に発見することが重要です。
腓骨神経麻痺の看護において、あまり注目されていないが極めて重要な視点が「転倒・骨折予防」です。下垂足により足先のクリアランスが確保できない患者さんは、歩行時にわずかな段差や床の障害物につまずきやすく、転倒リスクが著しく高まります。
転倒リスク評価の具体的方法。
参考)腓骨神経麻痺の評価とリハ
参考)下垂足に対するリハビリテーション—背屈筋群以外の筋緊張に応じ…
腓骨神経麻痺患者さんへの包括的看護アプローチ。
| 評価項目 | 観察内容 | 看護介入 |
|---|---|---|
| 運動機能 | 足関節背屈・足趾背屈の可否、MMT | 筋力低下が著しい場合はAFO装着を医師に提案 |
| 感覚機能 | 第1趾間の感覚、下腿外側のしびれ | 感覚鈍麻部位の皮膚ケア、熱傷予防 |
| 歩行能力 | つまずき頻度、歩行速度、歩幅 | 歩行訓練時の付き添い、転倒予防環境整備 |
| 心理状態 | 転倒への不安、活動意欲 | 安全な環境での離床を促し、QOL維持を支援 |
| 家族教育 | 下垂足の理解、見守り方 | 家族に症状と予防法を説明し、協力を得る |
また、腓骨神経麻痺は原疾患(脳卒中、脊椎疾患、外傷など)のリハビリと並行して管理する必要があります。下垂足のリハビリテーションでは、単なる背屈補助にとどまらず、筋再教育、装具療法、電気刺激療法などを組み合わせた多職種連携による包括的支援が求められます 。
看護師は、リハビリスタッフと連携して患者さんの歩行クリアランスを評価し、必要に応じてAFO(足関節装具)の装着を提案します。装具装着後は、装具による圧迫で新たな神経障害が生じないか、皮膚状態を定期的に観察することも重要です 。
さらに、腓骨神経麻痺の患者さんでは、感覚鈍麻により低温やけどや褥瘡のリスクも高まります。足の甲や外くるぶし周辺の皮膚を routinely に観察し、発赤やびらんがないか確認するとともに、患者さんには「足の感覚がおかしい時はすぐに教えてくださいね」と声かけを継続することが、重篤な合併症予防につながります。
腓骨神経麻痺の看護観察を効果的に行うためには、評価項目を標準化し、チーム内で共通の言語を用いて記録することが重要です。以下の「運動3筋+感覚1点」のフレームワークを用いると、分布を迷わず評価できます 。
標準的な評価フロー。
1. 問診:患者さんの自覚症状(しびれ、つまずきやすさ、歩行の変化)を聴取
2. 視診:筋萎縮の有無、皮膚状態(圧痕、発赤)を確認
3. 他動関節可動域:足関節・足趾の可動域を評価
4. MMT:前脛骨筋、長趾伸筋、長母趾伸筋の筋力を0〜5度で評価
5. 感覚検査:第1趾間(深腓骨神経支配)の感覚を綿棒・ピンプリックで確認
6. 歩行観察:足クリアランス、股関節過屈曲(ハイステップ)、つまずき頻度を記録
7. 触診:腓骨頭周囲の圧痛、外圧の再現性を確認
記録の例。
これらの評価を、バイタルサイン測定時、離床前、リハビリ前後など、決まったタイミングで実施し、経時的変化を追跡することが、腓骨神経麻痺の早期発見と適切な介入につながります 。
参考リンク。
日本整形外科学会による腓骨神経麻痺の病態解説。症状の分布や下垂足の特徴が図解されています
看護職向けに腓骨神経麻痺の原因・症状・予防法を詳しく解説。臨床で役立つ観察ポイントが記載されています
静脈疾患における圧迫療法ガイドライン2024。弾性ストッキングによる腓骨神経麻痺の発生機序と予防策が記載されています
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