
ヒドロクロロチアジドの日本における先発品は、かつて万有製薬から販売されていた「ダイクロトライド」でした。しかし、この先発品は現在販売中止となっており、市場から姿を消しています。
現在の状況としては、単剤のヒドロクロロチアジド製剤はすべて後発品(ジェネリック医薬品)として供給されています。代表的な製品は東和薬品から販売されている以下の製剤です。
これらの後発品の薬価は、12.5mg錠・25mg錠ともに5.9円/錠と設定されています。
参考)医療用医薬品 : ヒドロクロロチアジド (ヒドロクロロチアジ…
また、ヒドロクロロチアジドは多くの配合剤の成分としても使用されています。代表的な配合剤には以下があります。
海外では、Hydrodiuril、Dichlotride、Esidrex、Microzideなどの商品名で販売されており、1959年から商業利用が開始された歴史のある薬剤です。
ヒドロクロロチアジドはチアジド系(サイアザイド系)利尿薬に分類され、その作用機序は腎臓の遠位尿細管におけるNa⁺-Cl⁻共輸送体の阻害にあります。
参考)https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/530113_2149110F1295_1_16
具体的な作用メカニズムは以下の通りです。
参考)高血圧の治療薬⑤ チアジド系、カリウム保持性利尿薬、抗アルド…
- 初期段階:循環血流量の低下により血圧が低下します
- 長期的効果:末梢血管の拡張により持続的な降圧効果を発揮します
参考)https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/580591_2149112F1057_1_10
作用持続時間は約12時間と報告されています。
参考)利尿薬一覧・作用機序(サイアザイド・ループ・カリウム保持・バ…
ヒドロクロロチアジドの副作用の中で、特に注意が必要なのが電解質異常と代謝系への影響です。
電解質異常
低ナトリウム血症(頻度不明):倦怠感、食欲不振、嘔気、嘔吐、痙攣、意識障害等を伴う低ナトリウム血症があらわれることがあります。特に高齢者や腎機能低下患者ではリスクが高まるため、より頻繁な検査が推奨されます。
参考)ヒドロクロロチアジド錠12.5mg「トーワ」の基本情報(薬効…
低カリウム血症:本剤の成分であるヒドロクロロチアジドは低カリウム血症を起こすことが知られています。国内臨床治験において、血清カリウム値は低下傾向を示し、低カリウム血症の発現頻度は高カリウム血症よりも高かったと報告されています。血清カリウム値のモニタリングを定期的に実施し、観察を十分に行う必要があります。
参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2006/P200600046/63015300_21800AMZ10391_B108_2.pdf
代謝系副作用
高尿酸血症・痛風:ヒドロクロロチアジドは尿酸値を上昇させる作用があります。本人または両親・兄弟に痛風、糖尿病がある患者では、高尿酸血症、高血糖症を来し、痛風、糖尿病の悪化や顕性化のおそれがあるため注意が必要です。
参考)利尿降圧薬「ヒドロクロロチアジド」チアジド系利尿薬 - 巣鴨…
痛風リスクについては、25mg未満の通常用量では痛風発作のリスク増加は認められないとする報告がありますが、25mg以上の用量ではリスクが増加する可能性があります。
参考)https://www.aafp.org/afp/2015/1001/p622
血糖値上昇・糖尿病:ヒドロクロロチアジドは血糖値上昇若しくは糖尿病顕性化のおそれがあるため、観察を十分に行う必要があります。
低血糖(頻度不明):脱力感、空腹感、冷汗、手の震え、集中力低下、痙攣、意識障害等があらわれた場合には、投与を中止し、適切な処置を行う必要があります。糖尿病治療中の患者であらわれやすいとされています。
ヒドロクロロチアジドの皮膚科領域における副作用として、特に重要なのが光線過敏症です。
光線過敏症
過敏症の一項として、頻度不明で呼吸困難、発疹、じん麻疹、顔面潮紅、光線過敏症が報告されています。
参考)ヒドロクロロチアジド錠25mg「トーワ」の基本情報(薬効分類…
光線過敏症は、日光や紫外線に対して皮膚が普通より強く反応してしまう状態で、テルミサルタン・ヒドロクロロチアジド(ミコンビ®)の臨床試験でも0.5~5%未満の頻度で発現が認められています。
参考)https://ubie.app/byoki_qa/medicine-clinical-questions/t7wkkap_jcz7
薬物誘発性光線過敏症は、経口または外用の光感受性薬剤の使用後に紫外線(UV)曝露により皮疹が生じる病態です。チアジド系利尿薬は、アミオダロン、非ステロイド性抗炎症薬、テトラサイクリン系抗菌薬、クロルプロマジン、フルオロキノロン系などと並んで、光線過敏症を引き起こす薬剤としてよく知られています。
実際の症例報告では、乾癬の治療中に308nmナローバンドUVBエキシマレーザー照射後にヒドロクロロチアジド誘発性光線過敏症を発症した例が報告されています。
皮膚がんリスク
あまり知られていない重要な情報として、ヒドロクロロチアジドの長期使用により非メラノーマ皮膚がん(NMSC)のリスクが増加する可能性が疫学研究で報告されています。具体的には、基底細胞がん(BCC)と有棘細胞がん(SCC)のリスク上昇が指摘されています。
参考)https://pdf.hres.ca/dpd_pm/00074953.PDF
この機序として、ヒドロクロロチアジドがUV光に対する感受性を高め、DNA損傷を促進する可能性が考えられています。長期にわたり高用量を使用している患者では、定期的な皮膚科診察による皮膚観察が推奨されます。
その他の皮膚症状
皮膚症状があらわれた場合には、投与を中止し、適切な処置を行う必要があります。
薬物動態
ヒドロクロロチアジドの薬物動態に関する詳細なデータは、添付文書やインタビューフォームに記載されています。
相互作用
ヒドロクロロチアジドは、以下の薬剤との相互作用に注意が必要です。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00066658.pdf
臨床使用上の注意点
参考)https://sokuyaku.jp/column/hydrochlorothiazide-hydrochlorothiazide.html
PMDA 医療用医薬品情報 ヒドロクロロチアジドOD錠12.5mg「トーワ」添付文書
PMDAの公式添付文書。副作用、禁忌、相互作用の詳細情報が記載されています。
日経メディカル処方薬事典 ヒドロクロロチアジド錠12.5mg「トーワ」
薬効分類、副作用、薬価などの基本情報を検索できます。
Wikipedia ヒドロクロロチアジド
作用機序、歴史、配合剤などの概要情報が記載されています。

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