
分散系とは、ある物質が微細な粒子として他の物質中に分散している状態を指します。 粒子の大きさによって、分散系は大きく3つに分類されます。
参考)分散系 - Wikipedia
分子分散系(粒子径1nm以下):生理食塩水や5%ブドウ糖液などが該当します。 半透膜を通過し、光学顕微鏡でも電子顕微鏡でも粒子は見えません。
コロイド分散系(粒子径1nm〜1μm):5%ポリソルベート80水溶液などが該当します。 半透膜は通過せず、光学顕微鏡では見えませんが、電子顕微鏡では観察可能です。
粗大分散系(粒子径1μm以上):赤血球浮遊液や懸濁性点眼液などが該当します。 光学顕微鏡でも観察可能で、半透膜も濾紙も通過しません。
この分類は薬剤師国家試験で頻出です。特に「1nm〜1μmがコロイド」という範囲は確実に押さえましょう。
参考)第99回薬剤師国家試験 問48 コロイド分散系 - yaku…
参考:分散系の定義と分類について詳しくはWikipedia「分散系」が参考になります。
懸濁剤(サスペンション)の安定性を理解する上で、Stokes(ストークス)式は必須の知識です。
参考)https://yakugakugakusyuu.com/94-172_bunnsannkei.html
Stokes式は以下の通りです:
\ u = \frac{2a^2(\rho-\rho_0)g}{9\eta} \
ここで、uは沈降速度、aは粒子半径、ρは粒子密度、ρ0は分散媒密度、gは重力加速度、ηは分散媒粘度を表します。
参考)https://tsukubabiryuushi.jpn.org/TPIEN2/116.pdf
Stokes式から分かる沈降速度を遅くする方法:
参考)http://www.yakugakugakusyuu.com/101-175_bunnsannkei.html
国家試験では「粒子径を1/3にすると沈降速度はどうなるか?」といった問題が出題されます。 粒子径の2乗に比例するため、(1/3)2 = 1/9となり、沈降速度は1/9になります。
ゴロで覚えるStokes式の要点:
「ストークスは、粒小さく、媒粘り、密度差減らせば、沈まぬ」
このゴロで、懸濁剤の安定化戦略を覚えておきましょう。
参考:Stokes式の導出と薬剤師国家試験の過去問解説は薬剤師国家試験過去問題集 分散系で確認できます。
乳剤と懸濁剤の沈降現象には、それぞれ異なる用語が用いられます。
乳剤(エマルション)のクリーミング:分散媒と分散相の密度差により、分散相が浮上または沈降してクリーム状の層を形成する現象です。 クリーミングは可逆的で、振とうにより再分散可能です。
懸濁剤(サスペンション)のケーキング:粒子が沈降して底部に固く堆積し、ケーキ状の層を形成する現象です。 ケーキングは不可逆的で、振とうしても再分散されません。
参考)ケーキングとクリーミングのゴロ(覚え方)|薬学ゴロ - 薬学…
ゴロで覚える乳剤と懸濁剤の違い:
「ケーキはミルククリーム」
このゴロで、乳剤と懸濁剤の沈降現象の違いを確実に押さえましょう。
さらに、乳剤の安定性に関する重要現象も覚えておきましょう:
参考:乳剤と懸濁剤のゴロ解説は薬学ゴロ「ケーキングとクリーミングのゴロ(覚え方)」が分かりやすいです。
界面活性剤の親水性・親油性のバランスを示す指標がHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値です。
参考)HLB値 - Wikipedia
HLB値の範囲と意味:
参考)https://kanazawa-u.repo.nii.ac.jp/record/35999/files/Full-N-1123132307-fujihira-atsushi.pdf
HLB値と乳化タイプ:
ゴロで覚える乳剤性基剤のO/WとW/O:
「ワオ!急に来るからバニーの親おわり」
参考)乳剤性基剤(w/o型・o/w型)のゴロ(覚え方)|薬学ゴロ …
このゴロで、W/O型は吸水クリーム・加水ラノリン、O/W型はバニシングクリーム・親水クリームと覚えましょう。
別のゴロとして:
「ウォー!精神欠く者、休暇を有す」
参考:HLB値の詳細はWikipedia「HLB値」、乳剤性基剤のゴロは薬学ゴロ「乳剤性基剤(w/o型・o/w型)のゴロ(覚え方)」が参考になります。
ここまでは薬剤師国家試験の定番ゴロを紹介しましたが、最後に医療現場での分散系の応用について、あまり知られていない視点を提供します。
分散系、特にナノ粒子分散系は、現代の薬物送達システム(DDS)において極めて重要な役割を果たしています。
参考)http://www.pharm.kobegakuin.ac.jp/~seizai/PharmNanotechAdvance2013-1.pdf
ナノ粒子分散系の医療応用例:
臨床で押さえるべきポイント:
注入用分散系製剤は、粒子径によって体内動態が異なります。
このため、抗癌剤のナノ粒子製剤(例:ドキソルビシンリポソーム製剤)は、従来の製剤に比べて心毒性が低く、腫瘍組織への選択性が高いという特徴があります。
意外な事実:
実は、私たちが日常的に使用している「生理食塩水」や「5%ブドウ糖液」も、厳密には分子分散系に分類されます。 一方、「5%ポリソルベート80水溶液」はコロイド分散系であり、半透膜を通過しないという点で、分子分散系とは明確に区別されます。
この違いは、透析や血液浄化療法において重要です。分子分散系の薬物は透析膜を通過しますが、コロイド分散系や粗大分散系の薬物は通過しません。
参考:ナノ粒子分散系の医療応用については神戸学院大学「錠剤の構造制御」の資料が参考になります。