アシノン錠(一般名:ニザチジン)は、H2ブロッカーに分類される胃酸分泌抑制薬として、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、逆流性食道炎の治療に広く使用されています。 医療従事者として、この薬剤の副作用を正しく理解し、患者に適切な指導を行うことは極めて重要です。
参考)アシノン錠150mgの基本情報(薬効分類・副作用・添付文書な…
副作用は、その頻度と重症度によっていくつかの分類に分けられます。 主な副作用としては、過敏症(発疹、じん麻疹、そう痒感)、消化器症状(便秘、下痢、口渇、嘔気)、精神神経系症状(頭痛、ねむけ、めまい、しびれ)などが挙げられます。 これらの副作用の発現頻度は、臨床試験で使用成績調査を含むデータから1.4%(21/1,491)と報告されています。
参考)https://hokuto.app/medicine/zhm66fn6IX5sSD7hbSV1
特に注意すべきは、頻度は低いものの重篤な転帰をとり得る「重大な副作用」です。 ショック、アナフィラキシー、再生不良性貧血、汎血球減少症、無顆粒球症、肝機能障害、黄疸、間質性腎炎、中毒性表皮壊死融解症(TEN)などがこれに該当します。 これらの副作用は、発現頻度が0.1%未満または頻度不明とされていますが、早期発見・早期対応が予後を大きく左右します。 アシノン錠150mgの基本情報(副作用・効果効能・電子添文な…

副作用の頻度別に整理すると、医療現場での観察ポイントが明確になります。 以下の表は、添付文書に基づいた副作用の分類と主な症状を示しています。
参考)アシノン錠150mgの効能・副作用|ケアネット医療用医薬品検…
| 頻度 | 分類 | 主な症状 |
|---|---|---|
| 0.1〜1%未満 | 過敏症 | 発疹 |
| 0.1〜1%未満 | 肝臓 | AST上昇、ALT上昇、肝機能異常 |
| 0.1〜1%未満 | 消化器 | 便秘 |
| 0.1%未満 | 過敏症 | じん麻疹、そう痒感 |
| 0.1%未満 | 血液 | 貧血、白血球減少、好酸球増多、血小板減少 |
| 0.1%未満 | 肝臓 | 頻度不明で黄疸 |
| 0.1%未満 | 消化器 | 下痢、口渇、嘔気、腹部膨満感 |
| 0.1%未満 | 精神神経系 | 頭痛、ねむけ、めまい、しびれ |
| 0.1%未満 | その他 | 女性型乳房、発熱、顔面浮腫、乳汁分泌 |
| 頻度不明 | 血液 | 顆粒球減少 |
| 頻度不明 | 精神神経系 | せん妄、失見当識、痙攣 |
| 頻度不明 | 外国報告 | 可逆性錯乱状態、インポテンス |
参考)医療用医薬品 : アシノン (アシノン錠75mg 他)
この表からわかるように、消化器症状の中でも便秘が比較的高頻度(0.1〜1%未満)で報告されています。 一方、下痢や口渇、嘔気などは0.1%未満と低頻度です。 精神神経系症状では、頭痛、ねむけ、めまい、しびれが0.1%未満で、より重篤なせん妄、失見当識、痙攣は頻度不明とされています。
意外な点として、女性型乳房、乳汁分泌などの内分泌系の副作用が報告されていることが挙げられます。 これは、H2ブロッカーがプロラクチン分泌に影響を与える可能性によるもので、患者から「胸が張る」「乳汁が出る」といった訴えがあった場合、薬剤性の可能性を考慮する必要があります。 また、外国において発現した副作用として、可逆性錯乱状態やインポテンスが報告されており、長期投与患者や高齢者ではこれらの症状にも注意を払うべきです。
参考)https://www.shirasagi-hp.or.jp/goda/fmly/pdf/files/731.pdf
腎機能低下患者におけるアシノン錠の投与は、特別な注意を要します。 本剤は主に腎臓から排泄されるため、腎機能が低下すると血中濃度が持続し、副作用の発現リスクが高まります。
参考)https://hokuto.app/medicine/3vmne4DdnU5zLmPKMkCO
添付文書には明確に記載されています。「腎機能障害患者:血中濃度が持続するので、投与量を減ずるか投与間隔をあけて使用すること(本剤は腎排泄が主であるため、腎機能障害患者に150mgを経口投与した場合、腎機能低下にともなう血漿中半減期遅延と、血漿クリアランス低下がみられた)。」 具体的には、腎機能の程度(Ccr値)に応じて、以下の用量調整が推奨されています。
| 腎機能(Ccr) | 推奨用量 | 投与間隔 |
|---|---|---|
| 50 mL/分以上 | 通常通り | |
| 30〜50 mL/分 | 150mg | 1日1回 |
| 10〜30 mL/分 | 150mg | 2日1回 |
| 10 mL/分未満 | 150mg | 3日1回 |
参考)https://www.jsnp.org/docs/JSNP-yakuzai_dosing_30.pdf
透析患者への投与法については、透析後に150mg、または隔日150mgが推奨されています。 過量投与により、見当識障害や痙攣などの精神神経症状、顆粒球減少症が腎不全患者では発症しやすいと報告されています。
高齢者は生理的に腎機能が低下していることが多いため、高齢者への投与においても「血中濃度の持続:腎機能の程度に応じて用量ならびに投与間隔に留意するなど慎重に投与すること」との注意喚起がなされています。 臨床現場では、eGFR(推算糸球体濾過量)を routinely に確認し、必要に応じて用量調整を行うことが、重篤な副作用の予防に繋がります。
参考)https://cdn.jsn.or.jp/academicinfo/report/CKD-guideline2016.pdf
重大な副作用の早期発見には、患者への適切な指導と、医療従事者による継続的なモニタリングが不可欠です。 以下に、特に注意すべき重大な副作用とその初期症状、対応について詳述します。
参考)アシノン錠150mgの基本情報(作用・副作用・飲み合わせ・添…
ショック、アナフィラキシー(0.1%未満)
蕁麻疹、血圧低下、気管支痙攣、咽頭浮腫、呼吸困難等の症状があらわれることがあります。 服用後すぐに皮膚のかゆみ、じんましん、声のかすれ、くしゃみ、のどのかゆみ、息苦しさ、動悸、意識の混濁等があらわれた場合は、直ちに投与を中止し、適切な処置を行う必要があります。
参考)アシノンZ錠 - 基本情報(効果・効能、用法・用量、副作用な…
再生不良性貧血、汎血球減少症、無顆粒球症、血小板減少(0.1%未満)
初期症状として全身倦怠感、発熱、出血傾向(鼻血・歯茎からの出血、青あざができやすい等)がみられることがあります。 これらの症状が認められた場合は、その時点で血液検査(CBC)を実施し、異常が認められた場合は直ちに投与を中止します。 高齢者では血球減少を発現しやすいとの報告もあるため、特に注意深い観察が必要です。
参考)アシノン錠75mg - 基本情報(用法用量、効能・効果、副作…
肝機能障害、黄疸(頻度不明)
AST、ALT、γ-GTP上昇等の肝機能障害や黄疸が発現することがあります。 患者から「皮膚や白目が黄色い」「尿が褐色」「全身のだるさ、食欲不振」などの訴えがあった場合は、肝機能検査を実施し、異常が認められた場合は投与を中止します。
間質性腎炎(頻度不明)
腎機能の急激な低下や尿所見の異常(蛋白尿、血尿等)が認められた場合は、間質性腎炎の可能性を考慮し、投与を中止して適切な処置を行います。 本剤は腎排泄が主であるため、腎機能に及ぼす影響は常に念頭に置く必要があります。
中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(SJS)(頻度不明)
高熱、目の充血、目やに、唇のただれ、のどの痛み、皮膚の広範囲の発疹・発赤等が持続したり、急激に悪化する場合は、直ちに医師の診療を受ける必要があります。 これらの症状は、服用後比較的回数を経過してから発現することもあるため、患者には「発疹が出たらすぐに連絡する」よう指導することが重要です。
房室ブロック(頻度不明)
心電図上で房室ブロックなどの伝導障害が認められた場合は、投与を中止し、循環器専門医へのコンサルトを考慮します。
長期投与患者では、ビタミンB12濃度のモニタリングも推奨されています。 重症の胃底部の胃炎患者では、長期投与により内因子の分泌が障害される可能性があり、ビタミンB12欠乏症を来すリスクがあります。 貧血や神経症状(手足のしびれ等)が出現した場合は、この可能性を考慮すべきです。
アシノン錠の副作用として、あまり注目されていないが重要なカテゴリーが「精神神経系」の副作用です。 頭痛、ねむけ、めまい、しびれなどの比較的軽度な症状から、せん妄、失見当識、痙攣、可逆性錯乱状態などの重篤な症状まで、幅広い症状が報告されています。
特に高齢者では、これらの精神神経系副作用の発現リスクが高まります。 添付文書には、「高齢者で血球減少を発現しやすい経口があるため慎重に観察」との記載がありますが、精神神経系症状についても同様の注意が必要です。 腎機能の低下により血中濃度が上昇しやすいため、用量調整を適切に行うことが、これらの副作用の予防に繋がります。
参考)胸やけ・胃もたれがつらい…そんなときの薬『アシノン』とは?
せん妄や失見当識は、認知症患者や脳血管障害の既往がある患者では、特に発現しやすいとされています。 患者や家族から「最近、ぼんやりしている」「話の内容が入ってこない」「昼夜逆転している」などの訴えがあった場合は、薬剤性のせん妄を疑い、アシノン錠の減量または休薬を検討します。
また、外国において発現した副作用として「可逆性錯乱状態」が報告されています。 これは、投与中止により改善する錯乱状態を指し、高齢者や腎機能低下患者で発現しやすいと考えられます。 臨床現場では、このような症状を「高齢者の気持ちの問題」「認知症の進行」として片付けず、薬剤性の可能性を常に念頭に置くことが重要です。
アシノン錠(ニザチジン)は、胃酸分泌を抑制する作用を持つため、胃酸のpHに依存して吸収される薬剤との併用により、それらの薬剤の吸収を低下させる可能性があります。 具体的には、以下のような薬剤との併用に注意が必要です。
これらの薬剤との併用は避けるか、投与間隔を調整(アシノン錠の服用後、時間を置いてから他の薬剤を服用)する必要があります。
また、アシノン錠自体の代謝にも注意が必要です。 本剤は主として肝臓で代謝されるため、肝機能障害患者では血中濃度が上昇するおそれがあります。 肝機能障害を有する患者や、肝代謝酵素を阻害する薬剤(例:シメチジンなど)を併用している患者では、アシノン錠の用量調整を考慮することが望ましいです。
参考)https://medical.itp.ne.jp/kusuri/shohou-20091026002653/
さらに、他のH2ブロッカー(ファモチジン、ラニチジンなど)やプロトンポンプインヒビター(PPI)との併用は、作用が重複するため原則として避けるべきです。 胃酸分泌抑制作用が過度になると、消化管感染(特にクロストリジウム・ディフィシル感染症)のリスクが増加するとの報告もあります。
参考)アシノン錠(ニザチジン)に含まれている成分や効果、副作用など…
参考リンク: PMDA アシノン錠 適正使用のお願い
このリンク先には、アシノン錠の適正使用に関する重要な情報が記載されており、特に重大な副作用の早期発見や、患者への指導ポイントについて詳しく説明されています。
参考)https://www.pmda.go.jp/files/000143322.pdf
参考リンク: 日本病院薬剤師会 腎機能低下時の薬剤投与量一覧
腎機能低下時のアシノン錠の用量調整について、具体的な数値と推奨が記載されています。臨床現場での用量設定の参考として有用です。
参考)https://www.jsnp.org/docs/JSNP-yakuzai_dosing_33.pdf
参考リンク: 日経メディカル アシノン錠150mgの基本情報
添付文書に基づく、副作用、用法用量、注意点などの基本情報が網羅的にまとめられています。日常の診療で素早く情報確認したい場合に便利です。
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