
アダラート(一般名:ニフェジピン)は、カルシウム拮抗薬に分類される高血圧症・狭心症治療薬です。持続性Ca拮抗剤として血管平滑筋および心筋細胞内へのカルシウムイオン流入を抑制し、冠血管を拡張するとともに全末梢血管抵抗を減少させる作用機序を持ちます。
参考)医療用医薬品 : アダラート (アダラートCR錠10mg 他…
頻尿はアダラートの添付文書に記載されている副作用の一つであり、発現頻度は0.1〜5%未満とされています。この頻度は「とても多いわけではありませんが、頻度や時間帯によっては不快に感じることが多い副作用」であり、特に夜間の頻尿により睡眠が妨げられる場合、患者のQOL(生活の質)を著しく低下させる要因となります。
参考)https://ubie.app/byoki_qa/medicine-clinical-questions/kxekwjx2v1_d
臨床試験および承認後の調査で確認されているアダラートCRの主な副作用には、頭痛(2.12%)、顔面潮紅(1.62%)、動悸(1.29%)などがあり、頻尿はこれらの主要副作用に比べると発現頻度は低いものの、無視できない副作用として認識されています。
参考)https://www.nyredcross.org/products/178/123
カルシウム拮抗薬による頻尿、特に夜間頻尿の発現メカニズムには複数の要因が関与しています。
第一に、カルシウム拮抗薬は血管の平滑筋に作用して血圧を下げますが、泌尿器系の平滑筋にも影響を与える可能性があります。この作用により、膀胱機能に変化が生じ、頻尿や夜間頻尿を引き起こすと考えられています。
第二に、浮腫(むくみ)との関連性です。アダラートCRの副作用として浮腫(0.1%)が報告されており、この浮腫として生じた水分が夜間に臥床した際に血管内に戻り、腎血流量の増加とともに夜間頻尿を引き起こす可能性があります。
第三に、塩分排泄の日内リズムへの影響です。Ca拮抗薬には塩分を排出する働きが無いため、日中にナトリウムを十分に排出するまで血圧が上がりきらず、かえって夜間に塩分を排泄するため、夜間多尿・頻尿が増加するというメカニズムが提唱されています。
医学的エビデンスとして、自治医科大学附属さいたま医療センター泌尿器科の研究(2021年)では、40歳以上の男性418人を対象に解析した結果、カルシウム拮抗薬を服用している患者でのみ夜間排尿回数の有意な増加が認められ、多変量解析でCa拮抗薬の服用(オッズ比2.68、p<0.0001)が臨床的に重要な夜間頻尿の独立したリスク因子である可能性が示唆されました。
参考)2021年7月19日 血圧の薬カルシウム拮抗薬は男性の「夜間…
さらに注目すべき点は、この傾向が若年者(40〜65歳)で顕著であることです。この年代では、カルシウム拮抗薬を飲んでいない男性の夜間の排尿は0.96回なのに対し、飲んでいる男性では2.00回に上昇しています。これは、高齢者だけでなく中高年の男性患者においても注意が必要な副作用であることを示しています。
頻尿の発現に対して、医療従事者が実施できる具体的な対策には以下のようなものがあります。
参考)夜尿と降圧剤の関係、降圧剤は朝夕どちらに内服するか - 心臓…
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00005939.pdf
医療従事者が知っておくべき意外な事実として、カルシウム拮抗薬は「血圧高値そのものとは異なり、夜間頻尿との関連が認められる唯一の降圧薬」であるという点があります。
高齢者高血圧診療ガイドラインでは、「ループ利尿薬やCa拮抗薬は、夜間頻尿を増悪させる可能性があるので注意する」と明記されており、推奨グレードBで注意喚起がなされています。
また、アダラートCRの副作用発現率には性差があり、女性2,561名と男性2,482名を対象にした調査では、女性は12.5%、男性は8.2%と女性の方が副作用発現率が高いと報告されています。しかし、夜間頻尿に関しては40歳以上の男性において特に顕著な関連性が示されており、性差と年齢層による発現パターンの違いを理解した患者指導が重要です。
さらに、アダラートは徐放剤(CR錠)であるため、分割・粉砕は重篤なリスクを生じる可能性があります。頻尿対策として安易に錠剤を分割したり粉砕したりすることは避け、医師の指示のもとで適切な対応を行う必要があります。
患者への指導において、以下のポイントを伝えることが重要です。
アダラートCR錠 添付文書(医療用医薬品インタビューフォーム)
日本泌尿器科学会 夜間頻尿診療ガイドライン 第2版
愛知県医師会 医薬品使用時に生じる排尿障害
【第1類医薬品】ロキソニンSプレミアム 24錠