あなたのその処方、来月には通せません。

ザジテンはケトチフェンフマル酸塩を有効成分とする抗アレルギー薬で、カプセル・ドライシロップ・点眼液の3剤形が長年臨床で使われてきました。
サンファーマ株式会社は「諸般の事情」としながらも、実質的な理由は需要の低下です。後発品の普及が進み、先発品を維持するメリットが薄れたことが背景にあります。
つまり成分自体が消えたわけではないということですね。
経過措置期間とは、製造販売中止後も薬局・医療機関が既存在庫を流通させられる期間のことです。カプセル1mgはこの経過措置満了が2026年3月末に設定されており、ちょうど今、猶予期間の後半に入っています。
代替製品としてはケトチフェンカプセル1mg「NIG」が指定されており、薬価は8.20円から6.10円へ下がります。約25%の薬価差は、はがき1枚分の郵送料が浮く程度の小さな差に見えますが、月単位・年単位で処方する慢性疾患薬としては積み重なると軽視できません。
カプセル剤の在庫消尽予定は、包装規格によって異なります。10カプセル×10包装は2025年7月、10カプセル×50包装は2025年6月に消尽見込みとされています。
一方で経過措置満了は2026年3月末です。
ここに落とし穴があります。在庫が尽きるタイミングと、制度上「まだ流通させてよい」期間には数か月のズレがあるということです。在庫がなければ、経過措置期間中であっても実際には入手できません。
出荷状況により在庫消尽の時期は前後する場合があると明記されている点も見落とせません。処方する側が「経過措置期間中だからまだ大丈夫」と思い込んでいると、実際の窓口で薬が出せない事態に直面します。
これは意外ですね。制度上の期限と、現場での入手可能性は別物だと覚えておく必要があります。
対応としては、電子カルテの処方オーダーで在庫状況を都度確認する→切替え先候補を事前登録しておく→ケトチフェンカプセル「NIG」への変更を1クリックで選べるようにしておく、という流れが実務的です。
点眼液の販売中止の背景は、カプセルとやや異なります。1日4回点眼が必要なケトチフェンに対し、1日2回で済むエピナスチン(アレジオン)やオロパタジン(パタノール)が処方シェアを伸ばしたことが主な要因です。
日経メディカルの処方シェア調査(2026年3月公表)では、ケトチフェンは第3位で約9.3%です。ゼロにはなっていません。
先発品ザジテン点眼液0.05%は50本包装が先行して中止となり、現在は10本包装のみ限定的に流通しています。一方でケトチフェン後発品は10社以上から供給が続いており、薬価は先発品273円/瓶に対し後発品は約130〜160円/瓶です。
約4〜5割低コストという計算になります。東京ドーム何個分、というような大きな差ではありませんが、長期処方の患者にとっては年間の自己負担額に無視できない影響を与えます。
コンタクトレンズ使用者への指導も重要です。点眼前にレンズを外し、15分以上待ってから再装着するよう伝える必要があります。防腐剤に敏感な患者には、防腐剤フリー(PF)タイプの後発品を選ぶ選択肢もあります。
ドライシロップ0.1%は小児のアレルギー疾患に広く使われてきた剤形です。この製剤の経過措置満了は2027年3月末と、カプセルより1年遅く設定されています。
猶予期間が長いということですね。
小児科領域では剤形変更が患者・保護者の負担に直結しやすい特性があります。カプセルが飲めない年齢層に処方されてきたため、後発品への切替えタイミングを慎重に見極める必要があります。
保護者への説明時には、「お薬の名前は変わりますが、成分と効果は同じです」という一言を添えるだけで、切替えへの抵抗感が大幅に下がります。院内の薬剤部と連携し、後発品の採用銘柄を統一しておくことも、混乱を防ぐ実務的な工夫です。
ここまでは制度面・薬価面の話でしたが、もう一つ見落とされがちな視点があります。それは「処方習慣の慣性」が生むリスクです。
長年ザジテンを処方してきた医師や、調剤を続けてきた薬局では、製品名の変化に気づかないまま処方・調剤が続くケースがあります。
具体的には次のような問題が起きやすいです。
「成分が同じだから問題ない」というのは処方側の論理です。患者側にとっては、見た目や刺激感の変化が「薬が変わった」という不安につながります。
疑義照会やクレームを減らすには、切替えのタイミングで一言添える運用が有効です。「お薬の名前は変わりますが、成分・効果・用法はまったく同じです」という説明を添えるだけで、患者の不安は大きく軽減されます。
院内の電子カルテに後発品一覧をポップアップ表示させる設定を加えることも、すぐに実行できる対策のひとつです。薬剤部・薬局と連携し、採用銘柄をあらかじめ統一しておくことが、長期的な処方の一貫性を保つポイントになります。
ザジテン点眼液の販売中止理由と代替薬選びの実務的な比較がまとめられています
サンファーマ発表のザジテンカプセル1mg販売中止案内、在庫消尽予定と代替製品の詳細が確認できます
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