
建設業の材料費は、使用目的によって3種類に明確に区分して仕訳するのが実務上の鉄則です 。同じ材料でも「どの現場に使うか」「どのように使うか」で勘定科目が変わるため、間違えると原価管理がズレて利益率が誤って計算されるリスクがあります 。
まず直接材料費は、特定の工事に直接使用する材料の費用を指します 。コンクリート・鉄筋・木材・電線など、その工事がなければ使わない材料が該当し、工事の完成に必要な主たる実体を構成するものです 。この直接材料費は「未成工事支出金」勘定の材料費として、工事ごとに個別集計します 。
次に間接材料費は、複数の工事で間接的(共通的)に消費される材料です 。例えば、釘・ネジ・接着剤・消耗工具など、複数の現場で共通して使用する消耗品がこれに当たります 。間接材料費は「現場経費(工事間接費)」勘定で処理し、関連する各工事に配賦されます 。
そして仮設材料費は、工事現場において工事の実施を補助するために消費され、工事の完了とともに撤去される材料の費用です 。足場・型枠・支保工・仮囲いなど、工事完了後に撤去・再使用する材料が対象となります 。仮設材料費は「未成工事支出金」で一度計上しますが、工事が完了して仮設材料を撤去した後、再使用できる材料は「仮設材料(棚卸資産)」に戻し、損耗・廃棄した分だけが最終的な費用となります 。
材料費の仕訳で最も混乱しやすいのが、「この材料は特定の工事に使ったのか、複数の工事に使ったのか」の判断です 。材料費のミスが起きる主な原因は、この区分の誤りと、購入時・使用時のタイミングのズレにあります 。
| 材料費の区分 | 具体例 | 使用する勘定科目 | 処理方法 |
|---|---|---|---|
| 直接材料費 | コンクリート・鉄筋・木材・電線 | 未成工事支出金(材料費) | 工事別に個別集計 |
| 間接材料費 | 釘・ネジ・接着剤・消耗工具 | 現場経費(工事間接費) | 複数工事に配賦 |
| 仮設材料費 | 足場・型枠・支保工・仮囲い | 未成工事支出金→仮設材料(棚卸資産) | 再使用分は資産に戻す |
意外な事実として、仮設材料費は「消費した分だけ」を費用計上する点が重要です 。例えば、100万円で購入した型枠材料のうち、工事で損耗・廃棄した分が30万円、残りの70万円は次回工事で再使用できる場合、実際の費用は30万円のみとなります 。この処理を怠ると、原価が過大計上され利益が過少計上されることになります。
建設業の材料費仕訳は、一般的な会社とは異なり「材料を工事に投入するまで資産として管理」するため、仕訳が複数ステップに分かれます 。材料を購入した時点では、まだ工事に使用していないため、「材料貯蔵品」または「未成工事支出金」として資産計上します 。
参考)建設業の材料費仕訳を解説!購入から工事完成までの流れ|建設業…
材料購入時の仕訳は、搬入のシチュエーションによって使用する勘定科目が異なります 。
参考)材料費の仕訳とは?在庫管理の基本ルールを建設業向けに解説
ケース①:購入後、直接現場へ搬入する場合
購入時点で特定の工事が決まっており、直接現場へ搬入する材料は、「未成工事支出金」勘定で工事原価(仕掛品)として即時に計上します 。
仕訳例:A工事用の鉄筋を50万円分購入し、買掛金で処理する場合
ケース②:購入後、一旦自社倉庫に保管する場合
どの工事に使うか決まっていない材料(倉庫保管分)は、「材料貯蔵品」として棚卸資産に計上し、消費されるまで待機させます 。
仕訳例:材料を30万円分購入して倉庫に入庫した場合
倉庫から現場へ払い出す場合
倉庫から材料を工事現場に出庫した時点で、「材料貯蔵品」から「未成工事支出金」に振り替えます 。
仕訳例:倉庫から30万円分の材料をA工事に出庫した場合
この一連の流れを整理すると以下のようになります 。
| 搬入のシチュエーション | 使用する勘定科目 | 会計処理の内容 |
|---|---|---|
| 購入後、直接現場へ搬入 | 未成工事支出金 | 工事原価(仕掛品)として即時に計上 |
| 購入後、一旦自社倉庫に保管 | 材料貯蔵品 | 棚卸資産として計上し、消費されるまで待機 |
| 倉庫から現場へ払い出し | 未成工事支出金 | 材料貯蔵品から未成工事支出金へ勘定を振り替え |
材料貯蔵品の定義は、「手持ちの工事用材料及び消耗工具器具等並びに事務用消耗品等のうち、未成工事支出金、完成工事原価又は販売費及び一般管理費として処理されなかったもの」です 。倉庫などに保管されている原材料などが該当し、工事現場に搬入されると未成工事支出金に振り替えられます 。
参考)仕掛品を科目追加して計上
建設業の会計処理は少し特殊で、工事が完成するまでの費用は「未成工事支出金」という資産勘定に集約されます 。そして、建物が完成し引き渡されたタイミングで、まとめて「完成工事原価」という費用に振り替えるのが一般的です(工事完成基準)。
参考)建設業の未成工事支出金とは?仕訳と振替を完全解説|建設業の事…
工事が完成・引き渡しが完了した時点で、「未成工事支出金」に積み上がったすべての原価を「完成工事原価」に振り替えます 。
仕訳例:未成工事支出金80万円を完成振替えする場合
この仕訳で工事原価が損益計算書に計上され、利益が確定します 。完成工事原価は、一般企業の「売上原価」に相当する勘定科目です 。材料費をはじめ、労務費、外注費、経費などの工事原価の合計額がここに集約されます 。
決算時の棚卸資産処理
決算時には、材料貯蔵品の棚卸処理が必要です 。期末時点で倉庫に残っている材料は「材料貯蔵品」として資産計上し、翌期首に再び「未成工事支出金」へ戻す処理を行います 。
仕訳例:期末に材料貯蔵品20万円を棚卸資産として計上する場合
参考)年末を迎えたら決算整理仕訳を入力する - 建設業をトータルサ…
翌期首の仕訳
参考)http://zeirishi3.cafe.coocan.jp/shelf/Bookkeeping/BK_B06.pdf
この処理を怠ると、当期の費用が過大計上され、翌期の費用が過少計上されることになります 。月末棚卸を定期実施して計上タイミングのズレを防ぐことが、正確な原価管理のポイントです 。
建設業会計では「完成工事高」「完成工事未収入金」「工事未払金」など、建設工事特有の勘定科目が使用されています 。材料費と関連する勘定科目として、「完成工事原価」「未成工事支出金」「工事未払金」があげられます 。
材料費の購入時に現金で支払わず、後日支払う場合は「工事未払金」勘定を使用します 。
仕訳例:材料費10万円を掛けで購入した場合
完成工事未収入金は、工事は完成したが、まだ代金を受け取っていない場合に使用する資産勘定です 。工事が完成した時点で「完成工事高」として売上計上し、代金回収時に「完成工事未収入金」を減少させます 。
仕訳例:工事が完成し、売上100万円を計上、うち80万円を未収入とした場合
一般企業ではこれらの勘定科目は用いられず、材料費はそれぞれ「売上原価」「仕掛品」「買掛金」で管理されています 。建設業特有の勘定科目を理解し、適切に使用することが、正確な財務諸表の作成につながります 。
税務調査で特に注目されるのが、材料貯蔵品の棚卸処理と未成工事支出金の残高管理です 。材料費の仕訳で最も混乱しやすいのが、「この材料は特定の工事に使ったのか、複数の工事に使ったのか」の判断であり、この区分が不明確だと税務調査で指摘されるリスクがあります 。
実務上の注意点として、以下の3点が挙げられます 。
1. 出庫伝票や出庫記録を必ず残す
2. 月末棚卸を定期実施する
3. 仮設材料の残材価値を適切に評価する
また、材料費のミスが起きる3つの原因として、以下の点が挙げられます 。
これらを防ぐために、材料費仕訳は3区分(直接材料費・間接材料費・仮設材料費)で考え、購入時は「材料貯蔵品」、使用時に「未成工事支出金」へ振替、月末棚卸を定期実施して計上タイミングのズレを防ぐことが重要です 。
国土交通省 建設業法施行規則 別記様式第十五号 材料費の定義
参考)https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/sgml/1982/26220000/26220000.html
参考)https://www.ciac.jp/siwake.pdf
freee税理士検索 建設業において材料を購入したときの勘定項目
参考)未成工事支出金とは?建設業会計の仕訳例や内訳・会計処理・管理…