
帝京大学医学部附属病院の写真を探す人が最初に目にするのは、板橋区加賀に位置する大規模な病院棟の外観である。写真を単に「大学病院らしい高層建築」と捉えるだけでは、この施設の役割を十分に理解できない。病院は帝京大学板橋キャンパスにあり、医学部、薬学部、医療技術学部が集約された教育・研究・診療の一体型拠点である。
病院棟は、過去の公開資料では地下2階、地上19階、診療機能は18階までとされ、免震構造を採用している。延べ床面積は駐車場を含め約11万1,000㎡とされる。大規模災害時にも診療を継続することを想定し、エネルギーセンターにはガスコージェネレーションシステムと災害用発電機が整備され、屋上にはヘリポートも設置されている。外観写真の高層性は、病床数の多さだけでなく、救急・周産期・手術・集中治療・教育研究を同一敷地で支える都市型大学病院の構造を反映している。
2024年策定の大学病院改革プランでは、許可病床数は1,014床、集中治療系病床は98床、病棟数は30病棟と示されている。資料ごとに病床数が異なる場合があるため、記事や院内資料で数値を扱う際には、撮影時期・公表年・病床区分を併記することが重要である。古い写真の解説に最新の病床数を無条件で重ねると、施設の変遷を見落とすおそれがある。
参考)https://www.teikyo-hospital.jp/hospital/information/pdf/kaikakuplan_teikyohp_02.pdf
板橋キャンパスの公式案内では、病院棟の6階に女性・研究者支援センター、展望レストラン、コンビニエンスストアがあり、1階には飲食店、銀行出張所などが配置されている。こうした案内写真は患者・家族の利便性を示すだけでなく、長期治療、付き添い、医療従事者の勤務環境を支える非診療機能を可視化する資料でもある。
参考)板橋キャンパス
帝京大学医学部附属病院の写真で最も医療従事者の関心を集めやすいのが、1階に置かれた高度救命救急センターとERである。当院は特定機能病院であり、東京都の高度救命救急センター、総合周産期母子医療センター、災害拠点中核病院、地域がん診療連携拠点病院などの指定・承認を受けている。写真に写る救急入口、救急車両スペース、初療室は、外来の延長ではなく、地域の三次救急機能を担う入口として理解する必要がある。
注目すべき設備はハイブリッドER型初療室である。ここではCT、IVR、緊急手術へと連続的に移行できる設計が採られている。重症外傷や意識障害の患者を、CT室、血管造影室、手術室へ何度も搬送する従来の動線では、移送そのものが時間的・生理学的リスクになり得る。ハイブリッドERでは患者を移動させず、全身CTによる病態評価、血管内治療、開胸・開腹手術の判断と実施を迅速化できる。
公開されている中央放射線部の紹介では、1階のIVR-CT室に320列CTと血管撮影装置が一体化して配置され、重症外傷や脳卒中などの患者を直接搬入して撮影できると説明されている。写真で大型のCTガントリ、天井走行型の設備、処置スペースを確認した場合、それは「CTがある部屋」ではなく、初療と治療の境界を縮めた空間である。
意外に見落とされやすいのは、救急写真に映る「余白」である。処置に必要な人員、輸液・人工呼吸器・除細動器、画像機器、清潔操作のためのスペースが同時に機能するため、初療室は単に広ければよいわけではない。救命の質は機器の性能だけでなく、チームが衝突せずに動ける空間設計と、あらかじめ共有された手順によって支えられる。
帝京大学医学部附属病院の写真では、画像診断センターや中央放射線部を紹介する機会も多い。施設構成では2階が画像診断センター、4階には血管造影検査室、循環器センター、中央手術部、院内ICUが配置されている。これらの位置関係は偶然ではない。救急・循環器・外科・放射線部門が時間依存性の高い患者に対応するため、検査と治療の移行を意識して整えられた配置である。
画像診断の現場を紹介する写真では、MRIやCTの磁場強度、列数、装置メーカーの情報に話題が寄りがちである。しかし、医療従事者向けの記事では「どの装置か」だけでなく、「どの患者に、どの時間帯に、誰が、どの手順で使えるか」を書くと情報価値が高まる。例えば救急MRIは、急性期脳梗塞や脊髄損傷への対応を想定し、当直業務を担う診療放射線技師へのトレーニングとマニュアル整備、対応困難時の緊急呼び出し体制を含めて運用される。
また、IVR-CT室の画像処理では、動脈相画像を迅速に確認し、3D構築や仮想透視画像を治療支援に活用する。ここで重要なのは、「画像が診断の結果」ではなく「次の処置を決めるリアルタイムの情報」である点だ。特に外傷性出血では、目的血管への到達を支援する画像処理がTAEの迅速な実施に関わる。
大学病院改革プランは、手術支援ロボット、ハイブリッド手術室、最新の放射線治療機器、ハイブリッドERシステムを、高度の専門治療を支える設備として挙げている。写真を掲載する際は、医療機器を「先進的」とだけ説明するのではなく、対象疾患、チーム構成、患者移送の削減、放射線安全、教育活用など、臨床上の意味を補うべきである。
放射線部が救命カンファレンスに参加し、撮影画像に対する臨床側のフィードバックを得ている点も重要である。画像の品質管理は撮影条件だけで完結しない。救急医が求める所見、外科医が必要とする血管情報、IVR医が必要とする立体的な走行情報を理解してこそ、撮影と画像処理が診療行為として完成する。
帝京大学医学部附属病院の写真を読む際に独自の視点として持ちたいのが、「写っていない人」と「写っていない教育」である。高度医療機器、救急車、病院建築は視覚的に伝えやすい。しかし、大学病院の本質は診療、教育、研究を同時に担うところにあり、写真の背後には学生、研修医、専門研修医、薬剤師、看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーなどの学習と協働が存在する。
同院は医学部だけでなく、薬学部、医療技術学部の臨床実習受入機関でもある。薬学部5年次の病院実務実習では年間75名の学生受け入れを確保し、早期臨床体験では医学部・薬学部の学生に薬剤部業務を説明し、調剤室や薬物中毒測定室などを見学するプログラムを示している。医療従事者向けの写真記事では、白衣姿の学生を単なる広報素材として扱わず、患者安全と教育を両立する実習体制の一部として解説したい。
同院の薬剤部は、薬物中毒患者に対する迅速な薬物血中濃度測定の結果を医師・看護師へフィードバックし、治療方針に貢献する方針を掲げている。また、院内製剤の調製・安定性評価、抗菌薬のPK/PD解析、認知症治療薬の使用実態評価など、診療現場と教育研究を接続する取組も記載されている。薬剤師の写真を用いるなら、調剤業務の場面だけでなく、TDM、抗菌薬適正使用、治験・臨床研究支援、医師への処方提案といった専門性まで説明することで、職能の解像度が上がる。
| 写真の対象 | 医療従事者が読むべき背景 |
|---|---|
| 手術室・血管造影室 | 外科、循環器内科、麻酔科、放射線部、臨床工学技士による役割分担 |
| 薬剤部・外来化学療法室 | 無菌調製、支持療法、レジメン管理、服薬支援、薬学的モニタリング |
| 実習・カンファレンス | 学生教育、初期研修、専門研修、医療安全文化、臨床研究の基盤 |
| 病棟・退院支援部門 | 地域連携、逆紹介、在宅移行、患者・家族の意思決定支援 |
さらに、臨床研究・治験統括センターや臨床研究センターの存在は、写真に直接写りにくいが、特定機能病院としての責務に関わる。治験や臨床研究では、倫理審査、研究計画書のレビュー、データ管理、CRCによる患者支援が不可欠である。研究成果の写真や学会発表の場面を扱う場合も、患者の権利と個人情報を守るための体制に触れることで、医学情報としての信頼性が増す。
帝京大学医学部附属病院の写真をブログ、院内報、採用広報、学会資料に使用する場合、もっとも優先すべきなのは患者のプライバシーと医療情報の保護である。顔が写っていなくても、病室番号、リストバンド、モニター画面、電子カルテ、検査画像の患者ID、診療予約票、背景の会話などから個人が識別される可能性がある。患者が写る写真は、口頭での了承だけに依存せず、利用目的、掲載媒体、二次利用の有無、掲載期間を明確にした同意取得が必要となる。
医療従事者を撮影する場合も、清潔区域、放射線管理区域、手術室、救急初療室では演出のための撮影が診療を妨げないように配慮する。とくに救急現場は、予測不能な状態変化に対応する場所である。撮影者の立ち入り位置、フラッシュの使用、動線の遮断、感染対策、機器への接触防止を事前に決める。医療広報のための1枚が、患者安全やスタッフの集中を損なってはならない。
また、設備写真には撮影日と注記を添えたい。病床数、診療体制、設置機器、フロア用途、予約手順は更新されるため、「撮影時点の情報」であることを明確にする。大学病院改革プランが示すように、外来化学療法室の移転・拡張計画や患者サポート機能の整備など、施設は医療需要に合わせて変化する。写真は一瞬を切り取るが、医療機関は常に運用を更新している。
参考リンク:病床数、指定機能、高度急性期医療、教育研究、地域連携、医療DXに関する公式の改革方針を確認できる。
帝京大学医学部附属病院 大学病院改革プラン
参考リンク:板橋キャンパスにおける医学部附属病院、大学棟、研究・教育施設、院内利便施設の配置を確認できる。
帝京大学 板橋キャンパス
参考リンク:救急初療室、IVR-CT室、MRI撮影室など、中央放射線部の救急対応と画像機器の運用を具体的に確認できる。
日本救急撮影技師認定機構:第5回 帝京大学医学部附属病院