質量分析 原理 わかり やすく 医療 薬学 基礎

質量分析の基本原理を医療従事者向けに解説。イオン化から検出までの仕組み、医療現場での応用例、意外な歴史的事実まで深掘り。この技術がなぜ創薬やがん診断に不可欠なのか、知りたくありませんか?

質量分析 原理 わかり やすく

質量分析 原理 わかり やすく
🔬
分子の質量を測定する分析法

原子や分子をイオン化し、質量電荷比で分離・検出

⚕️
医療現場で不可欠な技術

薬物濃度測定、がんマーカー探索、代謝物同定に活用

💡
意外な歴史的事実

J.J.トムソンの電子発見実験が質量分析の起源


質量分析 原理 の基本構造 4つのステップ



質量分析(Mass Spectrometry: MS)は、原子や分子の質量電荷比(m/z)を測定することで物質の種類や性質を調べる分析法です。 医療現場では、薬物濃度測定やがんマーカーの探索など、診断や治療に不可欠な技術として活用されています。


参考)https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info:ndljp/pid/1249428&contentNo=7


質量分析装置は、主に4つの部分から構成されています。



  • 試料導入部:分析したいサンプルを装置に取り込む
  • イオン源(イオン化室):試料をイオン化する
  • 質量分離部(分析管部):イオンを質量電荷比で分離する
  • 検出部:分離されたイオンを検出する


測定の流れは以下の通りです。



1. 試料の性質に合った分画処理を試料導入部で行う
2. 得られた目的の化合物を何らかの方法でイオン化する
3. 生成したイオンを静電力によって装置内を飛行させ、電気的・磁気的な作用等により質量電荷比に応じてイオンを分離する
4. それぞれを検出することで、質量電荷比を横軸、イオンのシグナル強度を縦軸とするマススペクトルを得る


マススペクトルは化合物固有のピークパターンを示し、それによって既知物質の同定や未知物質の構造決定が可能となります。



質量分析 原理 イオン化法 医療現場で使われる手法

主なイオン化法を以下に示します。


参考)https://www.rcnp.osaka-u.ac.jp/~music/muana18/slides/1301_Toyoda2.pdf


  • 電子イオン化法(EI: Electron ionization):電子衝撃でイオン化。GC-MSで一般的
  • 化学イオン化法(CI: Chemical ionization):試薬イオンと反応させてイオン化
  • エレクトロスプレーイオン化法(ESI: Electrospray ionization):高電圧で液滴をイオン化。LC-MSで標準的
  • マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI: Matrix-assisted laser desorption ionization):レーザー照射でイオン化。タンパク質分析に有用
  • 大気圧化学イオン化法(APCI: Atmospheric pressure chemical ionization):大気圧下で化学イオン化
  • 大気圧イオン化法(API: Atmospheric pressure ionization):大気圧下でのイオン化全般


島津製作所 質量分析MSの原理と応用(イオン化法の種類と特徴について詳しく解説)


質量分析 原理 質量分離部 4つの方式と特徴

質量分離部は、イオンを質量電荷比(m/z)に基づいて分離する重要な部分です。 分離方式にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる特徴と用途があります。


参考)2418医療系学生のための医用質量分析学テキスト


主な質量分離方式を以下に示します。


  • 磁場型(磁場偏向型):磁場中でイオンを偏向させて分離。高分解能だが大型
  • 四重極型:4本の電極に電圧をかけて特定のm/zのイオンだけを通す。コンパクトで安価
  • イオントラップ型:イオンを電場中に捕捉・保持し、順次放出して検出。高感度
  • 飛行時間型(TOF: Time-of-flight):イオンの飛行時間の違いで分離。高速・高分解能
  • フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型(FTICR):超高分解能が可能だが高価
  • オービトラップ:高分解能・高精度な質量測定が可能


島津製作所 質量分離部の原理(各方式の仕組みと用途について詳しく解説)


質量分析 原理 医療現場 応用例 TDM がんマーカー 創薬

1. 治療薬物モニタリング(TDM)


2. がんマーカーの探索と診断


日本人の死因の第一位はがんであり、3人に1人はがんで亡くなっています。 がんの治療法も進歩して治る病気になりつつありますが、完治には早期発見が大切です。質量分析を用いたメタボロミクス解析により、大腸がん診断に利用できる8種類のマルチバイオマーカー(ピルビン酸、グリコール酸、トリプトファン、パルミトレイン酸、フマル酸、オルニチン、リシン、3-ヒドロキシイソ吉草酸)が発見されました。 これら8種類の代謝物データに基づいた感度、特異度とも96%を超える大腸がん診断予測式が作成されています。


参考)質量分析計を用いたメタボローム解析による大腸がんの早期スクリ…


また、プロテインチップと質量分析装置を組み合わせたSELDI-TOF-MSで得られた質量データを、機械学習アルゴリズムを用いて解析することにより、血漿・血清中に含まれる蛋白質・ペプチドの数値データからも早期がんが高い判別率で診断できるという報告がなされています。


参考)難治がんの早期診断マーカーの探索 (検査と技術 33巻2号)…


3. 創薬研究における代謝物同定


質量分析 原理 意外な歴史 J.J.トムソン 電子発見実験

質量分析の起源は、意外なことにJ.J.トムソンによる電子の発見実験に遡ります。 1897年、トムソンは陰極線の実験において、電荷を持つ粒子が磁場中を運動するとローレンツ力を受けて円運動を始めることを発見しました。 この円運動の半径は mv/qB となります(m は粒子の質量、q は電荷、v は初速度、B は磁束密度)。 粒子の初速度の情報が得られれば、m/q という量(比電荷と呼ぶ)を測定することができる。これが質量分析法の基本原理です。


参考)https://www1.meijo-u.ac.jp/~tnagata/education/ochem2/2021/ochem2_15.pdf


トムソンの実験は、電子の発見という画期的な成果をもたらし、1906年にノーベル物理学賞を受賞しました。 この実験で用いられた原理が、現代の質量分析装置の基礎となっています。



また、質量分析という用語は、日本質量分析学会では国際的に通じる読み方である「エムエス(MS)」を推奨しています。 日本語では「マス」と読むことも多いですが、学会としては「エムエス」が正式な読み方とされています。


参考)質量分析法とは何? わかりやすく解説 Weblio辞書


Weblio 質量分析法とは(質量分析の定義と基本的な仕組みについて詳しく解説)

【Amazon.co.jp限定】【第1類医薬品】リアップX5 チャージ 62mL