子宮内膜症の症状チェックと生理痛・検査・診断・治療

子宮内膜症で疑うべき生理痛、骨盤痛、性交痛、排便痛、不妊の特徴をチェックし、問診から画像検査、腹腔鏡までの診断の考え方を整理します。受診につながるサインを見落としていませんか?

子宮内膜症の症状チェック

子宮内膜症の症状チェック:受診判断の要点
🩺
月経痛の変化を確認

鎮痛薬が効きにくい、月経のたびに痛みが増す、学校や仕事を休むほど痛い場合は、続発性月経困難症を考えます。

📅
月経以外の症状も問診

慢性骨盤痛、性交痛、排便痛、排尿時痛は、病変部位や深部子宮内膜症を考える手がかりになります。

🔍
セルフチェックは診断ではない

症状の有無だけで確定はできません。問診、診察、超音波、MRIを組み合わせ、必要時に腹腔鏡を検討します。


子宮内膜症の症状チェック:生理痛と慢性骨盤痛



子宮内膜症は、本来は子宮内腔に存在する子宮内膜に類似した組織が、卵巣、腹膜、ダグラス窩、仙骨子宮靱帯などの子宮外で増殖する疾患です。病変は月経周期に反応し、出血、炎症、癒着、線維化を反復することで、疼痛や妊孕性低下に関与します。


症状チェックでは、単に「生理痛があるか」ではなく、痛みの経過と生活機能への影響を確認することが重要です。特に、以前は耐えられた月経痛が年齢とともに強くなる、鎮痛薬の追加服用が必要になる、月経前から痛みが始まり月経終了後も残る、といった変化は見逃せません。日本産婦人科医会の資料では、子宮内膜症患者のおよそ9割に月経時疼痛がみられ、続発性で増悪傾向を示すことが特徴とされています。


参考)(3)診断 – 日本産婦人科医会


  • 月経痛が年々強くなり、日常生活、就労、就学に支障がある
  • 市販鎮痛薬または処方鎮痛薬が効きにくくなった
  • 月経開始の数日前から下腹部痛、腰痛、骨盤痛がある
  • 月経が終わっても痛みが持続し、月経周期以外にも骨盤痛がある
  • 痛みによる睡眠障害、食欲低下、欠勤・欠席が繰り返される


ただし、月経痛が強いことだけで子宮内膜症とは診断できません。原発性月経困難症、子宮腺筋症、子宮筋腫、骨盤内炎症性疾患、消化器・泌尿器疾患などとの鑑別が必要です。一方で、「痛みは体質」として長期間受診を控えることは診断遅延につながり得ます。症状出現から診断までに数年を要することがある点も、診療上の重要な課題です。


参考)子宮内膜症 - 18. 婦人科および産科 - MSDマニュア…


月経痛は患者が言語化しにくい症状です。「痛みの程度を0~10で表すとどうか」「鎮痛薬を何錠、いつ服用するか」「月経以外の日にも痛むか」「痛みによりできなくなった活動はあるか」と具体化すると、症状の重症度と変化を把握しやすくなります。


子宮内膜症の症状チェック:性交痛・排便痛・排尿症状

子宮内膜症の典型的な症状として、月経困難症、深部性交痛、不妊が挙げられます。さらに、病変の存在部位や癒着の程度により、排便痛、便秘・下痢、腹部膨満、排尿時痛、頻尿、血尿などが出現することがあります。



性交痛では、挿入時の表在痛とは区別して、性交時に骨盤の奥が痛む「深部性交痛」を確認します。ダグラス窩、直腸腟中隔、仙骨子宮靱帯周辺の深部病変では、性交時の深部痛や圧痛が問診・内診の重要な手がかりとなります。痛みの有無を一律に尋ねるだけでなく、月経周期との関連、疼痛の部位、持続時間、性交の回避につながっているかを含めて把握します。


症状 確認したい特徴 考慮する病変・対応
排便痛 月経中に肛門の奥、直腸周囲が痛む 直腸周囲、ダグラス窩、深部病変を考慮
便秘・下痢・腹部膨満 月経に合わせて増悪するか 腸管症状の鑑別と婦人科・消化器科連携
排尿時痛・頻尿 月経中の増悪、血尿の有無 膀胱・尿管病変、尿路疾患の鑑別
深部性交痛 骨盤深部の痛み、月経痛との併存 仙骨子宮靱帯、直腸腟中隔などを評価


月経中の血便、血尿、強い腹痛、排便・排尿が困難な状態は、自己判断で経過をみるべきではありません。腸管・膀胱への病変だけでなく、炎症性腸疾患、尿路結石、感染症、悪性疾患なども含めた評価が必要になるため、早急な受診につなげます。卵巣子宮内膜症性嚢胞が破裂・漏出した場合には急性腹痛を来すことがあり、急激で強い腹痛や冷汗、ふらつき、嘔吐を伴う場合は緊急性を判断します。



症状と月経の関係を記録することは、問診精度を高める実用的な方法です。月経開始日、痛みの部位、痛みの強さ、鎮痛薬の服用量、排便・排尿症状、性交痛、不正出血を2~3周期記録すると、周期性と増悪パターンを診療時に共有しやすくなります。


子宮内膜症の症状チェック:不妊と卵巣チョコレート嚢胞

妊娠を希望しているにもかかわらず妊娠に至らない場合、子宮内膜症は評価すべき背景疾患の一つです。骨盤内の癒着による卵管・卵巣周囲の解剖学的変化、炎症環境、卵子の取り込みや受精・輸送への影響など、複数の機序が妊孕性低下に関与すると考えられています。



日本産婦人科医会は、不妊症患者の約半数に子宮内膜症が合併すること、また原因不明不妊症の患者にも子宮内膜症が存在し得ることを示しており、不妊の訴えは重要な問診事項です。 ただし、不妊と診断された人すべてに子宮内膜症があるわけではなく、男性因子、排卵因子、卵管因子、加齢などを含めた体系的な評価が必要です。



卵巣に病変が形成されると、古い血液を含む卵巣子宮内膜症性嚢胞、いわゆるチョコレート嚢胞として検出されることがあります。嚢胞が大きくても無症状の場合がある一方、骨盤痛、不妊、急性腹症の契機となることもあります。経腟超音波検査は卵巣チョコレート嚢胞の評価に重要であり、MRIは血液成分の特徴を捉え、付属器腫瘍との鑑別や深部病変の評価に役立ちます。



妊娠希望がある場合、治療選択は疼痛の程度、年齢、卵巣予備能、嚢胞の大きさと性状、卵管因子、男性因子、生殖補助医療の予定などを統合して個別に検討します。嚢胞摘出術は病変への対応として行われる場合がありますが、卵巣機能を低下させる可能性にも留意が必要です。したがって、「嚢胞があるから直ちに手術」ではなく、妊孕性温存を含めた利益と不利益の説明が不可欠です。



不妊診療中の患者で、強い月経痛、慢性骨盤痛、性交痛、卵巣嚢胞、既往手術歴がある場合は、症状が少なくても子宮内膜症の可能性を念頭に置きます。疼痛コントロールと妊娠を目指す時期は、同じ患者でも一致しないことがあるため、ライフプランを定期的に確認します。


子宮内膜症の症状チェック:痛みの強さと病期は一致しない

子宮内膜症で意外に重要なのは、疼痛の強さが病変の広がりや進行期と必ずしも一致しない点です。広範な病変があっても症状が乏しい患者がいる一方、病変が小さくても日常生活を大きく損なう疼痛を呈する患者がいます。病期だけを根拠に痛みを軽視したり、痛みが強いから必ず重症と判断したりすることは適切ではありません。



子宮内膜症の進行期分類にはr-ASRM分類が用いられ、病変の大きさ・深さ、癒着、卵巣子宮内膜症性嚢胞などを点数化してI期からIV期に分類します。しかし、この分類は主に手術時の所見に基づくものであり、疼痛や妊娠予後を単独で十分に説明するものではありません。



このため症状チェックでは、画像所見の有無と同じくらい、患者が何に困っているのかを具体的に評価します。例えば「月経痛がある」という表現でも、鎮痛薬で仕事を継続できる痛みと、月の数日間を寝たきりで過ごす痛みでは臨床的な意味が異なります。疼痛スコアだけでなく、欠勤・欠席、睡眠、食事、運動、性交、気分、妊娠希望への影響を確認します。


また、若年者では初経直後から月経困難症が存在しても、「いつもの痛み」と認識され、訴えが乏しいことがあります。さらに、反復する痛みに慣れることで、病態が進行していても自覚的な痛みが軽く感じられる場合があると指摘されています。 痛みの訴えが少ないことを、病変がない、あるいは問題が小さいことと短絡しない姿勢が重要です。


参考)子宮内膜症 (しきゅうないまくしょう)とは


早期診断では、症状の有無だけでなく、家族歴、月経歴、初経後からの疼痛、鎮痛薬への反応、月経に同期する消化器・泌尿器症状、不妊の有無を組み合わせてリスクを評価します。患者が「我慢できる」と表現していても、痛みの頻度や生活への影響を丁寧に掘り下げることが、見逃しを減らします。


早期診断における問診、若年者の月経困難症、経腟超音波の動的評価について解説されています。


子宮内膜症の早期診断|持田製薬 医療関係者向け情報


子宮内膜症の症状チェック:検査・診断と受診の目安

子宮内膜症の診断は、セルフチェックや血液検査だけでは完結しません。まず、月経歴、疼痛の部位と周期性、妊娠希望、不妊歴、既往歴、家族歴を含む問診を行い、必要に応じて内診、直腸診、経腟超音波検査、MRIを組み合わせます。卵巣チョコレート嚢胞や深部子宮内膜症は、診察・画像所見から臨床的に診断できる場合があります。



CA125、CA19-9は子宮内膜症で上昇することがありますが、感度・特異度は十分ではなく、これらの数値のみで診断することはできません。特にCA125が正常だからといって、子宮内膜症を除外できるわけではありません。血液検査は診断の決め手ではなく、臨床像や画像所見と合わせて位置づけます。



確定診断は、腹腔鏡または開腹手術で病変を直接観察し、必要に応じて病理組織で子宮内膜に類似した腺構造と間質を確認することで行われます。ただし、すべての患者に診断目的の腹腔鏡が必要なわけではありません。現在は症状、診察、画像所見をもとに臨床的子宮内膜症として治療を開始する場面もあります。



  • 月経痛が悪化している、鎮痛薬が効きにくい場合は婦人科受診を検討する
  • 月経以外の骨盤痛、性交痛、排便痛、排尿時痛がある場合は早めに相談する
  • 妊娠希望があり、妊娠に至らない場合は不妊評価とともに内膜症の可能性を確認する
  • 急激な強い腹痛、失神感、発熱、大量出血、血便・血尿がある場合は緊急性を評価する
  • 症状日誌と服薬状況を持参し、月経周期との関連を共有する


治療は、疼痛の程度、病変部位、年齢、妊娠希望、卵巣機能、既治療歴を踏まえて決定します。鎮痛薬、LEP・プロゲスチンを含むホルモン療法、GnRH関連薬、手術などが選択肢となります。目的は一律ではなく、疼痛の軽減、病変進展の抑制、妊孕性の維持、生活の質の改善を患者ごとに整理することです。



診断方法、画像検査、腹腔鏡による確定診断、腫瘍マーカーの限界について確認できます。


子宮内膜症の診断|日本産婦人科医会




【第3類医薬品】キューピーコーワゴールドαプレミアム 280錠