あなたのその食事指導、実は逆効果です。

セロクエル(クエチアピン)はMARTAと呼ばれる非定型抗精神病薬に分類されます。この系統の薬剤は、ヒスタミンH1受容体やセロトニン5-HT2C受容体への作用によって食欲を強く亢進させることが知られています。
参考)クエチアピン(セロクエル)の効果と副作用 - 田町三田こころ…
しかし体重増加の原因はそれだけではありません。実は摂取カロリー増加による「食べて太る」経路に加え、基礎代謝そのものを抑制する経路が存在します。つまり食事量を変えていない患者でも体重が増えることがあるということです。
参考)https://blog.goo.ne.jp/kzakachan/e/49e992b2711f7226a38e2a3edcd6f6b1
代謝抑制の程度は薬剤ごとに差があり、セロクエルはこの作用が比較的強いタイプに位置づけられています。食事指導だけでコントロールしようとすると、患者の努力が結果に反映されず、モチベーション低下を招くリスクがあります。
代謝への影響を理解した上での指導が基本です。
セロクエルの体重増加は添付文書やくすりのしおりにも明記されている代表的な副作用です。実際の症例報告では、就寝前12.5mgという少量でも1カ月で1.5kg増加したケースが確認されています。
参考)https://spkaramedy.mopita.com/Question/406720
高用量帯ではさらに影響が大きくなる傾向があり、300mg程度まで増量した患者で強い食欲亢進を自覚する例も報告されています。用量と体重変化の関係を把握しておくと、増量時の説明がスムーズになります。
参考)セロクエルによる体重増加 - うつ、躁うつの症状 - 日本最…
用量に応じたリスク説明が原則です。
体重増加は錠剤・細粒どちらの剤形でも起こり得るため、剤形変更だけでは根本的な解決にならない点も押さえておきたいポイントです。
参考)https://www.ltl-pharma.com/common/pdf/product/seroquel/seroquel_guide.pdf
体重増加以上に注意すべきなのが血糖値への影響です。厚生労働省とPMDAは過去にセロクエル投与中の高血糖に関する緊急安全性情報を発出しており、糖尿病性ケトアシドーシスや糖尿病性昏睡が計13例、うち死亡例が1例報告されたことが明らかになっています。
参考)抗精神病薬 セロクエル錠(フマル酸クエチアピン)投与中の血糖…
この経緯を受けて、現在では糖尿病またはその既往歴がある患者への投与は禁忌とされています。「体重が増えるだけ」という認識で経過観察していると、重大な代謝異常を見逃す危険があります。
口渇・多飲・多尿は要注意サインです。
これらの症状が出た場合は速やかに服用を中止し、血糖値測定を行う体制を整えておくことが求められます。院内での注意喚起資材やチェックリストを活用すると、見落とし防止に役立ちます。
セロクエル投与中の血糖値異常に関するPMDAの緊急安全性情報(禁忌・症例数の詳細)はこちら
体重管理の基本は食事と運動ですが、代謝抑制を踏まえた指導が必要になります。糖質過多を避けつつ、たんぱく質中心の食事に切り替えることで食欲亢進の影響を緩和しやすくなります。
運動については、激しい運動でなくても構いません。1日20分程度の早歩きでも、代謝維持に一定の効果が期待できます。
無理のない継続が条件です。
自己判断での減量・中断は禁物で、鬱転や症状悪化のリスクがあるため必ず主治医と相談しながら調整する必要があります。体重の変化を記録するアプリやノートを活用すると、診察時の情報共有がスムーズになります。
体重や血糖値を定期的に測定していれば安心、と考えている医療従事者は少なくありません。しかしセロクエルには強い鎮静作用があり、夜間の眠気によって深夜の過食(ナイトイーティング)が起きても、患者自身が自覚していないケースがあります。
参考)セロクエル(クエチアピン) – 心のクリニック武…
この場合、日中の食事記録だけを確認していると実際の摂取カロリーを過小評価してしまう恐れがあります。数値だけを追うモニタリングには限界があるということです。
記録の裏側まで確認する視点が有効です。
家族からの聞き取りや、就寝前の行動記録を組み合わせることで、より実態に近い評価が可能になります。単一の指標に頼らない多角的な観察が、体重管理の精度を高めるポイントになります。
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