
成長曲線への男の子データ入力において、最初に押さえるべきは基本データ項目の正確性です。医療機関で入力が必要な項目は、性別(男の子/女の子)、生年月日、計測日、身長(cm)、体重(kg)の5項目が基本となります。
参考)低身長チェック-情報入力|子どもの低身長と成長障害について考…
特に重要なのが身長測定の精度管理です。乳幼児期は臥位長(寝た状態での長さ)、3歳以降は立位高(立った状態での高さ)で測定します。測定器の目盛り読み取り誤差0.5cmが、年齢によってはSD値0.2〜0.3の誤差を生むことが知られています。
参考)https://www.jpnsport.go.jp/anzen/Portals/0/anzen/kenko/siryou/kankou/himan/seito/pdf/himan01.pdf
入力時の注意点として、以下のポイントがあります。
近年、医療機関では電子カルテシステムと成長曲線データの連携が標準化されています。株式会社EMシステムズの「MAPs for CLINIC」など、小児科向け電子カルテでは身長・体重・BMIの入力と同時に成長曲線を自動表示する機能が実装されています。
参考)小児用量/小児成長曲線の表示|MAPs for CLINIC
電子カルテ連携のメリットは以下の通りです。
しかし、システム導入には注意点もあります。日本小児内分泌学会が提供する成長評価用チャート(PDF・Excel形式)は、診療・学術用として個人あるいは施設内で自由に使用可能ですが、出版物への転載や商用利用には学会事務局への連絡が必要です。また、電子カルテベンダーによっては、学会公表のLMS法パラメータを正しく実装していないケースがあり、SD値計算にズレが生じる可能性があります。
日本小児内分泌学会 成長評価用チャート・体格指数計算ファイル ダウンロードサイト
入力されたデータから算出されたSD値(標準偏差)の臨床的解釈は、医療従事者が押さえるべき核心部分です。成長曲線の「平均」曲線の上下にある「SD」というのは、標準偏差を意味し、身長の伸び方には個人差が多いため平均値からどのくらいまでが標準でどのくらい離れていると異常なのかという「幅」を示します。
参考)成長曲線にプロットする
SD値と偏差値の対応関係は以下の通りです。
一般的な目安として、お子様の身長が+2SDと-2SDの線の間、すなわち偏差値にすると30から70の間にあるなら標準の身長です。±2SDの間にあり、線にそって推移しているなら標準の身長と判断します。
-2SD未満は低身長と考えられますので専門医に相談されることをお勧めします。同年齢の子どもが1000人いたとすると約22人が-2SD以下になります。しかし、今の身長が標準範囲内でも成長曲線が標準曲線をまたいで低下したり、上昇したりする場合は診察が必要です。この「曲線またぎ」現象は、内分泌疾患や慢性疾患の早期サインである可能性があります。
フォローアップの頻度は以下の基準を参考にしてください。
ここからは、あまり知られていない意外な視点として、入力ミスによる誤診断の実態とその対策について解説します。医療現場で最も多い入力ミスは、生年月日と計測日からの暦年齢計算の誤りです。特に、早生まれ(1月〜3月生まれ)の児を評価する際、学年ベースの年齢(何歳)で計算してしまうと、実年齢より最大1歳近く過大評価され、SD値が実際より低く算出されるリスクがあります。
参考)https://www.niph.go.jp/soshiki/07shougai/hatsuiku/index.files/katsuyou_2020_10R.pdf
次に多いのが、単位入力エラーです。身長120cmを1.20cmと入力してしまう、体重20kgを20000gと入力してしまうなどのミスが、システムによっては検出されずに極端なSD値を算出するケースが報告されています。
参考)https://www.shiinoki-cl.jp/ill.htm
また、意外に見落とされがちなのが、測定法の移行期における誤りです。3歳前後で臥位長(寝た状態)から立位高(立った状態)に測定法が移行しますが、この時期に両者の測定値を混在させて入力すると、0.5〜0.7cm程度の系統誤差が生じます。これは、臥位長が立位高よりわずかに長くなる傾向があるためです。
入力ミスを防ぐための具体的な対策は以下の通りです。
ノボノルディスクファーマ 成長曲線セルフチェックツール(監修:国立成育医療研究センター)
最後に、医療従事者が成長曲線データを保護者と共有する際のポイントについて解説します。近年は、スマートフォンアプリ「すくすく成長曲線」など、保護者自身が自宅で入力・確認できるツールが普及しています。
保護者への説明で重要な点は以下の通りです。
これらのツールは、医療機関での測定値と自宅での測定値を比較検討する際にも有用です。ただし、セルフチェックツールは疾患の診断に代わるものではないため、チェックの結果、問題や異常がなくても、不安や気になることがあれば必ず医療機関を受診してくださいと伝える必要があります。