
「再利用」「再使用」の違いを整理する際、まず一般的な国語辞典や環境関連用語での定義を押さえておくと、医療分野での用語選択のブレを抑えやすくなります。
参考)「再利用」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書
国語辞典では「再利用」は一度使用したものを別の機会に再び利用すること、用途を問わず再び用いることと説明されており、同じ用途に限らず「別の目的で活かす」ニュアンスも含み得るとされています。
参考)https://chigai.jp/reuse-and-reuse-difference/
一方で「再使用」は「再び使う」という意味が基本であり、循環型社会形成推進基本法では「循環資源を製品としてそのまま使用する」「部品として使用する」と定義され、形状を大きく変えずに繰り返し使うことを強調しています。
参考)https://www.iis-net.or.jp/files/wing21/002/200502163.pdf
このため環境分野では、再使用(リユース)は「ほぼ同じ用途・同じ形のまま繰り返し使う」、再利用(しばしばリサイクル寄りの文脈)は「素材として別用途に回す」といった、機能面の違いで整理されるケースが多いのが特徴です。
再利用と再使用の違いは、医療従事者であっても日常生活の例からイメージした方が直感的に理解しやすく、スタッフ教育の際にも有用です。
例えばガラス瓶やビール瓶を洗浄して再び飲料を入れるのは「再使用(リユース)」であり、同じ形・同じ機能を保ったまま繰り返し使う行為にあたります。
一方で、ペットボトルを粉砕して繊維や別製品に加工するのは「再利用(再生利用・リサイクル)」の典型例であり、一度素材レベルに戻したうえで新しい製品に作り替える点がポイントになります。
参考)「再使用」と「再生利用」の違いとは?分かりやすく解釈
国語・英語双方の用例でも「reuse(再使用)」はものをそのまままたは同様の形で使う、「recycle(再利用・再生利用)」は形状を変えて原材料として再活用するものとして区別されており、この対比は医療器材の教育資料にも流用しやすい整理の仕方です。
参考)https://www.dictionary.com/browse/reuse
医療分野において「再使用」と言った場合、多くは再滅菌や消毒を行ったうえで同一用途に再度用いることを意味し、国内外の感染対策ガイドラインでも「reuse of devices」の文脈で繰り返し使用のリスクと管理が論じられています。
参考)https://isid.org/wp-content/uploads/2019/06/ISID_GUIDE_DISPOSABLE_DEVICES.pdf
例えば、ディスポーザブルではない手術器具やカテーテル類は、洗浄後に滅菌や高水準消毒を行ったうえで再使用されますが、この再生処理が不適切な場合、微生物が残存して感染リスクが高まることが詳細に指摘されています。
参考)Y's Square:病院感染、院内感染対策学術情報 | 医…
単回使用器材(Single-Use Device; SUD)については、製造販売業者が「1回の使用の後廃棄する」ことを意図して設計しており、構造が複雑で完全な洗浄が困難、あるいは素材が再生処理に耐えないことから、院内での再使用は原則として認められないとする通知も出されています。
参考)https://www.thcu.ac.jp/uploads/imgs/20150525105248.pdf
一方で、使用済みのSUDを収集・分解・洗浄・再滅菌し、新たな「再製造単回使用医療機器」として販売する仕組みが法制度上整備されており、この場合は医療機関による院内再使用とは別枠として、事業者向けガイドラインに基づく厳格な品質管理が求められています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc6376&dataType=1&pageNo=1dataType=1href="https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc6376&dataType=1&pageNo=1">https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc6376&dataType=1&pageNo=1pageNo=1" target="_blank" rel="noopener">・再製造単回使用医療機器に係る事業者向けガイドライン及び質疑…
再利用と再使用の違いを医療安全の観点から見ると、「誰が」「どこで」「どの程度の処理を施して」再度用いるのかが、患者と医療従事者双方のリスクを左右する重要な要素になります。
参考)単回使用医療機器、医療安全確保のため「院内で洗浄・滅菌しての…
ディスポーザブル製品の再使用は、感染、発熱反応、毒性、破損、カテーテルの生体適合性低下などのリスクを増大させることが報告されており、再滅菌過程で機器が損傷することで誤作動や破断を招く可能性が指摘されています。
また、再使用のための洗浄・滅菌工程そのものが、医療従事者の体液・消毒薬への曝露リスクを高める点も懸念されており、再使用を行う医療機関には明確な院内方針と手順書が求められます。
国内の通知では、ペースメーカーや人工弁など埋め込み型医療材料について、性能・安全性を十分に保証できない場合は「再使用してはならない」と明記されており、特段の合理的理由がない限り単回使用医療機器を再使用しないことが強く求められています。
参考)https://www.kana-kango.or.jp/uploads/media/2021/03/20210325154325.11c.pdf
再利用と再使用の違いを医療チーム全体で共有するには、用語の定義を単に暗記させるのではなく、現場の具体例と紐づけて「何をどこまでしていいのか」をストーリーとして伝えることが効果的です。
例えば、滅菌可能な手術器具の再使用は「院内再使用」として洗浄・滅菌プロセスを標準化し、単回使用医療機器の再製造は「事業者による再製造・再利用」として別枠で説明することで、現場スタッフに「この器材は院内で再使用してよいのか、それとも再利用(再製造)として外部事業者の領域なのか」を瞬時に判断しやすくできます。
参考)https://www.pref.miyazaki.lg.jp/documents/63921/63921_20210913134413-1.pdf
意外なポイントとして、国語的な「利用/使用」の違いも、スタッフ教育では有用です。「使用・再使用」はものをそのまま使うニュアンスが強く、「利用・再利用」は本来の目的以上・以外の用途に用いるニュアンスがあるとするネイティブの解説があり、医療安全の文書では「再使用(リユース)」と「再生利用(リサイクル)」を意図的に使い分けることで、現場の誤解を減らせます。
参考)https://ja.hinative.com/questions/16102288
再利用と再使用の違いを理解したうえで、医療機関として独自に工夫できるポイントの一つが、「再使用の安全ライン」と「再利用の創意工夫ライン」を意識的に分けることです。
再使用については、Spauldingの分類に基づき、クリティカル器具・セミクリティカル器具・ノンクリティカル器具ごとに洗浄・滅菌・消毒レベルを定義し、ウォッシャーディスインフェクターの導入や用手洗浄の標準化など、「安全性を担保したうえでどこまで再使用するか」を院内ルールとして明文化します。
一方で、再利用の観点では、廃棄物を単に廃棄するのではなく、素材として院内の別用途に活かす工夫が可能です。例えば、滅菌済みの紙・プラスチックトレイを教育用の模型作成やシミュレーション訓練の道具に用いることは、患者ケアに直接使用しない範囲での「再利用」として、資源循環と教育効果を両立させる取り組みになり得ます(この種の工夫は多くのガイドラインでは明文化されていないものの、環境負荷低減と職員教育の両面で注目されつつあります)。
さらに、再製造単回使用医療機器の制度を上手く活用し、外部業者による再製造・再利用と院内での再使用を適切に切り分けることで、環境負荷と医療費の双方を抑えつつ患者安全を確保するという、バランスの取れた資源管理が可能になります。
参考)https://www.pmda.go.jp/files/000230053.pdf
このように、再利用と再使用の違いを単なる用語の問題としてではなく、医療安全・環境負荷・コスト管理をつなぐキーワードとして捉え直すことで、現場での具体的な改善・工夫のアイデアが生まれやすくなります。
医療機器・器具の再使用に関する再生処理のポイントやSpauldingの分類に基づく消毒・滅菌レベルの整理には、以下の資料が参考になります。
医療器具における再生処理のポイント(Y's Letter Vol.2 No.23)
単回使用医療機器の再使用・再製造に関する国内の制度・通知の詳細は、厚生労働省や関連通知の資料が有用です。
単回使用医療機器の再使用等に関する厚生労働省通知・Q&A
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