眼外傷ガイドライン完全解説:初期対応から手術適応まで

眼外傷の診療ガイドラインに基づき、初期対応の禁忌事項、穿通性・鈍的外傷の鑑別、化学傷の洗眼プロトコル、手術適応の基準を網羅。医療従事者が救急現場で迷わない実践的アルゴリズムを解説します。

眼外傷 ガイドラインの基礎知識と核心ガイド

眼外傷救急対応の核心ポイント
穿通性外傷の絶対禁忌事項

眼球圧迫・点眼・眼圧測定は厳禁。硬質アイシールド装着で緊急眼科紹介が必須です。

化学傷の即時洗眼プロトコル

受傷現場で水道水を用い30分以上持続洗眼。pH確認まで継続し中和剤使用は禁忌です。

手術適応の判断基準

眼球破裂は光覚弁なくても24時間以内修復。硝子体手術は感染症・異物で早期実施。


眼外傷の分類と初期評価の重要ポイント


眼外傷は受傷機転および眼球壁の損傷状態により、非穿通性外傷(鈍的外傷)、穿通性外傷(鋭利なものによる刺通)、化学傷・熱傷に大別されます。この分類は初期対応の成否を決定づけるため、救急現場での迅速な鑑別が不可欠です。非穿通性外傷では眼窩骨折・前房出血・網膜剥離などの合併症に、穿通性外傷では眼内炎・増殖性硝子体網膜症などの重篤な続発合併症に注意が必要です。


参考)眼球の損傷 - 22. 外傷と中毒 - MSDマニュアル プ…
初期評価では視力測定を最優先し、受傷前の視力との比較を行います。眼鏡装用者は矯正状態での評価が望ましく、新規の視力低下の有無を正確に把握します。瞳孔所見(対光反射・瞳孔不同)、眼圧、細隙灯顕微鏡検査、眼底検査を系統的に実施し、眼球破裂の兆候(結膜下出血・低眼圧・ぶどう膜組織の露出)を見逃さないことが重要です。金属異物の可能性がある場合はMRIを避け、CTで異物および骨折の有無を確認します。



穿通性外傷の緊急対応と絶対禁忌事項

穿通性外傷が疑われる症例では、眼球内容物の脱出を防ぐため、眼球への圧迫を絶対に避けます。具体的には、眼圧測定・点眼・圧迫眼帯・異物の無理な抜去を禁忌とし、清潔なプラスチックシールドまたはプラスチックコップで眼を保護した状態で緊急眼科受診へ誘導します。嘔吐は眼圧上昇を招き眼内容物漏出のリスクとなるため、制吐薬(オンダンセトロン等)で抑制します。


全身管理として、破傷風予防の適応を確認し、必要に応じてワクチン接種を行います。抗菌薬の全身投与(セフタジジム・バンコマイシンなど)を早期に開始し、眼内炎予防を図ります。局所抗菌薬点眼は術前まで避け、手術による修復では眼球検索・異物除去・強膜および角膜の層別縫合を全身麻酔下で実施します。術後は散瞳薬・抗菌薬/抗真菌薬の局所投与を行い、眼圧を経時的にモニタリングします。


項目 基準・内容 備考
初期対応 硬質アイシールド装着、圧迫禁止、NBM Foxシールドまたはプラスチックコップ使用
画像診断 CT orbits(金属異物鑑別)、MRI禁忌 突出異物がある場合はCT優先
抗菌薬 セフタジジム2g IV q8h + バンコマイシン1g IV q12h 局所点眼は術前まで避ける
制吐薬 オンダンセトロン4-8mg IV 嘔吐による眼圧上昇防止
破傷風予防 既接種歴確認、必要時ワクチン追加 開放創は全て適応
手術タイミング 24時間以内の一次修復が理想 眼内炎リスクで早期実施


化学傷の洗眼プロトコルと重症度評価

化学物質が眼に侵入した場合は、受傷現場での即時大量洗眼が最優先です。専用洗眼液がない場合でも水道水・ペットボトルの水で構わず、眼を開けたまま少なくとも30分間、継続的に洗い流します。瞼を反転させ穹窿部の残留化学物質を確実に除去し、洗眼しながら救急受診します(洗眼完了を待たなくてよい)。酸・アルカリの別を問わず中和剤の使用は禁忌であり、中和反応による熱産生で組織損傷が増悪するリスクがあります。


参考)眼科救急疾患(Ophthalmic Emergencies …
重症度評価にはRoper-Hall分類またはDua分類を用います。Roper-Hall分類は角膜混濁・血管消失の範囲でGrade I〜IVに分類し、Dua分類は角膜・結膜の虚血範囲を詳細に評価します。洗眼後はpH試験紙で結膜囊内のpHを確認し、目標値7.0〜7.4になるまで洗浄を継続します。アルカリ傷(アンモニア・水酸化ナトリウム等)は組織浸潤が深く、酸傷(塩酸・硫酸等)より予後不良となるため、特に注意を要します。


  • 受傷現場で直ちに大量の水道水で洗眼を開始(専用液不要、水道水で可)
  • 眼を開けたまま洗う(可能であれば瞼を反転させ穹窿部を洗浄)
  • 最低30分間の持続洗浄を行い、pH 7.0〜7.4を確認
  • 洗眼しながら救急受診(完了を待たず、救急車内でも継続可)
  • 化学物質の特定(製品名・成分)を受診時に伝える
  • 中和剤使用は厳禁(熱産生で損傷増悪)


鈍的外傷の合併症と手術適応の判断基準

鈍的外傷では、前房出血(hyphema)、眼窩骨折、網膜剥離、硝子体出血などの合併症に注意します。前房出血は細隙灯顕微鏡検査で診断し、頭部30〜45度挙上での床上安静・眼圧モニタリングを行います。再出血予防のため、抗凝固薬・抗血小板薬の一時的中止を考慮します。眼窩骨折では眼球運動障害・眼球陥凹・眼球心臓反射(徐脈)を評価し、閉鎖型骨折で徐脈を合併する場合は緊急手術適応となります。



医療従事者が知っておくべき診療ガイドラインの核心

眼外傷診療ガイドラインの核心は、「穿通性外傷では圧迫禁止・硬質シールド装着・緊急眼科紹介」「化学傷では即時30分以上洗眼・中和剤禁忌」「鈍的外傷では合併症の早期発見と手術適応の迅速判断」に集約されます。これらの原則を救急現場で徹底することで、視力予後の改善・重篤合併症の予防が可能となります。AAO(米国眼科学会)Preferred Practice Patternおよび日本眼科医会の診療ガイドラインでは、 sight-threatening emergencies は全て眼科専門医への紹介を推奨しており、初期対応の質が最終予後を決定します。


参考)Ocular trauma (Guidelines)
参考資料として、MSDマニュアル プロフェッショナル版「眼球の損傷」では、眼球裂傷が疑われる場合の保護具装着・抗菌薬全身投与・CT施行・MRI回避・制吐薬使用・破傷風予防・手術修復の手順が詳述されています。また、EyeWikiのBlunt Ocular Traumaでは、急性期の保護アイシールド装着・頭部挙上・活動制限・抗凝固薬中止の推奨が示されています。これらのガイドラインを日常的に参照し、診療アルゴリズムの更新を行うことが、医療の質向上に寄与します。





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