
猫の巨大結腸症(メガコロン)の治療は、まず内科的治療から開始されます。治療の目的は「溜まった便を除去する」「脱水を改善する」「腸の動きを助ける」「再発を防ぐ」の4点に集約されます。
参考)巨大結腸症 <猫>
内科的治療の5つの柱は以下の通りです。
参考)【大田区・大森の動物病院】猫の便秘・巨大結腸症を獣医師が徹底…
参考)巨大結腸症
これらの治療を組み合わせ、便の性状が「柔らかく成形された状態」を維持できるよう用量を調整します。水様性下痢が出た場合は脱水リスクがあるため用量を減らす必要があります。
参考)Cat Constipation, Obstipation,…
巨大結腸症の薬物療法で最も頻用される2つの薬剤、ラクツロースとシサプリドについて、用量と注意点を詳しく解説します。
■ ラクツロース(Lactulose)
参考)Megacolon in Cats - Digestive …
参考)ラクツロース(Lactulose)の用量・適応・副作用
参考)Lactulose for Cats: Overview, …
■ シサプリド(Cisapride)
参考)https://cdn.ymaws.com/www.aavpt.org/resource/resmgr/imported/cisapride.pdf
これらの薬剤は単独ではなく、併用することで相乗効果が期待できます。ただし、効果には個体差が大きく、用量調整には2-4週間を要することが多いです。
内科的治療を2-4週間継続しても改善が見られない場合、または再発を繰り返す場合は外科的治療(結腸切除術)の適応となります。
■ 手術の適応基準
■ 手術内容:亜全結腸切除術(Subtotal Colectomy)
開腹し、拡張して機能不全となった結腸の大部分を切除し、小腸(回腸)と直腸を吻合(結腸直腸吻合)または小腸同士を吻合(回腸結腸吻合)します。
手術時間は2-3時間を要し、全身麻酔下で実施されます。術後は入院管理(通常5-7日)が必要で、術後合併症(縫合不全、腹膜炎、感染)のリスクがあります。
参考)[文献・猫・消化器]猫の巨大結腸症の治療として結腸亜全摘術は…
■ 意外な事実:手術の予後は比較的良好
2021年のJAVMA誌に掲載された研究(151頭の猫を対象)によると、結腸亜全摘術後の周術期合併症発生率は9.9%、巨大結腸症またはその合併症が直接の原因で死亡した猫は14%でした。生存期間の中央値には達せず、長期的な予後は良好で飼い主の満足度も高いという結果でした。
ただし、約10%の猫では術後も便失禁や慢性軟便の後遺症が残る可能性があります。術後数週間は軟便が正常経過ですが、時間の経過とともに成形便に落ち着く症例も少なくありません。
ここであまり知られていない重要なポイントを解説します。交通事故などによる骨盤骨折が原因で巨大結腸症を発症した場合、骨折後6ヶ月以内に骨盤狭窄の解除(整復術または骨盤拡張術)を実施すれば、症状が消失し手術が不要になるという報告があります。
これは、骨盤狭窄が原因の巨大結腸症では、結腸自体の機能はまだ保たれており、物理的な閉塞が解除されれば自然排便が回復するためです。一方、特発性巨大結腸症では結腸平滑筋の機能障害が進行しているため、このアプローチは有効ではありません。
臨床的インプリケーション
このように、巨大結腸症の原因を正確に鑑別し、適切なタイミングで介入することが、手術回避や予後改善に繋がります。
参考)https://www.vin.com/apputil/content/defaultadv1.aspx?id=5709893&pid=11372
手術後も、再発予防とQOL維持のための生活管理が重要です。以下のポイントを飼い主さんに指導しましょう。
■ 術後管理のポイント
■ 再発予防のための薬剤継続
術後もラクツロースやシサプリドを低用量で継続する症例もあります。特に高齢猫や慢性腎臓病を併発している猫では、脱水リスクが高いため注意が必要です。
■ 参考リンク
以下のリンクは、より詳細な情報を得るために有用です。