
男性の更年期障害(LOH症候群)は、テストステロン低下に起因する身体症状・精神症状・性機能症状の三つ巴で捉えると臨床上理解しやすくなります。ほてり、動悸、発汗、めまい、のぼせ、全身倦怠感、筋力低下、関節痛・骨痛、睡眠障害などの身体症状は女性の更年期障害と類似しており、「なんとなく不調」「疲れやすい」といった訴えとして一次医療に来院するケースが少なくありません。
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精神症状としては、抑うつ気分、意欲低下、不安感、いらいら、神経過敏、集中力低下、行動力の減退などがあり、いわゆる「うつ病」「適応障害」「バーンアウト」として扱われている症例の一部に男性更年期障害が潜在していることが指摘されています。性機能症状では、性欲低下、勃起不全(ED)、早朝勃起の減少が代表的で、日本人男性では60歳代でED症状を自覚する者が6割以上との報告もあり、患者本人は「年齢のせい」と諦めて医療機関を受診しないことも多い点に注意が必要です。
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こうした症状は単独ではありふれており、生活習慣病やうつ病といった他疾患と鑑別しにくいことから、「症状の多彩さ」と「訴えの曖昧さ」が診断の遅れを招いている要因といえます。日常診療では、40代後半以降の男性で、複数の軽度症状が持続し、「以前の自分と違う」という自己評価を伴う場合には、男性更年期障害の可能性を系統的に評価することが有用です。
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参考)男性更&#2418…
参考)https://www.yokohama.kanagawa.med.or.jp/radio/common/docs/230504.pdf
男性更年期障害の精神症状は、加齢に伴うテストステロン低下と心理社会的ストレスが相互に増幅し合うことで顕在化しやすいと考えられています。テストステロン低値は抑うつ症状や意欲低下と関連することが知られており、仕事のパフォーマンス低下や対人関係の摩擦として認識されることが多く、本人よりも周囲が「最近怒りっぽい」「ミスが増えた」と気づくケースも少なくありません。
一方で、40~50代男性は管理職としての責任増大、親の介護、子どもの進学・就職といったライフイベントが重なる時期であり、睡眠不足や長時間労働、生活習慣の乱れがテストステロン低下をさらに加速させる可能性が指摘されています。抑うつや不安が前景に立つ症例では、精神科・心療内科でのうつ病・不安障害としての治療が先行し、男性更年期障害としての評価が行われないまま長期通院に至る場合もあります。
メンタル面の変化を「性格の問題」や「努力不足」と捉えず、生物学的要因としてのテストステロン低下を説明することは、患者の自己責任感や羞恥感を軽減し、治療へのアドヒアランスを高めるうえで非常に重要です。また、職場・家庭への情報提供や産業医との連携により、過度な業務負荷の調整や働き方の見直しを図ることも、症状軽減に寄与しうる実践的な介入です。
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| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主なメンタル症状 | 抑うつ、不安、いらいら、意欲低下、集中力低下 |
| 職場での影響 | パフォーマンス低下、ミス増加、対人摩擦、モチベーション低下 |
| 家庭での影響 | 怒りっぽさ、家族との会話減少、夫婦関係の悪化、性行為頻度の低下 |
| 背景要因 | テストステロン低下、長時間労働、睡眠不足、介護・昇進などライフイベント |
| 医療機関受診の傾向 | 精神科・心療内科受診が先行し、LOH評価が遅れる傾向 |
男性更年期障害の診断では、問診と症状評価に加え、血中テストステロン測定が中核となりますが、「症状の程度」と「ホルモン値」が必ずしも一致しない点を理解しておく必要があります。欧州男性学会などでも利用されているAMS(Aging Males’ Symptoms)スコアは、全身症状、精神症状、性機能症状の17項目から構成され、自己記入式で男性更年期症状のスクリーニングに有用とされています。日本でも医療機関や健康サイトのセルフチェックとして広く紹介されており、4~9項目該当で中等度、10~15項目で高度、16項目以上で重度と判定する基準が用いられています。
血液検査では、総テストステロンもしくは遊離テストステロンを測定し、午前中の採血で日内変動の影響をある程度抑えることが推奨されています。一例として、遊離テストステロン8.5 pg/mL未満を低値、8.5~11.8 pg/mLを境界域、11.8 pg/mL超を正常とする基準が紹介されており、血中テストステロン250 ng/mL以下、または遊離テストステロン8.5 pg/mL以下で男性更年期障害と診断する実臨床もあります。
ただし、テストステロン値が正常範囲でも重度の症状を呈する患者や、逆に低値であっても自覚症状の乏しい患者が存在することから、数値のみに依存せず、症状・生活背景・他疾患の有無を総合して判断することが求められます。また、甲状腺機能異常、うつ病、睡眠時無呼吸症候群、糖尿病など、類似症状を呈する疾患の鑑別や併存評価も不可欠です。
男性更年期障害の診断とAMSスコアの解説資料(医師会資料、問診票の具体的項目など)を詳しく確認したい場合には、以下のPDFが参考になります。
「男性更年期障害の診断と治療」AMSスコアとテストステロン測定の基準が整理された資料
横浜市医師会『男性更年期障害の診断と治療』PDF
男性更年期障害の治療では、生活習慣改善と精神心理的支援を基盤としつつ、必要に応じてテストステロン補充療法(TRT)や漢方薬、ED治療薬、抗うつ薬などを組み合わせるアプローチが推奨されています。テストステロン補充療法は、著しく低値で症状が強い症例において、筋肉量や骨量の維持、性機能の改善、抑うつ症状の軽減などが期待され、日本では2~4週間ごとのテストステロン筋注が保険診療として行われています。一方で、前立腺がんや多血症、重度の睡眠時無呼吸症候群など、TRTの適応に慎重を要する状況もあるため、泌尿器科やメンズヘルス外来など専門医との連携が重要になります。
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生活習慣介入としては、適度な運動、十分な睡眠、禁煙、過度の飲酒の是正、バランスのとれた食事など、一般的な生活習慣病対策がテストステロン値の維持にも寄与すると報告されています。特にレジスタンス運動や有酸素運動は筋力・骨量維持と抑うつ症状の改善に効果があり、サルコペニア予防の観点からも男性更年期障害の患者に積極的に推奨されます。
意外なポイントとして、男性更年期障害はメタボリックシンドローム、2型糖尿病、心血管疾患、骨粗しょう症、認知症、サルコペニアなど、さまざまな慢性疾患のリスクと関連することが報告されており、単に「加齢に伴う不調」として放置すると、将来的なQOL低下や生命予後に影響しうることが示されています。このため、一次医療での早期拾い上げと、適切な専門医紹介が、長期的な予後改善の観点からも重要といえます。
男性更年期障害の治療と予防に関する一般向け解説として、サワイ製薬の健康情報サイトは生活習慣介入の具体例がわかりやすくまとまっています。
生活習慣改善やセルフケアのポイントを患者向け資料として紹介する際の参考になります。
サワイ健康推進課「女性だけではない!男性に発症する更年期障害」
検索上位の記事では中高年男性が主対象ですが、近年は20~30代でも男性更年期障害と診断され、治療を受ける症例が報告されており、「隠れ男性更年期」として注目されています。ストレスフルな職場環境、長時間労働、睡眠不足、過度なダイエットや筋肉増強サプリの乱用などが若年男性のテストステロン低下に影響している可能性が議論されており、従来の「中高年男性の疾患」というイメージからのアップデートが求められます。
中高年においても、AMSスコアのセルフチェックでは中等度~高度の男性更年期症状を有するにもかかわらず、医療機関を受診していない男性が多数存在すると推計されており、「なんとなく不調」を抱えたまま仕事・家庭を維持している「隠れ男性更年期」の存在が公衆衛生上の課題になりつつあります。とくに、抑うつ症状や意欲低下が強いにもかかわらず、「男だから我慢する」「仕事を休めない」というジェンダー役割意識が受診行動の障壁となっていることが指摘されています。
医療従事者としては、男性患者が「疲れ」「不眠」「肩こり」「ED」など一見ばらばらな訴えをしている場合でも、年齢、職業、生活習慣、心理社会的背景と合わせて男性更年期障害の可能性を一度立ち止まって検討する姿勢が重要です。また、若年男性においても、原因不明の倦怠感やメンタル不調が長期化している場合には、内分泌評価の一環としてテストステロン測定を検討することが「見落とされがちな隠れ男性更年期」の掘り起こしにつながる可能性があります。
男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)の基礎知識と、症状・合併症・治療方針についての専門的な解説は、日本内分泌学会の患者向けページに詳しくまとめられています。
基礎情報を押さえたい医療従事者や患者向け資料を作成する際に有用です。
日本内分泌学会:男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)
このような男性更年期障害 症状 男性の特徴や背景を踏まえたうえで、あなたの現場ではどのような患者教育やスクリーニングの工夫が考えられるでしょうか?
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