
肩関節周囲炎の急性期(炎症期)は、肩関節包に強い炎症が生じている状態です。この時期の特徴として、安静時にも痛みを感じたり、夜間に痛みで目が覚める夜間痛が現れたりします。
急性期の自宅リハビリでは、以下の点に注意が必要です。
参考)肩関節周囲炎(凍結肩)の病態生理と病期別運動指導 - cor…
急性期の対処法
急性期の具体的な運動方法
振り子運動の手順
1. テーブルや椅子の背に痛くない側の手をつき、上体を前に軽く倒します
2. 痛い側の腕を力を抜いてぶら下げます
3. 体の揺れを使って、腕を前後・左右・円を描くようにゆっくり揺らします(各方向10〜20回)
4. 1日2〜3セットを目安に行います
この運動は、肩関節に負担をかけずに可動域を維持する効果があります。
参考)https://www.city.kawasaki.jp/kawasaki_hospital/page/0000180197.html
炎症が落ち着き、痛みが軽減してきた段階が拘縮期です。この時期には、肩関節包の線維化が進み、関節の可動域が制限されるようになります。
拘縮期からの自宅リハビリでは、以下の運動が効果的です。
参考)綱島の駅チカ整形外科ならシン・整形外科 綱島【公式】五十肩(…
拘縮期のおすすめ運動
拘縮期の運動詳細
壁のぼり運動の手順
1. 壁に向かって立ち、痛い側の手を壁に軽くつけます
2. 指先で壁を這うように、ゆっくり上に向かって手を滑らせます
3. 痛みを感じる手前で止め、5〜10秒キープしてからゆっくり下ろします
4. 5〜10回を1セットとして、1日2〜3セット行います
タオルストレッチの手順
1. タオルの片端を痛くない側の手で持ち、背中側を通して痛い側の手で下端を握ります
2. 痛くない側の手でタオルをゆっくり上に引き上げ、痛い側の腕を背中で持ち上げます
3. 痛みのない範囲で10秒キープ × 5〜10回繰り返します
これらの運動は、毎日継続することが重要です。ただし、翌日に痛みが悪化する場合は、運動強度が強すぎるため、回数を減らすか、可動域を狭めて調整してください。
参考)五十肩の改善方法|肩が上がらないときの対処とセルフケア|世界…
回復期には、痛みがさらに軽減し、可動域が徐々に改善してきます。この時期には、より積極的な可動域訓練と筋力強化が重要です。
回復期のトレーニング
回復期の運動詳細
ゴムバンド外旋運動の手順
1. ゴムバンドの両端を持ち、肘を90度に曲げて体の横につけます
2. 肘を体から離さずに、前腕を外側に開きます
3. 10回×3セットを目安に行います
肩甲骨の寄せ下げの手順
1. イスに浅く腰かけ、両手を腰の後ろで組みます(痛みが強い場合はタオルを使って左右の手をつなぎます)
2. 息を吸いながら胸を開き、肩甲骨を中央に寄せます
3. 5秒キープして、ゆっくり戻します
4. 10回×3セット行います
回復期には、肩だけでなく肩甲骨周りの筋肉も同時に鍛えることが重要です。これにより、肩甲上腕リズムが改善し、よりスムーズな肩の動きが得られます。
肩関節周囲炎で最もつらい症状の一つが夜間痛です。夜間痛は、日中はそれほど痛まなくても、夜寝ようとすると肩がズキズキと痛み、熟睡できない状態を指します。
参考)夜寝るときに肩が痛い「夜間痛」の原因と対策|鶴橋の山本整形外…
夜間痛の原因
研究によると、夜間痛が長期に及ぶほど、肩関節の外旋可動域や結帯動作の予後に悪影響を及ぼすことが報告されています。特に、夜間痛が5週以上続いた群では、外旋可動域の改善率が有意に低かったとのことです。
参考)https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282680553604992
夜間痛の対策
仰向けで寝る場合
横向きで寝る場合
就寝前のケア
夜間痛対策の具体例
抱き枕の活用方法
1. 大きめの抱き枕やクッションを胸の前に置きます
2. 痛い側の腕をその上にそっと乗せます
3. 腕の重みをクッションに預けることで、肩が前や内側に垂れ下がるのを防ぎます
バスタオルの活用方法
1. バスタオルを四つ折りにして、痛む側の肩甲骨の裏側から二の腕、肘の下にかけて敷きます
2. 手の平の下にも同様にタオルを置き、腕全体を軽く支えるイメージで調整します
3. 無理のない高さに調整し、肩関節が安定する位置を探します
これらの対策により、夜間痛を軽減し、良質な睡眠を得ることができます。良質な睡眠は、回復を促進する重要な要素です。
参考)五十肩の夜間痛がつらい|夜中に痛い原因と楽な寝方・和らげ方|…
肩関節周囲炎のリハビリにおいて、あまり注目されないが重要な視点が「胸椎の可動性」と「肩甲上腕リズム」です。
参考)肩関節周囲炎(五十肩・四十肩)はなぜ長引くのか|胸椎の硬縮・…
肩甲上腕リズムとは
肩を上げる動作(外転)では、上腕骨(肩甲上腕関節)と肩甲骨(肩甲胸郭関節)が2:1の割合で協調して動きます。これを「肩甲上腕リズム」と呼びます。
参考)肩関節インピンジメント症候群はなぜ繰り返すのか|肩峰下スペー…
例えば、腕を180度上げる場合。
このリズムが崩れると、肩に負担がかかり、回復が遅れる原因になります。
胸椎の硬縮と肩関節周囲炎の関係
胸椎(背中の真ん中あたりの脊椎)が硬くなると、肩甲骨の動きが制限され、肩甲上腕リズムが崩れます。これにより、肩関節に過剰な負担がかかり、炎症や拘縮が悪化することがあります。
胸椎の可動性を改善する運動
胸椎の伸展運動
1. 床に仰向けになり、膝を立てます
2. バスタオルを丸めて、胸椎(背中の真ん中)の下に置きます
3. 両手を頭の後ろに組み、ゆっくりと胸を開きます
4. 10秒キープして、ゆっくり戻します
5. 5回×3セット行います
肩甲骨の動きを改善する運動
1. 四つん這いになり、片手を頭の横に置きます
2. 肘を天井に向けるように、上半身を回転させます
3. 元の位置に戻り、反対側も行います
4. 左右10回×3セット行います
前鋸筋の強化
1. 肘を直角に曲げ、両肘を前で合わせます
2. 肘を上に挙げるように、肩甲骨を前方に引き出します
3. 5秒キープして、ゆっくり戻します
4. 10回×3セット行います
これらの運動により、胸椎の可動性と肩甲骨の動きが改善され、肩甲上腕リズムが正常化します。これにより、肩関節への負担が軽減され、回復が促進されます。
参考)肩甲上腕リズムと関節包から読み解く四十肩・五十肩|さつま|現…
意外な事実:肩関節周囲炎の自然経過
肩関節周囲炎は、適切な治療を行わなくても、約60〜80%が1〜2年以内に自然に回復すると言われています。しかし、残存症状が残るケースも報告されています。
参考)肩関節周囲炎——この分野で何がわかっていて、何がわかっていな…
自然経過の統計
このデータから、自然治癒を待つだけでは、完全な回復が得られないケースがあることがわかります。早期から適切なリハビリを行うことで、回復期間を短縮し、残存症状を軽減することが可能です。
また、夜間痛が4週以内に治まった患者は、特に予後が良いことが研究で示されています。夜間痛の早期対策が、長期的な回復に重要であることがわかります。
参考リンク
川崎市立川崎病院:五十肩、肩関節拘縮(肩関節周囲炎)の運動方法
振り子運動や水平内転運動など、具体的な運動方法が図解で説明されています。
磯村医院:五十肩(肩関節周囲炎)の症状・経過・自宅でできるケア
症状の3段階の経過と、各段階に合わせた自宅ケア方法が詳しく解説されています。
J-STAGE:肩関節周囲炎による夜間痛が関節可動域の予後に及ぼす影響
夜間痛の期間と可動域予後の関係について、研究データに基づいた詳細な分析が記載されています。
cortisトレーナーアカデミー:肩関節周囲炎(凍結肩)の病態生理と病期別運動指導
炎症期・拘縮期・回復期の各病期に合わせた運動療法のエビデンスが体系的に整理されています。
こころ整体院グループ:五十肩の夜間痛がつらい|夜中に痛い原因と楽な寝方・和らげ方
夜間痛の原因と、具体的な寝方の工夫や温熱療法の効果が詳しく解説されています。