回復期リハビリテーション病棟は、急性期の治療を終えて全身状態が一定程度安定した患者に対し、日常生活動作(ADL)の改善、寝たきりの予防、家庭・地域への復帰を目的として、集中的なリハビリテーションを提供する病棟です。代表的な対象として、脳血管疾患や大腿骨頸部骨折等の患者が位置付けられています。病棟としては、回復期リハビリテーションを要する状態の患者が常時8割以上入院していることが求められます。
参考)https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tohoku/shido_kansa/documents/kaifukuki-bassui1.pdf
実務上、「診断名が一致するため入棟できる」と単純に判断することは適切ではありません。厚生労働省が定める対象は、単なる疾患名ではなく、「発症後若しくは手術後の状態」「義肢装着訓練を要する状態」「手術又は発症後の状態」といった機能回復訓練を必要とする臨床状態として規定されています。そのため、入棟可否では、医学的安定性、リスク管理の可否、リハビリテーションによる改善可能性、ADL低下の程度、退院先の見通し、家族・介護力、社会資源の調整状況を多職種で確認することが重要です。
なお、回復期リハビリテーション病棟は「回復期機能」を担う病棟の一部です。回復期機能には、急性期を経過した患者へ在宅復帰に向けた医療・リハビリテーションを提供する役割があり、特に脳血管疾患や大腿骨頸部骨折等の患者へADL向上と在宅復帰を目的に集中的リハビリテーションを行う機能が回復期リハビリテーション機能とされています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000864213.pdf
地方厚生局:A308 回復期リハビリテーション病棟入院料
回復期リハビリテーション病棟入院料の対象は、診療報酬上「回復期リハビリテーションを要する状態」として整理されます。代表的には、脳血管疾患・脊髄損傷・頭部外傷等、下肢骨折等、廃用症候群、神経・筋・靱帯損傷、股関節または膝関節の置換術後、高次脳機能障害を伴う重症脳血管障害等が含まれます。
参考)https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000105860.pdf
以下は、医療現場で転院調整・入棟判定・残日数管理に用いるための実務的な一覧です。日数の起算や個別例外、通知上の表現は改定や疑義解釈で確認が必要であり、最終判断は最新の告示、通知、施設基準、地方厚生局の取扱いに従います。
| 対象となる状態 | 主な疾患・術後例 | 算定上限日数 |
|---|---|---|
| 脳血管疾患等 | 脳血管疾患、脊髄損傷、頭部外傷、くも膜下出血シャント術後、脳腫瘍、脳炎、急性脳症、脊髄炎、多発性神経炎、多発性硬化症、腕神経叢損傷、義肢装着訓練を要する状態 | 150日 |
| 高次脳機能障害を伴う重症例等 | 高次脳機能障害を伴う重症脳血管障害、重度の頸髄損傷、頭部外傷を含む多部位外傷 | 180日 |
| 下肢・骨盤・脊椎等の骨折 | 大腿骨、骨盤、脊椎、股関節、膝関節の骨折、2肢以上の多発骨折の発症後または手術後 | 90日 |
| 廃用症候群 | 外科手術後または肺炎等の治療時の安静により生じた廃用症候群 | 90日 |
| 神経・筋・靱帯損傷 | 大腿骨、骨盤、脊椎、股関節または膝関節の神経、筋、靱帯損傷後の状態 | 60日 |
| 関節置換術後 | 股関節または膝関節の置換術後の状態 | 90日 |
脳血管疾患等の一群には、脳卒中だけでなく、脊髄損傷、頭部外傷、脳炎、急性脳症、多発性神経炎、多発性硬化症などが含まれます。ここで重要なのは、同じ疾患群に含まれていても、患者の病態が不安定で急性期治療を継続すべき場合や、集中的リハビリテーションの実施が困難な場合には、回復期リハビリテーション病棟への転院時期を再検討しなければならない点です。
また、高次脳機能障害を伴う重症脳血管障害、重度頸髄損傷、頭部外傷を含む多部位外傷は、180日という長い上限日数が設定されている代表的な区分です。ただし、180日まで算定できることは、180日間の在院が当然に認められるという意味ではありません。入院目的、機能予後、退院可能性、家族調整、在宅サービス整備を踏まえ、退院支援を入棟時から進める必要があります。
回復期リハビリテーション病棟の適応判定では、対象疾患一覧との照合に加え、患者が「回復期リハビリテーションを要する状態」にあることを記録として説明できるかを確認します。特に紹介元から受け取る診療情報提供書、看護サマリー、リハビリテーションサマリー、画像所見、手術記録、ADL評価、FIMやBI等の評価結果を統合し、病棟の役割と患者ニーズが合致しているかを検討します。
例えば、大腿骨近位部骨折術後であっても、術後合併症のため全身管理が中心であれば、直ちに回復期リハビリテーション病棟へ移すことが適切とは限りません。一方、バイタルサインが安定し、疼痛コントロールを行いながら荷重・移乗・歩行・排泄動作・家屋環境に応じた動作訓練を集中的に進められる状態であれば、回復期リハビリテーションの目的が明確になります。
廃用症候群は、対象判断で特に注意を要する区分です。肺炎、心不全、感染症、手術後などの治療・安静を契機にADLが低下することは多いものの、原疾患の治療継続が主であるのか、廃用による機能低下への集中的リハビリテーションが主であるのかを区別する必要があります。紹介時には、安静期間、発症前ADL、現在のADL、離床阻害因子、リハビリテーションのゴールを具体的に記載すると、受け入れ判定が円滑になります。
回復期リハビリテーション病棟入院料では、対象状態ごとに算定上限日数が定められています。重要なのは、患者が転院した場合でも、前医で算定された回復期リハビリテーション病棟入院料の日数を転院先で通算することです。転院先のみで上限日数を新規に数え直すことはできません。診療報酬明細書の摘要欄には、転院前医療機関における算定日数を記載する取扱いが示されています。
したがって、地域連携部門、病棟クラーク、医事課、リハビリテーション部門は、紹介受理時点で「発症日」「手術日」「回復期リハビリテーション病棟入院料の算定開始日」「前医の算定日数」「残算定可能日数」を共通の確認項目にする必要があります。急性期から直接転院する場合だけでなく、複数の回復期病院を経由する場合、自院内で病棟移動する場合、再入院の可能性がある場合にも、算定期間の取扱いを事前に検討します。
さらに、入院料の対象患者でない者を回復期リハビリテーション病棟に入院させた場合、当該病棟が一般病棟なら特別入院基本料、療養病棟なら療養病棟入院基本料の入院料Ⅰを算定する取扱いです。病棟稼働上の空床対策のみを目的に対象外患者を受け入れることは、制度趣旨および請求面の双方で問題となり得ます。
日数管理は、単に「残日数があるか」を見る作業ではありません。残日数の範囲内で、退院時に必要な移動能力、セルフケア、嚥下・コミュニケーション、認知・行動面、服薬自己管理、家族指導、住宅改修、介護保険サービス導入などを逆算し、実現可能な目標を多職種で共有する必要があります。
令和6年度診療報酬改定では、回復期リハビリテーション病棟におけるFIM評価、栄養管理、口腔管理、社会福祉士配置など、アウトカムとチーム医療に関わる要件が見直されました。回復期リハビリテーション病棟入院料および回復期リハビリテーション入院医療管理料では、FIMを2週間に1回以上測定し、その結果を診療録等に記載することが要件化されています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001251537.pdf
また、回復期リハビリテーション病棟入院料1では、入退院時の栄養状態評価にGLIM基準を用いることが要件となり、入院料2から5ではGLIM基準の使用が望ましいとされています。低栄養、サルコペニア、口腔機能低下、摂食嚥下障害はADL改善や退院後生活に直結するため、リハビリテーション部門だけで完結せず、医師、看護師、管理栄養士、歯科・歯科衛生士、薬剤師、MSWを含めた評価・介入の連動が必要です。
入院料1・2では専従の社会福祉士等の配置、入院料1・3ではFIM測定に関わる職員向けの年1回以上の研修会が求められています。特にFIMは、単に点数を入力するための指標ではなく、入棟時の障害像の共通理解、訓練内容の優先順位付け、家族への説明、退院時の能力評価、病棟の実績評価に活用する情報です。測定者間の評価ばらつきを抑えるため、院内研修と定期的なすり合わせを実施するとよいでしょう。
医療従事者が対象疾患一覧を運用する際は、「対象疾患に該当するか」「算定上限日数は何日か」に加え、「その患者にとって回復期リハ病棟で達成すべき具体的な生活目標は何か」を明確にすることが核心です。脳卒中後の片麻痺であれば移乗・排泄・更衣・家屋内移動・高次脳機能障害への対応、骨折術後であれば疼痛・荷重制限・歩行再獲得・転倒予防・住宅内動線の調整、廃用症候群であれば原疾患再増悪の予防と離床耐性の再獲得を中心に、疾患群に応じた目標設定を行います。
厚生労働省:令和6年度診療報酬改定の概要(入院Ⅲ・回復期)

リハビリナース 2022年3号(第15巻3号)特集:3ステップでわかる はじめての回復期リハ病棟看護 先輩ナースからのアドバイス付き