除細動の適応波形と心室細動無脈性VT

除細動の適応となる心室細動・無脈性心室頻拍の波形を、PEA・心静止との違い、同期の考え方、二相性波形と通電後の実践まで整理します。波形だけでなく「脈の有無」を正しく評価できていますか?

除細動の適応と波形

除細動で最初に確認する要点
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適応はVF・無脈性VT

心停止中のショック適応リズムは心室細動(VF)と無脈性心室頻拍(pVT)である。

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波形単独で決めない

VT様の規則的な広いQRS波でも、脈拍・意識・循環動態を短時間で合わせて評価する。

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通電後は直ちにCPR

ショック後に脈拍確認を先行させず、速やかに胸骨圧迫を再開して中断時間を最小化する。


除細動の適応波形:心室細動VFと無脈性VT



心停止に対する非同期の電気ショック、すなわち除細動の適応は、原則として心室細動(ventricular fibrillation:VF)と無脈性心室頻拍(pulseless ventricular tachycardia:pVT)である。JRCの成人二次救命処置でも、VF/pVTをショック適応リズムとして扱う。


VFは、心室内の興奮が無秩序に旋回し、心室全体として有効な収縮を形成できない状態である。モニターでは、P波・QRS波・T波を区別できず、基線が不規則に揺れる。振幅が大きい粗大VFだけでなく、振幅が小さい細小VFもあり、細小VFは心静止との取り違えが問題になりやすい。


pVTは、一般に幅広いQRS様波形が速く連続する頻拍である。ただし、除細動を決める本質は「VTのように見えるか」だけではない。触知できる有効な脈拍がないことが必須である。モニター上で規則正しい幅広い頻拍を示していても、脈拍があり循環が保たれている場合は、心停止アルゴリズムとしての非同期除細動ではなく、同期カルディオバージョンを含む頻拍対応を検討する。


リズム 代表的な波形所見 脈拍 心停止時のショック適応
VF 不規則で無秩序な揺れ。明確なQRSを識別できない なし 適応
pVT 通常は幅広いQRS様波形が高速で反復する なし 適応
PEA VF・pVT以外の組織化された電気活動 なし 非適応
心静止 ほぼ平坦、または極めて低振幅 なし 非適応


VF/pVTを認識したら、解析や除細動器の充電による胸骨圧迫中断を短くする。除細動器の準備ができるまで良質なCPRを継続し、ショック後は直ちに胸骨圧迫を再開することが重要である。日本の救急活動プロトコルでも、解析・通電を意図的に遅らせる「CPRファースト」は基本的に採用せず、早期除細動を優先する考え方が示されている。
総務省消防庁:JRC蘇生ガイドライン2015に基づく救急活動プロトコル


除細動の適応波形とPEA・心静止の見分け方

PEA(pulseless electrical activity:無脈性電気活動)と心静止は、いずれも脈拍を認めないが、通常は除細動の適応ではない。ここでの誤りは、「脈がないからショック」と短絡することである。電気ショックは、無秩序または極度に頻回な心室興奮を一斉にリセットし、再び組織化された興奮が立ち上がる余地を作る治療である。心筋の電気活動がほぼ消失した心静止や、組織化された電気活動はあるものの機械的拍出がないPEAには、原理上、同じ効果を期待しにくい。


PEAでは、洞調律様、徐脈、接合部調律、幅広いQRS、ペースメーカー波形など、多様な心電図があり得る。画面に「何らかの波」が見えること自体は、拍出の存在を意味しない。脈拍確認は10秒以内を目安に行い、脈拍が明確でなければ心停止としてCPRを開始・継続する。一方で、PEAの治療はショックではなく、良質なCPR、アドレナリン、可逆的原因の検索と是正に軸足を置く。


心静止を疑う場合には、ただちに「ショック非適応」と決めつけず、次の技術的確認が安全である。

  • モニター誘導を変え、別の誘導でも低電位・平坦化が一貫するか確認する
  • 電極パッドや電極、ケーブルの外れ、断線、設定ミスを確認する
  • 細小VF、ペーシングスパイク、アーチファクトを見逃していないか検討する
  • 胸骨圧迫や搬送振動によるアーチファクトと、真の心電図波形を区別する


特に細小VFと心静止の区別は、単一誘導だけで困難なことがある。振幅の小さな不規則波が見える際は、誘導変更と電極接触の確認が診断精度に寄与する。反対に、胸骨圧迫中の揺れをVFと誤認しないことも重要である。リズム確認時の短い中断で、アーチファクトのない波形を得るという基本操作が、誤った通電を減らす。


なお、AEDの「ショックが必要です/必要ありません」という解析結果は、機器が判定するリズム分類に基づく。医療従事者が手動除細動器を扱う場面では、画面上の形、患者の反応、脈拍、臨床経過を統合して判断する必要がある。


除細動の適応波形と同期・非同期ショックの違い

「除細動」と「同期カルディオバージョン」は、どちらも経胸壁的に電気ショックを与える処置だが、通電タイミングと適応が異なる。除細動はQRS波に同期させない非同期ショックであり、VF/pVTに対して用いる。VFでは識別可能なQRS波がなく、同期の基準が存在しないため、同期を待つこと自体が成立しない。


これに対して、脈拍を伴う頻拍性不整脈で血行動態が不安定な場合には、通常、QRS波に合わせる同期カルディオバージョンを選ぶ。T波の脆弱期に非同期で通電すると、R-on-T現象を介してVFを誘発するおそれがあるためである。同期モードはR波を検出し、脆弱期を避けて通電する安全機構と理解できる。


項目 除細動 同期カルディオバージョン
通電 非同期 QRS波に同期
主な対象 VF、pVT 脈拍を伴う不安定な頻拍
QRS認識 不要 必要
典型的な注意点 ショック後に直ちにCPRを再開 同期マーカーとR波認識を必ず確認


多形性VTではQRS形態と周期が変動して同期が困難、または危険となる場合がある。患者が無脈ならpVTとして非同期除細動を行う。脈拍があっても不安定な多形性VTでは、同期が確実に機能しない状況を想定し、緊急の非同期ショックが必要になることがある。モニターに「VT」と表示されているかではなく、脈拍と循環不全の程度、規則性、同期可能性を短時間で評価する。


除細動とカルディオバージョンの定義、VFでは同期が不要かつ不可能である理由は、以下の医療者向け解説で確認できる。
MSDマニュアル プロフェッショナル版:カルディオバージョン/電気的除細動


除細動の適応波形と二相性波形・エネルギー量

現在の除細動器では、二相性波形が標準的に用いられる。二相性波形は、電流が一方向に流れた後、極性を反転して反対方向にも流れる方式である。単相性波形よりも低いエネルギーで有効な除細動を得られる可能性があり、心筋障害を抑えられる可能性もあることから、JRCは心房性・心室性不整脈の治療において単相性波形より二相性波形を推奨している。


ただし、「二相性なら何Jでも同じ」ではない。必要なエネルギーは、機器固有の波形、パッド間の胸部インピーダンス、電極位置、患者の体格、接触状態などの影響を受ける。JRC蘇生ガイドラインでは、成人の初回二相性ショックとして、二相性切断指数波形(BTE)では150 J以上、二相性矩形波形(RLB)では120 J以上を推奨している。機器の推奨初回エネルギーを確認し、不明なときの設定は所属施設の手順書と機器マニュアルに従う。


  • BTE:二相性切断指数波形。初回は150 J以上が推奨される
  • RLB:二相性矩形波形。初回は120 J以上が推奨される
  • 単相性波形:使用する場合、成人初回は360 Jが推奨される
  • 反復ショック:VF/pVTの持続、機器特性、院内プロトコルを踏まえてエネルギー設定を判断する


JRC 2020では、初回エネルギー量の推奨とともに、二相性波形の優位性、単相性除細動器しか利用できない場合の扱いが示されている。
日本蘇生協議会:JRC蘇生ガイドライン2020 成人の二次救命処置


重要なのは、エネルギー量の議論が胸骨圧迫の質を代替しない点である。通電前の充電は可能な限り胸骨圧迫を継続しながら行い、離床確認のための中断を最小限にする。ショックが不成功でも、直後にモニターを凝視して長時間停止するのではなく、CPRを再開し、次のリズム確認時に再評価する。


除細動の適応波形で見落とすアーチファクトとパッド位置

除細動の成否はリズム判定だけで決まらない。意外に見落とされやすいのが、アーチファクトとパッド位置である。胸骨圧迫中の波形は、規則的または不規則な大きな揺れとして表示され、VFやVTに似ることがある。パッド・ケーブルの接触不良、患者の振戦、搬送中の揺れ、電気メスなども波形を乱す。


リズム確認時には、「圧迫を止めた短い時間に得られた波形か」「別誘導で同じ所見か」「モニターの心拍数表示だけを過信していないか」を確認する。機器が算出する心拍数はアーチファクトをQRSとして数えることがあり、画面上の数値が脈拍数と一致するとは限らない。特に体外式ペースメーカーのスパイクや、極端に低振幅のVFでは、波形の読み違いが起こり得る。


成人のパッドは一般的に、右前胸部と左側胸部の前外側配置を用いる。パッド間を流れる電流ベクトルが心筋を十分に横切るようにすることが目的であり、乳房組織の上、薬剤貼付部、植込み型デバイスの直上、明らかな創部は避ける。皮膚の水分や発汗を拭き、過度の胸毛で密着が妨げられる場合は迅速に対応する。


ショック抵抗性VF/pVTでは、単に同じ操作を反復するのではなく、パッド接触、貼付位置、エネルギー設定、CPRの質、可逆的原因を系統的に点検する。JRC 2025では、連続3回以上の電気ショック後もVF/pVTが持続する成人院外心停止で、二重連続電気ショック(DSED)またはベクトル変更(VC)を考慮する提案が示されている。ただし、いずれも弱い推奨であり、教育・機器運用・施設プロトコルを含めた体制整備なしに安易に導入するものではない。
日本蘇生協議会:JRC蘇生ガイドライン2025 成人の二次救命処置


「波形がVFらしい」という認識から一歩進め、除細動適応の確認、非同期通電、通電直後のCPR、再評価時の原因検索を一連の流れとして実施することが、実臨床における除細動の質を左右する。




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