代替品に切り替える前に、糖尿病患者への使用は「コントロール良好でも原則禁忌」だと思っていませんか。実際には血糖値が安定していれば禁忌ではなく、吸収量が極めて少ないため大半の患者で使用継続が可能です。
2026年に入り、イソジン®シュガーパスタ軟膏はムンディファーマ株式会社の判断により販売中止となりました 。代替品として健栄製薬株式会社が製造する「ポビシュガーパスタ軟膏」が2026年2月20日より販売開始され、公式に後継製品として案内されています 。
参考)https://www.gifu-upharm.jp/di/mguide/salesupply/2g/ss2115402512.pdf
販売中止の理由は「諸般の事情」とされており、製造上の課題や市場環境の変化が背景にあるとされます。現場での混乱を最小化するため、岐阜県薬剤師会をはじめ各地の医療機関が切替案内を発出しており、多くの病院では院内採用品の変更が急ピッチで進んでいます 。 m-p-a(http://www.m-p-a.jp/pdf/%E5%BA%83%E5%9F%9F%E7%97%85%E9%99%A2%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B/%E6%9D%B1%E5%8C%BB%E7%99%82%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC/1.(4)%EF%BC%BF%E8%B2%A9%E5%A3%B2%E4%B8%AD%E6%AD%A2%E3%80%81%E5%87%BA%E8%8D%B7%E5%81%9C%E6%AD%A2%E7%AD%89%E3%81%AB%E4%BC%B4%E3%81%86%E5%8C%BB%E8%96%AC%E5%93%81%E3%81%AE%E5%88%87%E3%82%8A%E6%9B%BF%E3%81%88%E7%AD%89%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6202601.pdf)
発売当初のポビシュガーパスタ軟膏は需要量が不明なため、従来と同じく限定出荷として流通が制限されていました 。これは供給不足リスクを示しており、病院薬剤部では在庫状況を随時確認しながら使用量の調整が求められる状況が続いています。
岐阜県薬剤師会による「イソジンシュガーパスタ軟膏 販売中止のご案内」(代替品情報含む)
イソジンシュガーパスタ軟膏の主成分は精製白糖(スクロース)とポビドンヨードの2つです 。この組み合わせがなぜ有効なのかを理解しておくことで、代替品選択の根拠が明確になります。
参考)イソジンシュガーパスタの代替品はある?薬局で買える代用品を紹…
精製白糖は高浸透圧性を持ち、創面から過剰な滲出液を吸収します。これにより壊死組織の自己融解が促進され、細菌の増殖が抑制されます。同時に、肉芽形成を助けるフィブロネクチンの分解酵素活性を低下させる作用も知られています。
ポビドンヨードは幅広い殺菌スペクトルを持ち、MRSA・緑膿菌・カンジダなどに対しても効果を発揮します 。ただし高濃度使用では線維芽細胞への毒性が指摘されており、肉芽形成期以降は継続使用より創傷治癒を促進する薬剤への切替が推奨されています。つまり「使い続けてよい時期」と「切替るべき時期」の見極めが鍵です。
参考)褥瘡と薬のキホン
| 成分 | 役割 | 備考 |
|---|---|---|
| 精製白糖 | 浸透圧による壊死組織除去・肉芽促進 | スクロースが基剤の核 |
| ポビドンヨード(約0.9%) | 殺菌・感染予防 | 肉芽形成期の長期使用は要注意 |
現在、医療現場で使用可能な代替品は主に以下の5製品です 。成分は同等でも、基剤の処方や製剤特性に微差があるため、単純に「どれでも同じ」とは言い切れません。 m-p-a(http://www.m-p-a.jp/pdf/%E5%BA%83%E5%9F%9F%E7%97%85%E9%99%A2%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B/%E6%9D%B1%E5%8C%BB%E7%99%82%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC/1.(4)%EF%BC%BF%E8%B2%A9%E5%A3%B2%E4%B8%AD%E6%AD%A2%E3%80%81%E5%87%BA%E8%8D%B7%E5%81%9C%E6%AD%A2%E7%AD%89%E3%81%AB%E4%BC%B4%E3%81%86%E5%8C%BB%E8%96%AC%E5%93%81%E3%81%AE%E5%88%87%E3%82%8A%E6%9B%BF%E3%81%88%E7%AD%89%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6202601.pdf)
参考)https://www.iwakiseiyaku.co.jp/dcms_media/other/njsptenpu20221006.pdf
いずれも「医療用医薬品」に分類され、処方箋なしでの一般販売はありません 。これが基本です。
岩城製薬 ネオヨジンシュガーパスタ軟膏の添付文書・製剤情報(成分・効能の詳細確認に)
代替品を選ぶ際に医療従事者が最も意識すべきなのは、「創部が今どの病期にあるか」という点です。シュガーパスタ系は壊死期・炎症期・感染期に使われることが多く、肉芽形成期以降は別の薬剤が適切です 。
参考)褥瘡治療薬のファーストステップ|YakWAN(薬 One t…
壊死組織が多く感染が疑われる段階では、ポビシュガーパスタ軟膏などシュガーパスタ系の選択は妥当です。感染コントロールと壊死組織の除去を同時に行える点が強みです。
一方、肉芽が形成され始めた段階では、フィブラストスプレー®(トラフェルミン)やアクトシン軟膏®(ブクラデシンナトリウム)への切替が推奨されます 。使用し続けることに安心感を覚えやすいですが、肉芽形成期にポビドンヨード製剤を継続することは治癒を遅延させるリスクがあります。
参考)https://smc-kanwa.jp/carenet/images/201601110_03.pdf
みゆきの里:褥瘡と薬のキホン——病期別の薬剤選択をわかりやすく解説した現場向けガイド
院内採用薬をイソジンシュガーパスタからポビシュガーパスタ軟膏等に変更する際に見落とされやすい実務上のポイントがあります。これは準備不足だと院内クレームや処置ミスにつながりかねません。
1. レセプト請求コードの確認:販売中止品と代替品では薬価収載番号が異なります。電子カルテの採用マスタを更新しないまま処方すると返戻につながるため、薬剤部で速やかな更新が必要です。
2. 患者・看護師への説明:外観・テクスチャが若干異なる場合があります。「別の薬に変えられた」と患者が不安を感じるケースも報告されており、「同一成分の製品に変更しました」という一言の説明が重要です。
3. 在宅医療・施設との情報共有:病院から在宅へ移行する患者の場合、訪問看護師や在宅薬局への連絡が必要です。施設側がイソジンシュガーパスタの在庫を保有しているケースもあり、並行使用による混乱を防ぐためにタイムリーな情報提供が求められます 。 m-p-a(http://www.m-p-a.jp/pdf/%E5%BA%83%E5%9F%9F%E7%97%85%E9%99%A2%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B/%E6%9D%B1%E5%8C%BB%E7%99%82%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC/1.(4)%EF%BC%BF%E8%B2%A9%E5%A3%B2%E4%B8%AD%E6%AD%A2%E3%80%81%E5%87%BA%E8%8D%B7%E5%81%9C%E6%AD%A2%E7%AD%89%E3%81%AB%E4%BC%B4%E3%81%86%E5%8C%BB%E8%96%AC%E5%93%81%E3%81%AE%E5%88%87%E3%82%8A%E6%9B%BF%E3%81%88%E7%AD%89%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6202601.pdf)
4. 糖尿病患者への適応判断:「糖尿病患者には絶対使えない」と思い込んでいませんか。ポビドンヨード+白糖製剤は皮膚からの糖吸収量が極めて少なく、血糖値への影響はほとんど報告されていません 。ただし重症の糖尿病性潰瘍では、創傷治癒促進薬や専門医紹介を優先すべき場面もあります。
参考)(質問5)創傷治癒阻害因子とは?イソジンシュガーパスタとは?…
YakWAN:褥瘡治療薬のファーストステップ——薬剤師目線で基剤の種類と選択論理を解説