
ビタミンB群は、体内で補酵素として酵素反応を助ける水溶性ビタミンの総称です。 補酵素とは、酵素に結合してその活性を発現させる低分子の有機化合物で、ビタミンB群の多くがこの役割を担っています。
医療従事者や国家試験対策で役立つ覚え方として、以下の語呂合わせが有効です。
参考)https://dokugaku.info/2022/03/bitamin-oboekata-b1-b2-b6-b12.html
補酵素型の対応関係は以下の通り整理できます。
参考)http://www2.kuma.u-tokai.ac.jp/~nougaku/Bio/yoneda/coenzyme.html
| ビタミン | 補酵素型 | 関与する反応 |
|---|---|---|
| B1 | TPP(チアミン二リン酸) | 2-オキソ酸の脱炭酸、糖代謝 |
| B2 | FAD、FMN | 酸化還元反応、電子伝達 |
| B6 | PLP(ピリドキサールリン酸) | アミノ基転移、脱炭酸 |
| ナイアシン | NAD、NADP | 酸化還元反応、電子伝達 |
| パントテン酸 | 補酵素A(CoA) | アシル基転移 |
| ビオチン | 補酵素R | 炭酸固定 |
| 葉酸 | 補酵素F(THF) | C-unit転移 |
| B12 | 補酵素B12 | H、Cの分子内転移 |
この表を暗記する際は、各ビタミンがどの代謝経路で使われるかをセットで覚えると、臨床現場でも応用しやすくなります。
糖質代謝において、ビタミンB1、B2、ナイアシンは特に重要な補酵素として機能します。
参考)知っているようで知らない『補酵素』とは? - カカオニブ専門…
ビタミンB1(チアミン)は、チアミンピロリン酸(TPP)としてピルビン酸脱水素酵素やα-ケトグルタル酸脱水素酵素の補酵素となり、糖質の代謝に不可欠です。 TPPは、ピルビン酸がアセチルCoAに変換されるクエン酸回路の入口で必要となり、ここが阻害されると糖からのエネルギー産生が滞ります。
ビタミンB2(リボフラビン)は、FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)とFMN(フラビンモノヌクレオチド)の形で酸化還元反応に関与します。 電子伝達系や脂肪酸のβ酸化にも関わり、三大栄養素すべての代謝に関与していますが、特に脂質代謝で重要です。
ナイアシンは、NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)とNADP(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)の前駆体となり、数百種類の酵素の補酵素として働きます。 糖質、脂質、タンパク質の代謝、エネルギー産生、DNAの修復や合成、細胞分化など、多岐にわたる機能に関与しています。
参考)http://www.mac.or.jp/mail/110901/05.shtml
たんぱく質代謝とアミノ酸代謝において、ビタミンB6、葉酸、ビタミンB12が中心的な補酵素として機能します。
ビタミンB6(ピリドキシン)は、ピリドキサールリン酸(PLP)としてアミノ基転移反応、脱炭酸反応、異性化反応、脱水反応などに関与します。 アミノトランスフェラーゼ(AST、ALT)の補酵素として、アミノ酸代謝の重要な役割を担っています。 臨床検査でASTやALTの活性を測定する際、PLPを添加してホロ化することで真の酵素活性を評価します。
葉酸は、テトラヒドロ葉酸(THF)としてプリン核や塩基のチミンを合成する酵素の補酵素となり、細胞の分裂や増殖に関わります。 DNAやRNAの合成、アミノ酸の代謝、タンパク質の合成などに関わり、特に妊娠中や授乳中の女性には欠かせません。 葉酸とビタミンB12はともに赤血球の生産を助け、不足すると巨赤芽球性貧血を引き起こします。
ビタミンB12(コバラミン)は、コエンザイムB12として異性化反応やメチル基転移反応に関与します。 葉酸とともに赤血球の形成を支え、遺伝子の複製、修復、細胞分裂時の染色体の破損防止にも重要な役割を果たしています。
第71回臨床検査技師国試 午後【臨床化学】全選択肢の正誤理由と解説まとめ - SAI-LABO(さいらぼ)
脂質代謝において、パントテン酸とビオチンが重要な補酵素として機能します。
パントテン酸は、コエンザイムA(CoA)やホスホパンテテインなどの補酵素の構成成分として働きます。 TCAサイクルや脂質代謝に深くかかわっており、エネルギー代謝とは密接な関係にあります。 CoAはアシル基転移反応に関与し、脂肪酸のβ酸化やクエン酸回路でのアセチル基の運搬に不可欠です。
パントテン酸はギリシャ語で「どこにでもある酸」という意味で、あらゆる食品に含まれているため欠乏症はあまり起きないとされています。 しかし、細胞中でのCoA濃度が低下すると成長停止や副腎障害、頭痛、疲労、不眠などが起こります。
参考)https://bv-foodtesting.jp/column/250520.html
ビオチンは、ビタミンHとも呼ばれ、炭酸固定反応の補酵素として知られ、脂質と糖質の代謝に重要です。 補酵素Rとしても知られ、アビジンと呼ばれるタンパク質が特異的に強く結合し、ビオチン酵素を失活させることで知られています。
参考)補酵素(ホコウソ)とは? 意味や使い方 - コトバンク
ビオチンは抗炎症性物質の生成に関与することでアレルギー症状を緩和する作用もあります。 欠乏すると脱毛や皮膚障害、結膜炎、食欲不振の他、リウマチ、クローン病等の免疫不全症や糖尿病にも繋がります。
臨床検査技師国家試験や薬剤師国家試験では、ビタミンの補酵素型と欠乏症が頻出テーマです。 過去10年間でビタミンの機能や補酵素型に関する問題が複数回出題されており、特にビタミンB6のPLPがアミノトランスフェラーゼの補酵素となることは重要なポイントです。
意外な事実1: ビタミンB2の補酵素型はFADとFMNの2種類あり、どちらも酸化還元反応に関与しますが、FADはより多くの酵素反応で使われます。
意外な事実2: ナイアシンは体内でNADとNADPに変換され、数百種類の酵素の補酵素として働きますが、これは他のビタミンB群と比べても非常に多い数です。
意外な事実3: ビオチンは生卵に含まれるアビジンと強く結合するため、生卵を大量に摂取するとビオチン欠乏症を引き起こす可能性があります。 これは、調理することでアビジンが変性し、ビオチンとの結合が弱まるため、加熱調理した卵では問題ありません。
意外な事実4: パントテン酸は「どこにでもある酸」という名前の通り、ほぼすべての食品に含まれており、欠乏症が報告されることは極めて稀です。 しかし、極端な偏食や特定の疾患では欠乏のリスクがあります。
臨床検査の現場では、ビタミンの補酵素型を理解することで、酵素活性測定の原理や、ビタミン欠乏症の病態をより深く理解できます。
参考)第71回臨床検査技師国試 午後【臨床化学】全選択肢の正誤理由…
ビタミンの機能や補酵素等【5回/10年】 | 臨検王
水溶性ビタミンはほとんど補酵素【薬剤師国家試験対策】

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