
\\text{平均値} = \frac{\text{すべてのデータの合計}}{\text{データの個数}}\
例えば、5人の患者の入院日数が「3日、5日、7日、9日、11日」の場合、平均値は(3+5+7+9+11)÷5 = 7日となります。
一方、中央値は、データを小さい順に並べ替えたときに、ちょうど真ん中の位置に来る値を指します。
参考)https://www.pref.kyoto.jp/tokei/monthly/tokeikyoto/tk2011/tkroom201106.pdf
参考)中心的な傾向を捉える
同じ「3日、5日、7日、9日、11日」のデータでは、すでに並んでいるので、ちょうど3番目の「7日」が中央値になります。
一見すると同じ値になりそうですが、データの分布によっては平均値と中央値が大きく異なることがあります。これが、両者の使い分けが重要になる理由です。
参考)平均値と中央値の違い
平均値と中央値の最も重要な違いの一つが、「外れ値」に対する感受性の違いです。
参考)https://www.e-coms.co.jp/column/mean_and_median
外れ値とは、他のデータと比較して極端に大きい、または小さい値のことを指します。医療データでは、以下のようなケースで外れ値が発生しやすくなります。
参考)【医療関係者のための統計解説】平均値?標準偏差?データを要約…
平均値は外れ値の影響を強く受けます。
参考)なんでも平均でいいの?中央値と平均値をどう使い分けるか
例えば、10人の患者の入院日数が以下の通りだったとします。
参考)代表値とは?平均と中央値の違い・求め方・使い分けをビジネス例…
一方、中央値は外れ値の影響を受けにくいという特徴があります。
参考)中央値
同じデータを小さい順に並べると「3、4、5、5、6、6、7、7、8、50」で、データが10個(偶数)なので、真ん中の5番目と6番目の平均(6+6)÷2 = 6日が中央値になります。
この「6日」という数字の方が、大多数の患者の実態をより正確に表していると言えるでしょう。
参考リンク:外れ値がある場合に平均値を算出しようとすると、平均値が外れ値に『ひっぱられて』しまう現象を具体的な心拍数データで解説。中央値を使うべき状況を判断する基準が学べます。
平均値と中央値の関係は、データの分布の形(対称性)によって変化します。
左右対称の分布(正規分布に近い場合)
身長や体重など、自然現象のデータは正規分布に近い形をとることが多く、この場合、平均値と中央値はほぼ同じ値になります。
例えば、成人男性の身長のデータが以下のような場合。
このように、両者の差がほとんどない場合、どちらを使っても問題ありません。
右に偏った分布(右に裾を引く分布)
年収や資産、入院日数、医療費などは、右に偏った分布を示すことが多く、この場合、平均値は中央値よりも大きくなります。
例えば、ある病院の患者の入院日数データ。
この差が示すのは、「一部の長期入院患者が平均値を引き上げている」という実態です。
左に偏った分布(左に裾を引く分布)
逆に、左に偏った分布では、平均値は中央値よりも小さくなります。
例えば、ある治療の成功率が以下のような場合。
これは、少数の極端に成功率の低いケースが平均値を押し下げていることを示します。
参考リンク:平均値と中央値が異なるとき、分布は平均値より中央値側に偏りがあることを、定規のてこの原理を使った視覚的な説明で解説。年収や資産データの具体例も。
医療現場で平均値と中央値を適切に使い分けるためには、以下の基準を考慮する必要があります。
参考)平均値・中央値・最頻値の違いとは?データ分析での使い分けと注…
平均値を使うべき場面
1. データが正規分布に近い場合:身長、体重、血圧(健康な集団)など
2. すべてのデータの情報を活用したい場合:平均値は全データの情報を含むため、総量や全体のバランスを把握する際に有用
3. 統計検定を行う場合:t検定などのパラメトリック検定では平均値と標準偏差を使用
参考)https://www.ompu.ac.jp/u-deps/ompuda/report/pdf/report_54_p18-19.pdf
4. データのばらつきが小さい場合:外れ値が少なく、分布が対称的な場合
参考)平均と中央値の違いを徹底解説!マーケターがデータ分析で迷わな…
中央値を使うべき場面
1. 外れ値が存在する場合:重症患者、測定エラー、稀な症例など
2. 分布が非対称の場合:入院日数、医療費、待ち時間など
3. データの順序のみが意味を持つ場合:痛みのスコア(0-10段階)など順序尺度のデータ
4. ノンパラメトリック検定を行う場合:Wilcoxon検定などでは中央値と四分位範囲を使用
医療論文での表記基準
医学論文では、データの分布を確認した上で、適切な代表値を選択することが推奨されています。
参考)16 平均値,中央値,最頻値-得られたデータの中心を表す平均…
参考リンク:臨床研究で最初に知っておきたいデータの集め方・まとめ方。ヒストグラムで分布を確認し、平均値±標準偏差か中央値と四分位範囲のどちらを使うべきか判断する基準が詳しく解説されています。
ここまでは標準的な解説でしたが、実は平均値と中央値の使い分けには、あまり知られていない重要な落とし穴が存在します。
落とし穴1:「中央値を使えば安全」という誤解
中央値は外れ値に強いですが、これは「外れ値の存在を無視しても良い」という意味ではありません。
医療現場では、外れ値こそが重要な臨床的意味を持つことがあります。
これらの「外れ値」を中央値で隠蔽してしまうと、重要な臨床的知見を見逃す可能性があります。
推奨されるアプローチ。
1. 平均値と中央値の両方を報告する
参考)【統計学】平均値と中央値の違い:統計指標の基本とその使い分け…
2. 両者の差が大きい場合、その理由を考察する
3. 外れ値の臨床的意義を別途評価する
4. 箱ひげ図などでデータの分布を視覚化する
落とし穴2:「平均値=中央値」なら安心という誤解
平均値と中央値が近いからといって、データが正規分布しているとは限りません。
二峰性分布(ピークが2つある分布)の場合、平均値と中央値が一致しても、データは対称的ではありません。
例えば、ある薬剤の血中濃度データで。
この場合、平均値と中央値は近い値になりますが、データは2つの異なる集団が混在していることを示しています。
参考)RB保健師2023
落とし穴3:サンプルサイズによる中央値の不安定性
中央値は外れ値に強い反面、サンプルサイズが小さい場合、値が不安定になることがあります。
特に、データ数が10未満の場合、1つのデータが変わるだけで中央値が大きく変動する可能性があります。
このように、データ数が1つ増えるだけで中央値の計算方法が変わるため、小規模研究では注意が必要です。
医療従事者への実践的アドバイス。
1. 常に両方の指標を確認する:平均値と中央値の両方を計算し、差がある場合はその理由を考察
2. 分布を可視化する:ヒストグラムや箱ひげ図を作成して、データの形を把握
3. 外れ値を無視しない:中央値を使っても、外れ値の臨床的意義を別途評価
4. サンプルサイズを考慮する:小規模データでは中央値の解釈に注意
5. 四分位範囲を併記する:中央値を使う場合は、25パーセンタイル値と75パーセンタイル値も報告
参考リンク:医療統計の基礎テキスト。代表値(平均値、中央値、最頻値)と散布度(分散、標準偏差)の関係、外れ値の影響について、医療データ具体例とともに解説されています。
平均値と中央値は、単なる「計算方法の違い」ではなく、データの性質や分析目的に応じて適切に選択・解釈する必要がある重要な統計指標です。医療現場でのデータ分析において、どちらか一方だけに依存せず、両方の視点からデータを多角的に評価することが、正確な臨床判断につながります。
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