
フルニソリドは、局所で抗炎症作用を示す副腎皮質ステロイドです。日本では、医療用点鼻薬で使用されてきた成分のうち、2018年にアレルギー性鼻炎用点鼻薬としてスイッチOTC化されました。フルニソリドを有効成分とするOTC製品の代表例として、「ロートアルガードクリアノーズ季節性アレルギー専用」があります。販売名や販売状況、包装、添付文書の改訂状況は変わり得るため、販売時には必ず現行製品の外箱および添付文書を確認してください。フルニソリドは、日本におけるスイッチOTC成分として整理されています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001492246.pdf
OTC製品の効能・効果は、花粉による季節性アレルギーの鼻づまり、鼻みず(鼻汁過多)、くしゃみの緩和です。すなわち、「アレルギー性鼻炎一般」ではなく、花粉が原因である季節性アレルギー性鼻炎を前提としたセルフメディケーションの選択肢です。ハウスダスト、ダニ、動物皮屑などによる通年性アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、薬剤性鼻炎、急性副鼻腔炎、かぜに伴う鼻症状に対して、漫然とOTCフルニソリドを提案しないことが重要です。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000993175.pdf
鼻噴霧ステロイドは、抗ヒスタミン薬のように内服後すぐに症状を止める薬として説明するよりも、鼻粘膜で進行するアレルギー性炎症を局所で抑え、鼻閉・鼻漏・くしゃみを包括的にコントロールする薬として位置付けると理解しやすくなります。特に、鼻閉を主訴とする患者では、血管収縮成分を含む点鼻薬の連用を避ける観点からも、症状、既往、併用薬および使用歴を聞き取ったうえで、ステロイド点鼻薬の適否を判断する意義があります。
厚生労働省:フルニソリドのリスク区分について
販売時または服薬相談時には、「いつから症状があるか」「花粉飛散期と症状が一致するか」「毎年同じ時期に反復するか」「主症状は鼻閉・鼻漏・くしゃみのどれか」「発熱、顔面痛、膿性鼻汁、嗅覚低下、強い頭痛がないか」を確認します。典型的な季節性アレルギー性鼻炎では、透明な鼻汁、反復するくしゃみ、鼻・眼のかゆみ、花粉飛散期との時間的関連が手掛かりになります。一方、片側優位の強い鼻閉、悪臭のある鼻汁、発熱、頬部痛、激しい頭痛、持続的な鼻出血などは、OTCでの自己対処を継続せず、耳鼻咽喉科等への受診を検討すべき所見です。
フルニソリドOTCの対象年齢は成人、すなわち18歳以上です。18歳未満には使用できません。また、妊婦または妊娠している可能性がある患者は使用しないこととされています。授乳中についても、使用を避けるか、使用する場合には授乳を避ける旨が注意されています。患者が「毎年使っている」「以前に病院でもらった点鼻薬と同じようなもの」と述べても、年齢、妊娠・授乳の状況、既往歴、現在の鼻腔状態、直近1年間のステロイド点鼻薬使用期間は改めて確認します。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000846528.pdf
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 想定する適応 | 花粉による季節性アレルギー症状 | 鼻づまり、鼻みず、くしゃみの緩和 |
| 対象年齢 | 18歳以上 | 18歳未満は使用しない |
| 確認したい症状 | 透明鼻汁、くしゃみ、鼻・眼のかゆみ、季節性 | 花粉との関連を確認する |
| 受診を優先する所見 | 発熱、膿性鼻汁、顔面痛、強い頭痛、持続する鼻出血 | 感染症や副鼻腔疾患などを考慮する |
| 使用歴 | 過去1年間のステロイド点鼻薬の使用日数 | 他製品の使用期間も合算する |
また、眼症状が強い患者では、点鼻薬のみで症状全体を十分にコントロールできないことがあります。鼻症状と眼症状の重症度、眠気を避けたい業務・運転の有無、既に使用している抗アレルギー薬を確認し、必要に応じて医療機関受診や、薬剤師による別のOTC選択肢の検討につなげます。ただし、自己判断で複数のステロイド点鼻薬を重複使用することは避けるよう明確に伝えます。
フルニソリドOTCの用法・用量は、18歳以上で1回、両鼻腔内に各1噴霧、1日2回、朝・夕です。使用期間は、他のステロイド点鼻薬の使用期間も合わせて1年間に1か月を超えないこととされています。症状が改善しない場合や、一定期間使用しても改善がみられない場合には、用量を増やすのではなく、使用を中止して医師または薬剤師へ相談するよう案内します。製品の用法は改訂される可能性があるため、個別製品の添付文書・外箱記載を優先してください。
点鼻ステロイドの効果と局所副作用には、噴霧手技が大きく関わります。使用前には鼻をかみ、鼻腔の通りをよくします。ノズルを鼻腔に軽く入れたら、鼻中隔へ向けず、外側の鼻腔壁を意識して噴霧するよう説明します。ノズルを鼻中隔に向けて同じ部位へ反復噴霧すると、局所刺激や鼻出血のリスクを高める可能性があります。利き手側の鼻中隔に向きやすいこともあるため、患者本人の操作を想定し、ノズルの向きまで具体的に伝えることが実用的です。
参考)ロートアルガードクリアノーズ季節性アレルギー専用の基本情報・…
患者説明では、「鼻づまりが強いから何回も噴霧してよい」という誤解を修正することが大切です。局所投与であってもステロイド成分であり、用法・用量と使用期間の上限を守る必要があります。特に、点鼻用血管収縮薬を頻回に使用している患者では、反跳性鼻閉や薬剤性鼻炎の可能性も念頭に置き、フルニソリドOTCを単に追加するのではなく、症状経過と使用薬を整理して受診勧奨を検討します。
フルニソリドOTCは、成分によりアレルギー症状を起こしたことがある患者、18歳未満、妊婦または妊娠している可能性がある患者、鼻腔内が化膿している患者、鼻腔内に潰瘍・外傷などがある患者では使用しないこととされています。鼻腔内の化膿、創傷、潰瘍がある場合は、局所ステロイドの使用によって病変の評価や治療開始が遅れるおそれがあるため、症状の自己対処より受診を優先するべきです。
使用前に医師または薬剤師へ相談する対象として、薬などでアレルギー症状を起こしたことがある患者、鼻出血を繰り返す患者、全身の真菌症、結核性疾患、感染症、高血圧、緑内障などの診断を受けた患者、過去1年間にステロイド点鼻薬を1か月超使用した患者が挙げられます。これらの情報は、ステロイド使用の可否、安全性評価、原疾患の状態確認のために重要です。相談対象を機械的に列挙するだけではなく、患者の言葉で病名・治療状況・処方薬を確認し、不明な場合はお薬手帳の提示を促します。
参考)https://image.yodobashi.com/etcobject/100000001004212633/M0000008039.pdf
授乳中の患者については、本剤を使用しないか、使用する場合は授乳を避ける必要があります。妊娠・授乳に関する相談では、症状の重症度と生活上の支障を確認しながらも、販売側が安易に安全性を断定しないことが重要です。患者がすでに処方治療を受けている場合には、処方医・薬局への確認を促し、処方薬とOTC製品を合わせたステロイド曝露や、重複する鼻噴霧ステロイドの使用を防ぎます。
鼻噴霧ステロイドでは、局所の刺激感、鼻出血、鼻腔内の違和感などが問題となり得ます。使用後に異常を感じた場合、あるいは皮膚症状、呼吸器症状、全身症状など、アレルギー反応を疑う症状が現れた場合には、直ちに使用を中止し、製品文書を持参して医師または薬剤師へ相談するよう案内します。鼻出血が反復する、出血量が多い、止血しにくい、痛みやびらんを伴う場合には、単に噴霧方向を修正するだけでなく、使用中止と医療機関への相談を優先します。
受診勧奨が必要な場面としては、適正に使用しても症状が改善しない場合、鼻閉により睡眠や日常生活に著しい支障がある場合、症状が花粉飛散期を超えて持続する場合、喘鳴・息苦しさなど下気道症状を伴う場合、嗅覚障害が強い場合などが考えられます。アレルギー性鼻炎のように見えても、慢性副鼻腔炎、鼻茸、鼻中隔弯曲、感染症、腫瘍性病変など、耳鼻咽喉科的評価を要する原因が隠れていることがあります。
医療従事者がOTC相談で担う役割は、単に「ステロイドだから強い薬」「市販薬だから軽い薬」と二分して説明することではありません。季節性アレルギー性鼻炎という適応に合致しているか、使用禁忌や相談事項に該当しないか、正しい手技を実施できるか、自己治療の範囲を超えていないかを確認し、適切なタイミングで受診へつなぐことです。フルニソリドOTCを選択する際は、適応判定、使用期間管理、鼻中隔を避ける噴霧指導、症状悪化時の中止・相談という4点を一貫して伝えることが、安全な販売と継続的な患者支援につながります。