実は顔面紅斑の約半数は、元のアトピー性皮膚炎とは別の病態です。

デュピクセントによる顔面・頸部紅斑の発現率は、報告によって4%から43.8%まで幅があります 。これは診断基準や観察期間、対象集団の違いによるもので、単一の数値では語れません。臨床試験のフェーズ3では顔面紅斑は有害事象として明記されていませんでしたが、実臨床での報告は増えています 。
つまり数字だけを見て判断するのは危険ということですね。
イメージとしては、投与患者100人のうち4〜44人程度が経験する可能性がある症状で、決して稀な合併症ではありません。医療従事者としては、投与開始前にこの可能性を患者へ説明しておくことで、後の不安や自己判断による中断を防ぎやすくなります。問診票や説明用のチェックリストをあらかじめ用意しておくと、外来での説明時間を短縮できます 。
参考)https://pro.campus.sanofi/dam/jcr:a1337099-4d8c-4975-8f2d-d91359a7beb2/MAT-JP-2505504-10-08-2025.pdf
システマティックレビューによると、顔面・頸部紅斑を発症した101例のうち52例は投与前から顔面病変があり、45例は既存のアトピー性皮膚炎とは異なる新しい皮疹を発症していました 。この45例では、酒さ様皮疹やアレルギー性接触皮膚炎、頭頸部皮膚炎などが背景として示唆されています 。
これは意外ですね。
つまりデュピクセント投与後に顔が赤くなったからといって、それが必ずしも「薬が効いていない」「アトピーが悪化した」ことを意味しないということです。実際、体幹や四肢の皮疹が改善しているにもかかわらず顔だけ悪化するケースは、別の病態を疑う根拠になります。鑑別のためには、毛包虫(デモデックス)検査や真菌培養を検討する余地があります 。帝京大学の報告では、顔面頸部紅斑を生じた患者から毛包虫が検出された症例があり、外用抗菌薬や殺虫成分を含む洗顔料で改善した例も確認されています 。
顔面紅斑が生じた場合の対応として、外用ステロイド、タクロリムスなどのカルシニューリン阻害薬、抗真菌薬が経験的に用いられています 。101例のうち改善は29例、消失は4例、無反応16例、悪化8例という結果が報告されており、全員が改善するわけではない点は押さえておくべきです 。
厳しいところですね。
投与中止となったのは101例中わずか11例(11%)でした 。これは、多くの症例が局所治療の併用で投与継続が可能であることを示しています。全身のアトピー性皮膚炎が大きく改善している場合はカルシニューリン阻害薬から試し、改善が乏しければ抗真菌薬への切り替えを検討するという段階的アプローチが提唱されています 。逆に、全身症状の改善が乏しい状態で顔面紅斑が出現した場合は、デュピクセント自体の中止と他の治療への切り替えを検討する判断材料になります 。
体幹や四肢の皮疹が安定している患者では、デュピクセントの投与間隔を延長することも顔面紅斑対策の一つとして紹介されています 。あわせて紫外線対策やストレス管理、刺激物摂取の見直しも補助的な対策として挙げられています 。
参考)デュピクセント誘発性の顔面の赤みに効果を発揮しうる対策・治療…
〇〇に注意すれば大丈夫です、という単純な話ではありません。
顔面紅斑の病態は複雑で、投与前からの皮膚状態、外用薬の急な中断、接触皮膚炎の合併など複数の要因が絡み合うことが指摘されています 。そのため対応は個々の患者背景を正確に把握した上で、外用薬の要否や投与間隔を含めた選択が求められます 。日本国内の症例報告や臨床皮膚科領域の論文でも、投与後の顔面皮膚症状は「速やかに改善」「持続」「悪化・新規皮疹出現」の3パターンに分類されており、パターンごとの対応指針が整理されつつあります 。
AAAAIによる顔面紅斑の病態と治療選択に関する専門家解説(英語、経験的治療のアルゴリズムを含む)
システマティックレビューの日本語解説、101例のデータと中止率の詳細