実際の臨床研究では、トラフ値が4.0 µg/mL以上の症例で肝機能障害による投与中止が認められ、一過性視覚異常を来たした症例の平均トラフ値は有意に高値を示しました。また、無効例は全例でトラフ値1.4 µg/mL未満またはピーク値2.8 µg/mL未満であったという報告もあります。
参考)https://is.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/047020093j.pdf
このように、ボリコナゾールの血中濃度は有効性と安全性の両面から重要な指標であり、TDM(治療薬物モニタリング)の実施が強く推奨されています。
参考)https://www.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/06704/067040457.pdf
採血のタイミングは、TDMの正確性に直結する重要な要素です。ボリコナゾールの血中濃度測定では、原則として以下のタイミングで採血を行います。
トラフ値(Trough)の採血
参考)ボリコナゾール
参考)Infection Control vol.7 TDMのピッ…
ピーク値(Peak)の採血
慢性壊死性肺アスペルギルス症患者を対象とした研究では、投与開始5日以上経過後にトラフ値とピーク値を測定し、内服剤と注射剤の間で血中濃度に明らかな差は認められなかったと報告されています。
⚠️ 注意点:投与開始時間、点滴時間、採血時間の正確な記録が最も重要です。予測値から大幅に外れた値が出た場合は、まず採血時間の間違いを疑う必要があります。
採血容器の選択は、測定値の精度に直接影響を与えるため、適切な容器を選定することが不可欠です。ボリコナゾールの血中濃度測定では、以下の容器が推奨されています。
推奨容器
参考)ボリコナゾール|抗真菌剤|薬毒物検査|WEB総合検査案内|臨…
参考)https://www.kchnet.or.jp/for_medicalstaff/LI/item/LI_DETAIL_865200.html
参考)ボリコナゾール 〔薬物分析〕|臨床検査項目の検索結果|臨床検…
容器の具体例
| 検査機関 | 容器指定 | 検体量 | 保存方法 |
|---|---|---|---|
| SRL | PH5(ヘパリン入り真空採血量5mL) | 血漿0.3mL | 冷蔵保存 test-directory.srl(https://test-directory.srl.info/akiruno/test/detail/061800300) |
| LSIメディエンス | 容器番号03(分離剤なし) | 血清3mL→2mL | 4週冷蔵 data.medience.co(https://data.medience.co.jp/guide/guide-02150001.html) |
| FALCO | H2容器 | 血漿0.2mL | 必凍 falco.co(https://www.falco.co.jp/rinsyo/detail/061066.html) |
| 鹿兒島大学病院 | 緑栓ヘパリン入り採血管 | 2mL | - kchnet.or(https://www.kchnet.or.jp/for_medicalstaff/LI/item/LI_DETAIL_865200.html) |
💡 意外な事実:血清分離剤入り容器の使用を避けるべき理由は、分離剤が薬物検査の測定値に影響を及ぼす可能性があるためです。この注意点は、他の血中薬物濃度測定にも共通する重要なポイントですが、日常的な採血業務では見過ごされがちな事項です。
採血後は、よく混和させて血漿分離し、冷蔵または冷凍保存して検査機関へ提出します。
ボリコナゾールの血中濃度測定には、主に以下の分析法が用いられています。
LC-MS/MS法(液体クロマトグラフィータンデム四重極型質量分析法)
参考)トリプル四重極型LC/MS/MS LCMS-8050を用いた…
HPLC法(高速液体クロマトグラフィー)
参考)https://fukuoka-u.repo.nii.ac.jp/record/3469/files/v42-2-03-aj.pdf
参考)http://www.ekyxzz.com.cn/ch/reader/view_abstract.aspx?file_no=20210152&st=alljournalsst=alljournals" target="_blank" rel="noopener">超高效液相色谱-串联质谱法测定伏立康唑血药浓度及其临床应用-…
測定精度の実際
島津製作所:LC/MS/MSによる血漿中ボリコナゾール高速分析のアプリケーションノート
臨床現場では、約50%の患者で血中濃度が治療範囲外(1.0~4.0 µg/mL)にあり、特に小児患者で個体差が大きいという報告があります。このため、TDMの重要性が一層高まっています。
ボリコナゾールの薬物動態における最大の特徴は、CYP2C19遺伝子多型による個人差の大きさです。これは医療従事者が知っておくべき重要な薬理学的特性です。
CYP2C19の役割
ボリコナゾールは、主に肝臓のCYP2C19酵素により不活性型のNオキシド体(VNO)へ代謝されます。この代謝酵素の遺伝子多型により、代謝能に個人差が生じます。
遺伝子多型の分類
日本人の特徴
🔍 意外な発見:多型群間比較で、VRCZの血中濃度自体には有意差が認められなかったものの、VNO(代謝物)の濃度やVNO/VRCZ比には有意差が認められました。つまり、遺伝子多型は代謝物の生成に影響するものの、血中濃度の個人差は代謝飽和性や非線形性など、他の要因も複合的に関与していると考えられます。
このため、遺伝子多型検査だけでなく、実際の血中濃度測定(TDM)が臨床現場では不可欠です。
日本化学療法学会:抗菌薬TDM臨床実践ガイドライン2022(公式ガイドライン)
日本呼吸器学会誌:慢性壊死性肺アスペルギルス症におけるボリコナゾール血中濃度測定
LSIメディエンス:ボリコナゾール検査項目詳細
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