
点眼薬を使用する際、特にコンタクトレンズを装用している方にとって重要な知識が「ベンザルコニウム塩化物」という成分の存在です。
多くの点眼薬に含まれているこの防腐剤は、ソフトコンタクトレンズに吸着する性質があり、そのまま装着し続けると角膜との接触時間が長くなり、角膜炎を引き起こす可能性があります。
参考)https://pharmacist.m3.com/column/otc/2140
適切な待ち時間は以下の通りです。
参考)https://pharm.hospital.okayama-u.ac.jp/kanja/pdf/mado336.pdf
市販の「コンタクトレンズ用」と表示されている目薬には、吸着防止剤が含まれているものもありますが、基本は「コンタクトを外して点眼」が原則です。
参考)https://kmh.or.jp/wp/wp-content/uploads/2023/04/okusuri_15.pdf
「5〜15分」という記載も見られますが、より安全性を高めるなら15分以上待つのが推奨されています。
含水性ソフトコンタクトレンズがベンザルコニウムを吸着する理由は、その素材特性にあります。
参考)https://www.acuvue.com/ja-jp/memamori/contact-lenses/159/
ソフトコンタクトレンズは水分を含んだ高分子素材でできており、陽イオン性界面活性剤であるベンザルコニウム塩化物がレンズ内に保持されやすい構造になっています。
参考)12.ベンザルコニウム塩化物(Benzalkonium Ch…
この吸着によって起こる問題。
参考)Cytotoxicity of ophthalmic pre…
ハードコンタクトレンズの場合、ベンザルコニウムの吸着は起こりにくいため、装着したままの点眼でも問題ないとされています。
参考)点眼薬と防腐剤|西新宿さいとう眼科|土曜・日曜・祝祭日も診療…
しかし、長期間の使用では結膜充血を起こしやすくなるという報告もあるため、継続使用の場合は防腐剤無添加の点眼薬を選ぶ方が無難です。
意外な事実として、1日使い捨てタイプのコンタクトレンズであれば、その日のうちにレンズを破棄するため、ベンザルコニウムによる長期的な蓄積の影響は少ないとされています。
ベンザルコニウム塩化物(BAK)の角膜に対する毒性は、多くの研究で確認されています。
参考)1滴に込められた点眼剤のワザとヒミツ⑥ 点眼剤に添加されてい…
培養ヒト角膜上皮細胞を用いた研究では、0.01%のベンザルコニウム塩化物で2時間以内に細胞が変性し、細胞運動や分裂活動が停止することが示されています。
マウスを用いた実験では、0.1%のBAKを1日1回7日間投与することで、ドライアイ疾患(DED)に類似した角膜上皮の変化が誘発されることが報告されています。
参考)Dose-dependent benzalkonium ch…
臨床的に重要な点。
参考)点眼薬防腐剤によると思われる不可逆的角膜上皮障害 (臨床眼科…
Cytotoxicity of ophthalmic preservatives on human corneal epithelium
コンタクトレンズ装用者にとって、防腐剤無添加の点眼薬は重要な選択肢です。
参考)ソフトサンティア
市販されている主な防腐剤無添加点眼薬。
これらの製品は、コンタクトレンズを装着したままでも使用できるため、点眼のたびにレンズを外す手間が不要です。
ただし、人工涙液以外の薬効成分を含む点眼薬(抗アレルギー薬、緑内障治療薬など)は、処方薬でも防腐剤を含むものが多く、ソフトコンタクトレンズ装用中の点眼は添付文書上禁止されている場合がほとんどです。
参考)コンタクト装用中の花粉症点眼薬、本当に使える?防腐剤の真実
花粉症やドライアイなど症状の予防・軽症の場合は、コンタクトの上からでも可能な製品がありますが、ベンザルコニウム含有の目薬は必ずコンタクトを外して点眼します。
一般的に知られていない、ベンザルコニウムとコンタクトレンズに関する意外な事実をいくつか紹介します。
意外な事実1:点眼後5分で濃度が1/10以下に
塩化ベンザルコニウム(BAK)の濃度は、点眼後5分後で通常の液状で1/10以下の濃度に低下します。
参考)COM~回答・使用
このことから、5分以上の待機時間が推奨される根拠の一つになっていますが、レンズへの吸着を考慮すると、より長い待機時間が安全です。
意外な事実2:緑内障点眼薬には保護作用がある成分も
緑内障治療に使われるラタノプロストという成分には、塩化ベンザルコニウムへの保護作用があることが報告されています。
また、プロスタグランジン製剤と合剤の開発により、患者が暴露する塩化ベンザルコニウム量は減少傾向にあります。
意外な事実3:後発品には注意が必要
後発医薬品(ジェネリック)には詳細な成分表示がなく、臨床試験もされていないため、使用に際しては十分な注意が必要です。
臨床的注意点:
コンタクトレンズ装用者が安全に点眼薬を使用するための実践的な手順をまとめます。
正しい点眼手順:
1. 石けんで手をよく洗う(雑菌混入防止)
2. コンタクトレンズを外す
3. 下まぶたを軽く引き、点眼容器の先端が目やまぶたに触れないように注意して1滴点眼
4. 目をパチパチせず、しばらくまぶたを閉じる(1〜5分)
5. あふれた薬液は清潔なティッシュで拭き取る
6. 涙嚢部(目頭のやや鼻より)を指先で軽く押さえると、薬が鼻に流れるのを防げる
7. 15分以上待ってからコンタクトレンズを再装着
複数の点眼薬を使用する場合:
トラブル回避のポイント: