足に現れる骨髄炎の症状と診断・対応の要点

足部の骨髄炎では、発赤や腫脹、排膿、潰瘍の遷延などが重要な手掛かりですが、糖尿病性神経障害や虚血があると痛みや発熱を欠くことがあります。医療従事者はどの所見を拾い、どのように迅速な評価・連携につなげるべきでしょうか?

骨髄炎 症状 足の基礎知識と核心ガイド

足部骨髄炎の症状と初期対応
局所所見を見逃さない

発赤、腫脹、熱感、排膿、深い潰瘍、骨露出は重要であり、疼痛が乏しくても感染を否定しない。

検査は組み合わせて判断する

診察、Probe-to-Bone、単純X線、炎症反応を初期評価とし、不確実ならMRIと骨検体評価を検討する。

感染・虚血・荷重を同時に管理する

抗菌薬だけに依存せず、デブリードマン、ドレナージ、血流評価、免荷、血糖管理を多職種で進める。


足の骨髄炎とは何か:症状が目立たない症例を意識する


足部の骨髄炎は、足趾、中足骨、踵骨などの骨に細菌感染が及んだ状態である。実臨床では、糖尿病性足潰瘍、末梢動脈疾患、外傷後の創部、術後創、褥瘡、穿通創などを起点として、皮膚・皮下組織の感染が隣接する骨へ連続性に波及して生じることが多い。特に、長期間治らない足潰瘍、深い潰瘍、再発を繰り返す潰瘍、足底・足趾先端・骨突出部の潰瘍では、骨髄炎を常に鑑別に置く必要がある。
足の骨髄炎で一般に想起される症状は、局所の疼痛、発赤、腫脹、熱感、圧痛、膿性排液、悪臭、潰瘍の増大、歩行困難などである。しかし、糖尿病性末梢神経障害がある患者では防御感覚が低下しており、深部感染が進行しても疼痛を訴えないことがある。また、末梢動脈疾患による虚血、慢性腎不全、免疫機能低下、高齢、抗菌薬投与後などでは、発赤や熱感、発熱、白血球増多が明瞭でない場合もある。したがって、「足があまり痛くない」「熱がない」「CRPが軽度上昇にとどまる」といった所見のみで深部感染を除外してはならない。
糖尿病関連足感染症は、局所または全身の炎症徴候に基づいて臨床診断することが基本である。局所腫脹または硬結、創周囲の紅斑、局所の圧痛または疼痛、局所熱感、化膿性排液のうち複数を認める場合には感染を疑う。ただし、外傷、痛風、急性Charcot神経骨関節症、骨折、静脈うっ滞なども炎症様所見を示すため、病歴、触診、荷重との関係、神経学的所見、血流状態、画像所見を統合して評価する必要がある。糖尿病患者では神経障害・末梢動脈疾患・免疫機能低下により炎症所見がマスクされ得ることも、診察時に共有すべき重要な前提である。


参考)https://iwgdfguidelines.org/wp-content/uploads/2023/07/IWGDF-2023-04-Infection-Guideline.pdf
骨髄炎は局所の問題にとどまらず、敗血症、感染拡大、壊死、下肢切断につながり得る。足病変の重症化を防ぐには、初診時から「創部の深さ」「感染の広がり」「骨への到達可能性」「虚血の有無」「全身状態」の5点を並行して評価し、必要な専門科へ早期に連携する姿勢が重要である。


足に現れる骨髄炎の症状と緊急度の評価

足部骨髄炎を疑う局所症状は、潰瘍の深達度や経過に注目して評価する。とくに、潰瘍底に骨が露出している、ゾンデで骨に触れる、潰瘍が腱・関節・骨近傍まで深い、排膿が続く、肉芽が脆弱で創が縮小しない、周囲の紅斑や腫脹が拡大する、皮膚色調が暗赤色・紫色・黒色へ変化する、といった所見は深部感染を示唆する。足趾や前足部では潰瘍から骨への距離が短いため、小さく見える潰瘍でも骨髄炎が隠れていることがある。
痛みは重要な症状だが、糖尿病性神経障害、脊髄疾患、末梢神経障害、鎮痛薬使用などがある場合、痛みの程度と感染の深さは必ずしも一致しない。むしろ「痛くないのに腫れている」「本人は普段と変わらないが靴下や靴が急にきつくなった」「浸出液が増えた」「家族が悪臭や足の変色に気付いた」といった変化が、早期発見の契機になる。看護師、薬剤師、訪問スタッフ、リハビリテーションスタッフなどが日常接点で異常を認識し、診察につなげる役割も大きい。

項目 基準・内容 備考
局所の炎症所見 腫脹・硬結、発赤、熱感、圧痛または疼痛、膿性排液 複数の所見があれば感染を疑う。神経障害では疼痛を欠くことがある。
骨髄炎を疑う創部所見 深い潰瘍、骨露出、骨に達するゾンデ、遷延する排膿、治癒不良 潰瘍の大きさだけでなく深達度と骨への近接性を評価する。
中等度感染を示す所見 創周囲から2cm以上の紅斑、皮下より深部への波及、腱・筋・関節・骨病変 骨髄炎は深部感染として中等度以上に位置付けられ得る。
重症化を示す全身所見 発熱または低体温、頻脈、頻呼吸、白血球異常、低血圧、意識変容 SIRSを伴う足感染は重症であり、迅速な入院・外科的評価を要する。
虚血を疑う所見 皮膚温低下、蒼白・チアノーゼ、壊死、足背・後脛骨動脈拍動減弱、安静時痛 感染と虚血の併存は治癒不良・切断リスクを高める。

緊急性を判断する際は、感染の深さだけでなく、急速な進行、壊死・壊疽、皮膚の水疱や紫斑、捻髪音、深部膿瘍を疑う強い腫脹、筋膜下への波及、コンパートメント症候群、重度下肢虚血を見逃さない。こうした所見、または全身状態の悪化があれば、外来での経過観察に留めず、救急対応、外科系診療科への緊急コンサルト、入院を含めた評価を検討する。IWGDF/IDSAは、重症感染、または重要な併存疾患を伴う中等度感染では入院を考慮し、広範な壊疽、壊死性感染、深部膿瘍、コンパートメント症候群、重度虚血では緊急の外科的評価を推奨している。



診断の進め方:診察・検査・画像・培養を統合する

足部骨髄炎の診断は、単一の検査結果だけで確定・除外するのではなく、臨床所見、創部評価、炎症マーカー、画像、微生物学的検査を統合して行う。初期評価では、バイタルサイン、血糖、腎機能、白血球数、CRP、赤沈などを確認し、創部の大きさ、深さ、トンネル、ポケット、壊死組織、排液、悪臭、骨露出、周囲紅斑の範囲を記録する。抗菌薬開始前に可能であれば適切な検体を採取するが、敗血症や壊死性感染などで治療開始を遅らせてはならない。
Probe-to-Bone test(PTB)は、先端が鈍な滅菌ゾンデを潰瘍から慎重に挿入し、硬い骨面に到達するかを評価するベッドサイド検査である。骨を触知すれば骨髄炎の可能性は高まる一方、検査前確率、潰瘍部位、術者の手技、創の深さに影響される。したがって、PTB陽性だけで治療方針を固定せず、単純X線、炎症反応、臨床経過と組み合わせる。糖尿病関連足部骨髄炎が疑われる場合、IWGDF/IDSAはPTB、単純X線、赤沈またはCRPまたはプロカルシトニンの併用を初期評価として提案している。


  • 単純X線では、骨皮質の破壊、骨溶解、骨膜反応、骨硬化、関節破壊、ガス像、異物、骨変形を確認する。
  • 初期骨髄炎では単純X線に明瞭な骨変化が現れないことがあり、陰性でも臨床的疑いが強ければ評価を継続する。
  • MRIは骨髄浮腫、皮質破壊、軟部組織炎、膿瘍、腱・関節への波及範囲を評価するうえで有用である。
  • MRIが実施困難または判定困難な場合には、PET、白血球シンチグラフィ、SPECTなどを代替的に検討する。
  • 起因菌の同定が必要な場合、表層スワブ単独ではなく、デブリードマン後の深部組織、または可能なら骨検体の培養を検討する。

単純X線は、初期評価で撮影しやすく、骨破壊、変形、異物、ガス像を確認できる有用な検査であるが、早期には異常が見えないことがある。臨床診察、単純X線、検査データを踏まえても診断が不確実な場合にはMRIを行う。MRIが利用できない、金属やCharcot神経骨関節症などのため解釈が難しい場合には、PET、白血球シンチグラフィ、SPECTを代替として考慮する。骨髄炎の疑いが持続する場合は、術中または経皮的に得た骨検体の培養を検討することが推奨されている。


IWGDF/IDSA 2023:糖尿病関連足感染症の診断・治療ガイドライン


治療の原則:抗菌薬だけで終わらせず感染源と背景因子を制御する

足部骨髄炎の治療目標は、感染制御、組織温存、機能維持、再発予防である。治療は抗菌薬投与だけで完結しない。壊死組織の除去、必要時の切開・排膿、感染骨の切除または温存的手術、創傷管理、免荷、血流評価と血行再建の適応判断、血糖管理、栄養状態の是正、禁煙支援、腎機能や薬物相互作用を踏まえた抗菌薬調整を組み合わせる必要がある。
抗菌薬は、感染の重症度、感染部位、起因菌と薬剤感受性、過去の培養結果、直近の抗菌薬曝露、MRSAリスク、腎機能、血行状態、経口摂取可否などを踏まえて選択する。軽症の糖尿病関連足感染症では、温帯地域において直近の抗菌薬使用がない場合、主としてβ溶血性レンサ球菌や黄色ブドウ球菌などの好気性グラム陽性菌を標的とする考え方が示されている。一方、慢性で深い潰瘍、壊死、虚血、過去の抗菌薬治療歴、重症感染などでは、多菌種感染を考慮した培養結果に基づく治療の最適化が重要となる。


手術を要するかどうかは、感染骨の範囲、軟部組織の破壊、膿瘍、壊死、虚血、創部閉鎖の見込み、患者の全身状態や歩行機能などを踏まえて判断する。広がる軟部組織感染、壊死組織、進行性の骨破壊、骨露出を伴う場合は外科的介入を検討する。一方で、前足部の骨髄炎で、切開排膿の緊急性がなく、末梢動脈疾患がなく、骨露出もない条件を満たす症例では、手術を行わず抗菌薬治療を選択肢とすることがある。ただし、これは画一的な保存治療を推奨するものではなく、感染制御と創傷治癒を継続的に評価できる体制を前提とする。


抗菌薬の治療期間は、感染骨の切除状況や残存病変の有無で異なる。IWGDF/IDSA 2023では、骨切除または切断を行わない糖尿病関連足部骨髄炎では6週間の抗菌薬治療を考慮し、小切断後に骨断端培養が陽性の場合は最長3週間を考慮するとしている。国内の糖尿病診療ガイドラインでも、骨髄炎に対しては感染骨を可能な限り切除し抗菌薬を投与すること、単純X線・MRI・PTBを用いた診断、無菌的に採取された骨の組織・細菌検査による確定診断が示されている。



現場での観察・連携・再発予防:足全体を診る視点

足の骨髄炎では、局所創傷だけでなく「足全体」と「患者全体」を評価する。足背動脈・後脛骨動脈の触知、皮膚温、色調、浮腫、足趾の毛細血管再充満、壊死の有無を確認し、虚血が疑われる場合はABI、TBI、SPP、TcPO2、血管超音波、CTA、MRAなどを適切に組み合わせる。糖尿病や透析患者では血管石灰化によりABIが見かけ上保たれることがあり、ABIのみで血流障害を否定しないことが重要である。
足部感染と末梢動脈疾患の併存は、創傷治癒不良と切断リスクを上げる。糖尿病関連足感染症では、局所感染の診療と並行して、創部洗浄、適切なデブリードマン、圧を逃がす免荷、血流評価と必要時の血行再建、血糖管理を実施しなければ、抗菌薬が適切でも治療失敗につながり得る。ガイドラインでも、局所創傷ケア、デブリードマン、免荷、末梢循環評価、必要時の血行再建、代謝管理を多職種で進める重要性が強調されている。


再発予防では、潰瘍が閉鎖した後もフットケアを終了しない。毎日の足の観察、足趾間を含む皮膚の確認、爪・胼胝・白癬の管理、適合した靴と足底板の使用、足底圧を高める変形への対応、神経障害の定期評価、血糖管理、禁煙、定期的な専門外来フォローが必要である。足潰瘍の既往、神経障害、足変形、末梢動脈疾患がある患者はハイリスクであり、少なくとも年1回の包括的な足評価に加え、リスクに応じた頻回の観察と教育が求められる。


参考)https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/11_1.pdf
医療従事者にとって実用的な要点は、「深いまたは治らない足潰瘍を見たら骨髄炎を考える」「神経障害例では無痛でも安心しない」「発赤・腫脹・排膿・深達度・骨露出・虚血・全身症状を同時に評価する」「PTB、単純X線、炎症反応で初期評価し、疑いが残ればMRIや骨培養を検討する」「重症感染、壊死、深部膿瘍、重度虚血は緊急連携する」という点に集約される。早期に感染、虚血、荷重、全身状態という複数の要因を是正することが、救肢と機能温存につながる。



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