「アレルギー」と日本語で言うとき、英語では必ず複数形の "allergies" を使う——そのルールを知らずに単数形で記録すると、海外の医療チームに「特定の1件の反応」として誤解され、見落としが生じるリスクがあります。
"allergies" は "allergy"(アレルギー)の複数形で、「複数の過敏反応・アレルギー状態の総称」を意味します。 英語医療の問診では "Do you have any allergies?" と複数形で聞くのが標準であり、これは「何か(種類を問わず)アレルギーはありますか?」という包括的な確認です。 単数形 "allergy" を使うと「特定の1つの反応」を意識した聞き方になり、複数の既往を見落とすリスクが高まります。
参考)【医師の英語】「アレルギーはありますか」医療英語ワンフレーズ…
"allergic" という形容詞も関連しますが、こちらは "be allergic to ○○"(〇〇にアレルギーがある)という構文で使い、"allergies" とは品詞が異なります。 つまり「アレルギーがある」と言いたい場合は名詞 allergies と形容詞 allergic を文脈で使い分けることが必須です。 これが基本です。
| 表現 | 品詞 | 使用例 | 意味 |
|---|---|---|---|
| allergy | 名詞(単数) | a peanut allergy | 特定のアレルギー1件 |
| allergies | 名詞(複数) | Do you have any allergies? | アレルギー全般・複数の既往 |
| allergic | 形容詞 | be allergic to penicillin | 〇〇にアレルギー反応を示す |
英語カルテや国際的な医療文書で頻出する略語 NKA(No Known Allergies) は「既知のアレルギーなし」を意味し、allergies の複数形をそのまま含んでいます。 さらに薬剤に限定した場合は NKDA(No Known Drug Allergies) と書き、薬剤アレルギーの既往がないことを示します。 この2つを混同すると、食物アレルギーや金属アレルギーが「なし」として誤記録されるリスクがあります。
参考)「allergies」の意味・使い方・表現 - 英辞郎 on…
意外ですね。日本の医療現場では「アレルギーなし」と一括記録しがちですが、英語では NKA と NKDA は明確に別物です。 たとえばラテックスアレルギーや造影剤アレルギーは薬剤ではないため、NKDA と記録しても NKA としては記録できません。 NKA が条件です。
参考)의학용어 NKDA = no known drug alle…
参考:英辞郎 on the WEB による NKA の医療用語解説("no known allergies" と "NKA" の使い分けを確認できます)
英辞郎 on the WEB「allergies」医療用語一覧
臨床で最低限覚えておくべきフレーズをまとめると次のとおりです。
参考:看護師向けにアレルギー対応英語表現を解説したサイト(臨床現場で使える英語フレーズ7選)
看護師が覚えるべきアレルギー対応に使える英単語7選
これは使えそうです。緊急場面でも一文で確認できる表現を手元においておくと、対応時間を短縮できます。
"allergies" の原形 "allergy" は、1906年にオーストリアの小児科医 クレメンス・フォン・ピルケ が造語した医学用語です。 ギリシャ語の "allos"(他の・異なる) と "ergon"(働き・活動) を合わせた語で、「異なる反応・変容した反応」という意味を持ちます。 単なる「過敏反応」ではなく「免疫系が本来とは異なる方向に働く状態」という原義を理解すると、I型〜IV型のアレルギー分類(Gell & Coombs分類)の概念とも直結します。
アレルギー反応を I型(IgE介在・即時型)に限定して理解している医療従事者が多いですが、allergies という言葉は I〜IV型すべての過敏反応を包含します。 薬剤アレルギーの約80%は I型ですが、残り20%には細胞傷害型(II型)や免疫複合体型(III型)、遅延型(IV型)も含まれます。 つまり allergies と記録された情報は「即時型だけではない」という前提で解釈するのが原則です。
参考)https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-17.pdf
参考:厚生労働省によるアレルギー総論(I〜IV型の分類と免疫機序を詳細に解説)
厚生労働省「アレルギー総論」PDF
国内の医療事故報告では、アレルギー情報の電子カルテ登録漏れが重大なインシデントにつながるケースが複数記録されています。 具体的には「問診票にアレルギー情報が記載されていたにもかかわらず、看護師が電子カルテの禁忌欄に入力しなかった結果、薬疹が発症した」という事例があります。 また、「ヘパリンナトリウムのアレルギーがカルテに登録されていたが、担当看護師が確認しないまま投与を継続した」ケースも報告されています。
参考)医師が選んだ医事紛争事例 198 - 京都府保険医協会
痛いですね。これらの事例に共通するのは、allergies 情報の「入力」と「確認」の両方に抜けがあった点です。 アレルギー情報は記録するだけでなく、投薬・処置の前に必ず照合するダブルチェックが不可欠です。 アレルギー確認は必須です。
参考)https://jcqhc.or.jp/wp-content/uploads/2025/09/anzen_20250916.pdf
参考:日本医療機能評価機構による医療安全情報 No.226(アレルギー確認漏れの事例と対策)
医療安全情報 No.226「アレルギー情報の確認漏れ」
参考:医師のアレルギー情報登録失念による薬疹発症事例(京都府保険医協会)
医師が選んだ医事紛争事例198「薬剤アレルギー情報の登録失念」